経営者に真摯に向き合ったからこそ経験した、人間関係の挫折
──逆境経験について教えてください。
補助金の申請サポート業務において、私が最も「失敗した」と痛感するのは、最後まで支援したにもかかわらず、お客様が補助金を受給できなかった時です。社労士事務所時代を含めると500件以上の案件に携わってきましたが、当然、すべてが思い通りの結果になったわけではありません。
中には私自身の確認不足や書類不備など、自分に原因があったケースもあります。そのたびに原因を振り返り、同じことを繰り返さないよう改善してきました。一方で、それ以上に難しさを感じたのが、お客様との信頼関係でした。
私は基本的に性善説で考えるタイプで、ご相談に来られた方を見ると「できる限り力になりたい」と思ってしまいます。しかし、支援を進める中で、後になって過去の不正受給について知らされたこともありました。また、時間をかけて一緒に事業計画を練り上げ、無事に採択されたにもかかわらず、「資金の準備ができないからやめる」「別のことにお金を使いたい」と、途中で話が変わってしまうこともありました。
私は、単に申請書を作るのではなく、経営者の「こんな事業を実現したい」「新しいことにチャレンジしたい」という思いそのものを応援したいと考えています。だからこそ、信頼して一緒に進めていた相手との約束が崩れてしまうと、必要以上に抱え込み、夜も眠れないほど落ち込むこともありました。
そうした経験を重ねる中で、事業支援で最も大切なのは、制度や書類の知識だけではなく、人と人との信頼関係を築くことだと考えるようになりました。

「誠実に頑張る経営者」を全力で支えるという決断
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
幾度か痛い思いをする中で学んだのは、「補助金申請の主役はあくまで経営者自身である」ということです。どれだけ周囲が一生懸命サポートしても、経営者自身に「この事業を実現したい」という思いがなければ、その先の事業成長にはつながりません。
一人で支援できる人数や時間には限りがあります。だからこそ私は、自分の力を「本気で事業を良くしたい」「新しいことにチャレンジしたい」と考えている、誠実で成長意欲のある経営者のために使いたいと考えるようになりました。
現在は、補助金の条件に当てはまるかだけを見るのではなく、初回の面談から事業に対する姿勢や温度感、これから実現したいことまでじっくりとヒアリングしています。話をしているうちに、経営者自身も気づいていなかった強みや、これから進みたい方向が見えてくることもあります。
そして、さまざまな経営者と接する中で感じるようになったのが、起業や経営は一人で抱え込むものではないということです。困ったときに相談できる人がいる。同じように挑戦している経営者とつながることができる。そんな環境があるだけでも、事業を続けていくうえで大きな支えになります。
これまでの経験を通じて、私自身の役割も「補助金の申請を支援する人」だけではなく、頑張る起業家や経営者が前に進むための伴走者でありたいと考えるようになりました。
「起業家を孤独にさせない」。大阪・天満橋にコワーキングスペースをつくった理由
──会社の強みや魅力について、教えてください。
現在、「補助金申請支援」「SNS投稿代行」、そして大阪・天満橋での「コワーキングスペース運営」という3つの事業を展開しています。一見すると異なる事業に見えますが、私の中ではすべて「起業家の伴走支援」という一本の線でつながっています。
補助金申請支援では、これまで300件以上の採択支援に携わってきました。AIを使えば、ある程度整った事業計画書を短時間で作れる時代になったからこそ、私が大切にしているのは、その前段階にある「人との対話」です。経営者自身もまだ言葉にできていない強みや想い、これから実現したいことをじっくり聞き、一緒に整理していく。そうした人と人との関わりにこそ、これからの時代の価値があると考えています。
その考えを、申請支援という形だけでなく「場所」として形にしたのが、2026年に大阪・天満橋でオープンしたコワーキングスペース「TenmaBridge」です。
天満橋駅から徒歩2分の場所にあり、集中して仕事をしたい方の作業スペースとしてはもちろん、会議や打ち合わせ、創業・起業に関する相談、経営者同士の交流など、仕事をするだけではない「人とつながる場所」としても活用されています。
私自身、独立して感じたのは、起業すると意外と一人で考える時間が多いということです。会社員時代のように、すぐ隣に相談できる同僚や上司がいるわけではありません。事業について少し相談したいときや、新しいことを始めたいときに、気軽に話せる相手がいるだけでも違います。
だからTenmaBridgeは、単に机やWi-Fiを貸すだけのコワーキングスペースにはしたくありませんでした。「創業者を孤独にさせない」「創業者の次の一歩を応援する」を一つの軸として、これから事業を始める人や創業間もない起業家、地域の経営者が自然につながり、困ったときには相談できる場所にしていきたいと考えています。
補助金申請を通じて事業計画を一緒に考えることも、SNSを通じて集客を支援することも、TenmaBridgeという場所を通じて人と人をつなぐことも、目指しているものは同じです。
「頑張る起業家が、一人で悩まず前に進める環境をつくること」。
それが、かつらだBKオフィスが3つの事業を通じて提供していきたい価値です。

好きなことを極める没頭力が、人生の大きな財産になる
──若者へのメッセージをお願いします。
たくさんチャレンジをして、たくさん失敗をしてほしいです。それも、できるだけ早いうちに。
私自身、振り返ってみると、最初から順調だったわけではありません。学生時代にも挫折しましたし、仕事でも人間関係でも、思い通りにならない経験をたくさんしてきました。でも、若いうちの失敗は、その後の人生で何度も活かすことができます。失敗を怖がって動かないよりも、まずやってみて、うまくいかなければ考えて、また次のことに挑戦する。その繰り返しが、少しずつ自分の強みになっていくと思っています。
もう一つ伝えたいのは、自分の「好きなもの」をとことん極めてほしいということです。勉強でも、スポーツでも、ゲームでも、漫画でも構いません。何かに夢中になって、自分で調べたり、試したり、人と話したりした経験は、たとえその道でプロにならなくても決して無駄にはなりません。
私自身、いわゆるオタク気質で、興味を持ったことには徹底的にのめり込むタイプです。学生時代に夢中になったパソコンも、まったく知識がなかった補助金の仕事も、最初は「もっと知りたい」という気持ちから始まりました。その没頭力が、新しいことを学ぶ力になり、今の仕事にもつながっています。
そして、何かに挑戦していると、同じように頑張っている人や、自分にはない考え方を持った人と出会うことがあります。夢中になった経験だけでなく、その中で生まれた人とのつながりも、後になって大きな財産になります。
だからこそ、若いうちは「これは将来役に立つのか」と考えすぎず、興味を持ったことには思い切って飛び込んでほしいです。好きなものを増やし、いろいろな人と出会い、たくさん挑戦する。その積み重ねの中から、自分にしかない強みが少しずつできていくのだと思います。
