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【ナレーター / ヨーデル歌手 武居 ゆり】回り道こそが資産になる。「伝える」ことの奥深さを知るナレーターが届ける、声と心の世界。

2026/08/31

Profile

武居 ゆり

VelvetVoiceResonance ナレーター / ヨーデル歌手

幼少期からピアノやソルフェージュに親しみ絶対音感を育む。大学では国際法を専攻し、並行してヨーデル歌手の姉の影響で自身も舞台やNHKの番組等でヨーデルを披露。卒業後は証券会社勤務を経て、東京大学の医科学研究所で文科省の研究プロジェクト運営や同大学の総長プロジェクトである産学協創事業の調整役に従事。この間、並行して演奏活動を行う。コロナ禍を機に「声で伝えること」の重要性に目覚め、本格的にナレーション業を開始するために独立。現在、ナレーターとして、企業VPや自治体の動画ナレーション等を中心に活躍中。
これまでの人生で、全く異なる分野を歩んできたように見える武居氏だが、すべての経験は現在の「声で伝える」という表現の根底に息づいている。数々の困難や挫折を乗り越え、自分自身の「核」を見つけ出した彼女に、これまでの道のりと若者へのメッセージを伺った。

予期せぬ挫折と「伝える」ことの厚い壁

──逆境経験について教えてください。

大学に勤めていた頃、働きながら大学院(大学経営・政策コース)で学び、2年生のときに修士論文を執筆した経験が、一つの大きな逆境でした。私の研究は、同じ制度論でも、制度そのものをマクロに論じるものではなく、生命科学系の研究者コミュニティと、その制度を設計する行政側という、立場の異なる人たちを扱うものでした。先行研究がほとんどなく、内容を論じる以前に、その領域特有の背景や研究現場の実態を、まず理解していただく必要があったのです。

しかしながら、集団指導のたびに「理解できない」と厳しい指摘を受け続ける日々が約9ヶ月続き、年末の最後の集団指導の時点でまだ二桁の要改善の論点がありました。最後のチャンスである正月休暇の6日間、毎日1時間程度の仮眠でつなぎながら、PCに張り付き続けました。家族が部屋のドアを開けて「明けましておめでとう」と挨拶してくれたのに、顔も上げられなかったほどです。指導教員お一人おひとりの顔を思い浮かべながら、必死に図表を作り、説明と根拠を補強し、やっとの思いで100ページ超の論文を仕上げました。このとき、「人に自分にしか見えていないものを伝える」ことの難しさと重みを骨の髄まで味わいました。

また、ナレーターとして独立した直後にも大きな壁にぶつかりました。コロナ禍を機に声の表現を学び始め、大学を退職。はじめに海外市場に向けて営業活動を行い、半年かけてようやく仕事が入り出した頃、3時間超の大型ナレーション案件を獲得しました。翻訳修正を含めて10日間、懸命に取り組んで納品したのですが、なんとそれが国際詐欺だったのです。ようやく軌道に乗りかけた矢先の出来事で、大変なショックを受けました。

立ち止まって気づいた、自分自身の「核」

──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。

修士論文での苦闘を通して気付いたのは、伝える、とは、相手のために伝えることなのだ、ということ。当たり前のことのようですが、私は伝えるとき、自分の頭の中ばかり見てしまいがちでした。それでは独りよがりになってしまいます。そうではなく、相手の理解を想像し、よりスムーズにわかりやすく伝わる組み立て、情報、表現は何かを考え抜くことこそが、伝えるという行為なのだと思い知りました。この経験は、その後、立場の異なる研究者たちの間に入ってシステム化や調整を進めた際にも、そして現在のナレーションにも確かに生きています。

また、詐欺に遭ったことで一度立ち止まり、「顔の見える相手と信頼関係を築く市場の開拓も必要だ」と気づきました。結果的に、木村匡也さんのようなトップナレーターの方から直接学ぶ機会も得ることができました。

さらに、過去の職場で立場の異なる相手と向き合う中で、その行動の是非とは別に、その人自身を突き動かすだけの「核」があることを強く意識させられました。そのことは皮肉にも、自分が自分の「核」だと思っていたものは、私にとっての本当の「核」なのだろうかと、自問自答する機会となったのです。望まない出来事や逆境に直面したときこそ、自分の素直な気持ちと向き合い、「自分自身の核とは何か」を深く問い続けることの大切さを学びました。

これまでの人生すべてを「声」に乗せる強み

──会社の強みや魅力について、教えてください。

私が提供するナレーションの強みは、これまでの「回り道」のような人生経験がすべて声に乗っていることです。法学部や修士課程で培った言葉に対する厳密な視点、証券会社での緊迫した相場に向き合う瞬発力、歌を通じた情感の表現、そして大学でのプロジェクト運営で養った、共通のビジョンに向かう俯瞰的な調整力。これら一見バラバラに見える経験が、原稿の世界観を深く理解し、どう表現・伝達するかというバックボーンになっています。

単に綺麗な音声を提供するのではなく、これまでの人生で得たマインドや人間としての知情意を通じてメッセージを届けることができるのが私の魅力だと考えています。今後は、放送という表現の極みとも言える世界で、私自身がテレビから元気や勇気をもらってきたように、声を通じて人の心に届く表現をさらに追求していきたいです。

 

回り道こそが、自分だけの資産になる

──若者へのメッセージをお願いします。

すぐに自分の「核」が見つからなくても焦る必要はありません。私自身、国際社会の諸課題の解決に貢献したいと考えて国際法を専攻し、証券会社で働き、演奏活動をし、大学のプロジェクト運営に携わり、今はナレーターをしています。いろんなことをやってきた回り道のように見えるかもしれませんが、過去のすべての経験が今の表現活動の大きな資産になっています。

自分の核というものは、順風満帆なときにはなかなか見つかりにくいものです。何か望まない出来事が起きたり、壁にぶつかったりしたときにこそ、そこにヒントや機会が隠されています。悲観せずに、自分の心に素直に「本当はどうしたいのか」を問いかけてみてください。たとえ今やっていることが直接の目標につながらないように見えても、そこで周辺の能力を鍛え、一生懸命働いたことは決して無駄にはなりません。回り道を恐れず、自分だけの核を見つける旅を楽しんでほしいと思います。

VelvetVoiceResonance

設立 2023年4月(開業)
資本金 非公開
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 ナレーション業、声優業、ヨーデル歌手
URL https://yuritakei.com
https://x.com/yuritakei86822
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