限界まで働き倒れた日々。自分の強みを見失った5年間
──逆境経験について教えてください。
過去に入所した、企業法務特化の法律事務所での経験が、私にとって一番の逆境でした。顧問先が100社以上あり、上場企業も相手にするような職場で、とにかく労働時間が長く、朝まで働くことも珍しくありませんでした。その結果、過労で意識を失って倒れてしまったのです。
また、周りには優秀な方が多く、「これだけがむしゃらに頑張っても自分は大したことがない」と自信を喪失し、自分の強みが分からなくなってしまいました。
自分がどんな弁護士になればいいのか、どうやって差別化を図ればいいのかわからず、この後5年ほどは深く引きずるほど悩みましたね。
理屈だけでは解決しない。自分の「物差し」と直感を磨く
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
法律という理論や理屈だけでは、必ずしも紛争を防げないし、正解にたどり着けないと学びました。
たとえば複数の選択肢があるとき、最終的に正しい道を選ぶためには「自分の物差し」が必要です。その物差しとは、直感であったり、依頼者や会社の未来をどうしたいかという想像力であったりします。
トラブルの根底には、感情の対立や倫理、道徳といった人間的な要素が必ず絡んでいます。だからこそ、相手の話にしっかりと耳を傾け、気持ちに寄り添い、価値観を理解することが何より重要です。ロジックだけで割り切るのではなく、相手の感情を汲み取りながら落とし所を見つける。その感性を磨くために、最近では哲学の本を読んだりもしています。
AI時代を生き抜く武器は“人間味”。揉め事を未然に防ぐ「予防法務」
──強みや魅力について、教えてください。
一般的な弁護士は、トラブルが起きてから裁判や交渉を行いますが、私はその前段階である「予防法務」に強くこだわっています。契約書を作るだけでなく、「社長がどうやって従業員や取引先に説明するか」まで踏み込み、オンラインで同席してサポートするなど、根本的な揉め事の種をなくすアプローチをしています。特に現在は、ITやエンターテインメント業界のお客様に力を入れています。
今後、定型的な業務はAIに代替されていくかもしれません。しかし、離婚問題や従業員との対立など、感情が爆発して起きる問題は、AIの理屈だけでは収められません。人の気持ちを理解し、思いやりを持って泥臭く関わっていく“人間らしさ”こそが、これからの時代を生き抜く強みになると確信しています。

悩みすぎず、自分の「直感」を信じて決断しよう
──若者へのメッセージをお願いします。
将来に向けて、たくさんの選択肢のなかで悩む時期があると思います。でも最終的には、自分の「直感」を信じて決断してほしいですね。
私自身、小学高学年で「弁護士になりたい」と直感的に思い、それを信じて進んできました。もちろんある程度の裏付けや「こうなりたい」という想像は必要ですが、悩みすぎるよりは、自分の直感を大切にするのが一番だと思います。
そして、その直感や想像力を磨くためには、美術館に行ったり、好きな音楽を聴いたり、小説を読んだりして、クリエイティブな感性を養うことをおすすめします。アートに触れることで豊かな感性が育ち、それが人生の岐路に立ったときの確かな「物差し」になるはずです。
