孤立無援の法廷とマネジメントの壁
──逆境経験について教えてください。
弁護士になって最初に直面した最大の試練は、1年目に入所した事務所での出来事でした。先輩から突然、とても難解でややこしい案件ばかりを大量に押し付けられたんです。「とりあえずやっといて」と言われるものの、どう進めていいか全くわからず、先輩にSOSを出しても十分な助けは得られませんでした。
宿題もできず、そのまま裁判の日を迎えてしまったことがあります。こちらが訴えられた側だったのですが、相手方は10人もの弁護士がずらりと並ぶような大きな案件でした。こちらには十分な準備がなく、裁判官からも相手方の弁護士たちからも「さすがにそれはないだろう」と法廷で激しく詰められました。何もできず、ただただ圧倒されて頭の中が真っ白になるような、非常に苦い経験です。
さらに、5年目で別の事務所に転職し、大阪支店長を任された際にも壁にぶつかりました。一人のプレイヤーとしての経験はあっても、マネジメントや支店運営のノウハウはゼロです。ここでも周囲にうまく助けてもらえず、次々と発生する問題に一人で立ち向かわざるを得ない状況に追い込まれました。

人に頼るのをやめ、自ら主体的に動く
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
一連の逆境を通じて痛感したのは、「人に頼っていてもダメだ」ということです。誰かが助けてくれるだろうという甘えを捨て、自分で調べて考え、主体的に動かないと道は開けないと気づきました。そこからは、関連する動画を見たり本を読んだりして、自力で解決策を模索するようになりました。
また、私は幼少期、教師だった母親の影響もあり「自分の考えが絶対に正しい」と思い込んでいる、プライドの高い子どもでした。そのため高校や大学では友人たちと激しく衝突し、孤立することもありました。しかし、「このままではダメだ」と毎日お風呂で内省を繰り返し、自分から下手に出て相手の機嫌を取るなどのアクションを起こしたことで、コミュニケーションの重要性を学びました。
現在も根っこには「人間関係の面倒くささは避けたい」という思いがありますが、だからこそ、お互いに気を遣いすぎず、フラットに付き合える関係を大切にしています。自分が絶対に正しいわけではなく、様々な価値観がある。それを頭から否定せず、まずは受け入れるという姿勢は、過去の失敗体験から得た一番の財産です。
弁護士を「お医者さん」くらい身近な存在へ
──会社の強みや魅力について、教えてください。
現在私が担当している業務は、約4割が中小企業の顧問や契約書チェックなどの支援、残りの6割が個人の相続や離婚といったご相談です。私自身の最大の強みは相続問題への対応力ですが、それ以上に意識しているのは「相談しやすさ」です。
弁護士0年目の頃からずっと感じていたのですが、世間における弁護士の敷居は想像以上に高く、「変なことを言ったら怒られるのではないか」と萎縮してしまう方が多くいらっしゃいます。他の士業の方々でさえそう思っているほどです。かつての弁護士業界は広告が禁止されていて殿様商売のような空気があり、高圧的な態度をとるベテランも少なくありませんでした。
だからこそ私は、小難しい法律用語を極力使わず、誰にでもわかる噛み砕いた言葉で「ざっくばらんに話していいんですよ」という空気を作ることを心がけています。目指しているのは、弁護士をお医者さんと同じくらい気軽に足を運べる存在にすること。そして、見返りを求めず、本当に気の合う仲間たちとゆるく暖かく繋がりながら、誰かの力になっていく世界観を作っていきたいと考えています。

若手時代のハードワークが、一生の糧になる
──若者へのメッセージをお願いします。
昨今はワークライフバランスが声高に叫ばれていますが、私は若いうちに「死ぬ気で働く」時期があってもいいと思っています。私自身、弁護士になって最初の3年間は、無茶な仕事を振られながらも本当に死ぬ気で働きました。その圧倒的なハードワークの経験があったからこそ、今どんな仕事が来ても「なんとかなる」と構えていられるのだと実感しています。
もし私が今、学生時代に戻れるとしたら、もっと意識的にいろいろな人と交流し、自分の幅を広げます。親の敷いたレールや狭い世界にとらわれず、多種多様な価値観に出会うことで、自分にとって何が最適な選択なのかを深く考えるはずです。
皆さんにも、ぜひ早いうちから様々な世界を知り、選択肢を広げてほしいと思います。そして、ここぞという時には泥臭く働き、自分自身の「地力」を鍛え上げてください。その経験は、間違いなくあなたの一生を支える強力な武器になるはずです。

