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【有限会社野村興業 西川 洋右】素直な行動とご縁が人生を開く。「不真面目の補給」で立川の昼飲み文化を繋ぐ経営者の覚悟。

2026/10/30

Profile

西川 洋右

有限会社野村興業 代表取締役

三重県名張市出身。天理大学卒業後、就職活動で内定を得ていたものの、知人を通じて知ったケニアでのNPO活動に感銘を受け、単身ケニアへ渡る。現地のスラム街での堆肥化プロジェクトなどに携わったのち帰国し、内装設計会社に勤務。その後、妻の義父が経営する有限会社野村興業に入社し、立川の老舗居酒屋の世界へ飛び込む。現在は立川市を中心に飲食店を展開する同社の代表取締役を務める。
戦後間もない頃から立川の昼飲み文化を牽引し、創業から70年以上の歴史を誇る有限会社野村興業。異国の地・ケニアでのNPO活動という異色の経歴から一転、老舗企業を引き継いだ西川氏は、職人との幾度もの衝突や、従業員の「一斉退職」という壮絶な試練を経験してきた。数々の逆境をどう乗り越え、いかにして現在の「働きやすい企業」への変革を進めているのか、西川氏の波乱万丈な歩みと経営への熱い思いに迫る。

従業員の「総上がり(全員退職)」。絶望から始まった再出発

──逆境経験について教えてください。

義父が経営する会社に入社した当初は、職人さんたちと大喧嘩ばかりしていました。周囲から「できない奴」と揶揄されているのが耳に入り、反発心から意地を張っていたんです。数年後に店長を任され、少し売り上げが作れるようになったことでさらに増長し、ついにお客様の前で職人さんと大喧嘩をしてしまいました。義父からは「土下座して謝れ」と言われましたが、当時の私はそれを受け入れられず、結果として別の店舗へ降格させられてしまったのです。

異動先でも、最初のうちは人のせいにしてばかりで、店の売上はじわじわと下がっていきました。しかし、同じような環境に置かれ、近くの先輩から叱られるうちに「自分が変わらないと環境は変わらない」と気づかされました。心を入れ替えて店を少しずつ良くしていくと、次第に評価され、本店に戻ってこいと声をかけられたのです。

ところが、本店に戻る2月1日の朝、出勤してみると従業員が誰一人としていませんでした。私に反発して、全員が辞めてしまう「総上がり」が起きたのです。条件闘争もありましたが、それに屈して始まる労使関係で良い店が作れるわけがありません。結局、私についてきてくれる人はおらず、妻と、独立していたにもかかわらず店を閉めて助けに来てくれた先輩、そして私の3人だけで、週休2日からお店を回すという絶望的な再出発となりました。

覚悟を決めてやり通す。ぶれない信念が仲間を呼ぶ

──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。

「自分が変わらなければ、周りも環境も変わらない」という痛切な学びと、「覚悟を決めてやり通す」ことの大切さです。総上がりを経験したとき、私は自分の人間力のなさを痛感しましたが、同時に腹を据えるしかありませんでした。

それまでは一人ひとりの顔色をうかがってしまいがちでしたが、それだけでは決して良い会社にはなりません。私的な理由や感情ではなく、会社を守るため、そしてお客様のために「自分が何をやるべきか」を明確に決め、最後までやり通す覚悟を持つことが不可欠だと学びました。

また、「捨てる神あれば拾う神あり」という言葉の通り、自分がぶれずに「こういう店を作りたい」と発信し続けていれば、必ずそれに共鳴してくれる人が現れます。絶望的な状況のなかでも、親身になって助けてくれた先輩や、少しずつ増えていった新しい仲間たちがその証明です。自分自身をごまかさず、信念を持って行動し続けることが、最終的には困難を乗り越える原動力になるのだと確信しています。

「不真面目の補給」で人間らしさを取り戻せる場所へ

──会社の強みや魅力について、教えてください。

当社の強みは、戦後間もない頃から立川の地で培ってきた歴史と、地域のお客様との深い繋がりにあります。祖父が始めた今川焼き屋から始まり、米軍基地の兵士たちがビールを飲む姿を見て生ビール販売を始め、「立川の昼飲み文化」を作ってきたという誇りがあります。

私たちのミッションは「不真面目の補給」です。現代は真面目すぎる世の中になり、自己表現がしづらくなっています。だからこそ、居酒屋くらいは不真面目でいられて、自分らしさや人間らしさを取り戻せる場所でありたい。ビジョンには「水割り、お湯割り、腹を割り」を掲げ、お客様同士が腹を割って笑い合える景色をたくさん作っていくことを目指しています。「明日へのおせっかい」というバリューのもと、お客様に一歩踏み込んだ愛情あるコミュニケーションを提供できるのが当社の魅力です。

今後の課題は、効率化と理念の浸透を両立させることです。スマホでのオーダーシステムなどを導入して効率化や働き方改革は進みましたが、その分、お客様との接点が希薄になってしまうというジレンマもあります。捨てるべきものと残すべきもののバランスを見極めながら、「飲食業No.1の働きやすい企業」を目指して邁進していきます。

出会いを大切にし、まずは素直に行動してみる

──若者へのメッセージをお願いします。

私自身、昔から明確な目標や夢を持っていたわけではありません。どちらかと言えば行き当たりばったりで生きてきた人間ですが、それでもこうして会社を経営し、素晴らしい仲間に恵まれています。

若い方にお伝えしたいのは、ご縁のある方との「出会いを大切にすること」、そして「勧められたら素直に行動してみること」です。ケニアに行ったのも、知人のお父様のお話にアドレナリンが出るほど感動し、飛び込んだのがきっかけでした。この居酒屋の世界に入ったのも、「居酒屋もいい道だぞ」と声をかけてもらったご縁からです。

答えは最初から用意されているわけではありません。まずは動き出し、出会った人の言葉に素直に耳を傾けてみてください。私自身、これからも動き続け、多くの方から学ばせていただきたいと思っています。皆さんも、人とのご縁を大切にしながら、失敗を恐れずに素直な心で行動し続けてください。その一つひとつの行動が、必ず皆さんの人生を大きく開いてくれるはずです。

有限会社野村興業

設立 1971年
資本金 非公開
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 飲食店経営
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