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【株式会社ワキタハイテクス 脇田 大揮】離職と対立のどん底から、売上約3倍の「楽しむ」組織へ。3代目社長が学んだ人を信じる経営。

2026/10/28

Profile

脇田 大揮

株式会社ワキタハイテクス 代表取締役

幼少期からラグビーに打ち込んだ学生時代を経て、新卒で銀行に入行するも、病を機に退職。その後、父親が経営する株式会社ワキタハイテクスにアルバイトとして入社し、7年間の社員期間を経て3年前に3代目代表取締役に就任。
就任後、創業約70年の歴史を持つ老舗製造業に新しい風を吹き込もうと奮闘するも、直面したのは社員の離職や組織の分断という大きな壁だった。そこからいかにして売上を急成長させ、離職率ゼロの活気あふれる組織へと変貌させたのか。失敗や葛藤を経てたどり着いた「人を信じる経営」と「働く楽しさ」について、その歩みとともにお話を伺った。

効率主義が招いた組織の分断と、ディズニーのベンチで過ごした8時間

──逆境経験について教えてください。

代表に就任して最初の1年間が、私にとって最も苦しい時期でした。会社をより良くしようと、それまでなかった経営理念を作り、「頑張った人が正当に評価される組織にしよう」と、数字に基づいた評価制度や効率主義を取り入れたのです。

ところが、これが大きな失敗でした。今まで歴史上なかった仕組みを持ち込んだことで、新しい制度に乗って頑張ろうとする層と、変化を望まない層との間に分断が生まれ、お互いを攻撃し合うようになってしまったのです。結果として、その年の年末に長年勤めてくれた社員が3人も退職し、うつ病で休職するメンバーまで出してしまいました。

空気が最悪な状態のまま年末年始の休暇に入り、予定していた家族旅行でディズニーランドへ行きました。しかし、頭の中は「年明けに誰も会社に来てくれないかもしれない」という焦りでいっぱいです。家族には申し訳ないと思いつつ、私はランドのベンチに座り、8時間ぶっ通しでパソコンを叩いて、年明けの全社集会で空気を取り戻すための資料を作っていました。あの時の焦燥感と苦しさは、今でも忘れられません。

お金ではなく「思い」で向き合う。コーチングが教えてくれた人を信じる力

──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。

そのどん底から抜け出すために取り入れたのが、コーチングの考え方でした。2期目はとにかく反省して「優しいだけの組織」になってしまいましたが、3期目からはプロのコーチに伴走してもらい、社員の本音と本気で向き合うようになりました。

実は、私の父である先代からは「従業員を信じるな」と教え込まれており、無意識のうちに私も社員を疑ってしまっていたのだと思います。状況を打開しようと、社員全員に一律で100万円のボーナスを出したこともありましたが、お金だけでは組織のエンゲージメントは上がりませんでした。

しかし、対話を通じて言語化を進めていくと、社員の中には元々「会社が好き」「仕事が好き」「将来に期待している」という熱い思いがあることが分かったのです。そこに気づけたとき、初めて私は心の底から社員を信じることができるようになりました。「お金や制度ではなく、思いの部分で真っ直ぐに向き合うこと」。それが、失敗を繰り返してたどり着いた最大の教訓です。

ニッチ産業の確固たる強みと、後継者不足の日本企業を救うビジョン

──会社の強みや魅力について、教えてください。

弊社は創業約70年になる製造業で、主に防衛関係の仕事をずっと手掛けています。非常にニッチな領域ではありますが、社会を根底から支える価値の高い事業であり、ビジネスモデルとしても確固たる強みを持っています。

そして現在の最大の強みは、社員のコミュニケーションと「意思決定の質」が劇的に向上したことです。組織改革の結果、私が就任する前に13億円だった売上は25億円に成長し、来期は41億円を見込むまでになりました。従業員数も40名から80名へと倍増しましたが、離職率はゼロを維持しています。

今後の展望としては、自社の事業をさらに伸ばし知名度を上げていくことはもちろん、個人的に「苦しんでいる後継者社長を救いたい」という思いを持っています。日本全国には、先代との軋轢や組織のしがらみで身動きが取れなくなっている後継者がたくさんいます。私が経験した葛藤や、コーチングを用いた組織変革のノウハウを還元し、迷える中小企業を支援していきたいと考えています。

情報に振り回されず、「働く楽しさ」を追求して自分で決断する

──若者へのメッセージをお願いします。

今の時代、SNSやYouTubeには情報があふれすぎていて、「壮大な目標を持たなければならない」「やりたいことを見つけなければならない」と焦っている若者が多いように感じます。しかし、情報に振り回されたり、他人の敷いたレールに乗ったりする必要はありません。無理にやりたいことを探さなくてもいい。大切なのは、自分で決めて行動することです。

私自身、決してリーダー気質ではありませんし、エラーを起こしながら独自のやり方で突っ走ってきました。それでも、自分で決断して挑戦を続けることで、道は拓けてきたのです。

もう一つ伝えたいのは「楽しむ」ことの重要性です。大人が仕事を楽しんでいなければ、若者は「働きたい」と思いませんよね。ディズニーランドは並ぶのがしんどくても「また行きたい」と思える魅力があります。会社や仕事も同じで、大変なことがあっても「あの会議は楽しかった」「またやりたい」と思える空間をつくることが大事です。まずは目の前のことを全力で楽しみ、自分の意思で決断する人生を歩んでいってほしいと思います。

株式会社ワキタハイテクス

設立 昭和32年2月23日
資本金 非公開
売上高 非公開
従業員数 80名
事業内容 ・防衛・航空宇宙事業に関連する器具の設計製作及び販売
・ベルトコンベア事業に関連する器具の設計制作及び販売
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