「正しいこと」を押し付けた新入社員時代。正義感が生んだ組織との軋轢
──逆境経験について教えてください。
社会人1年目のとき、新卒ながら天狗になって周囲から総スカンを食らった経験が、私の最初の大きな逆境でした。
当時、入社した生命保険会社で数ヶ月間営業成果を出した後、経験豊富な営業担当者5名ほどのマネジメントを任されました。 私は昔から「曲がったことが嫌い」という性格で、保険という商品の価値を信じていたこともあり、これを売らないのは悪であるという強烈な価値観を持っていたんです。
そのため、売上目標が未達のメンバーに対して「会社が決めた目標なんだから、やるに決まっているでしょう」「保険を売りに行かないのはおかしい」と、自分の正義感と「正論」を一方的に押し付けるようなマネジメントをしてしまいました。
当然、そのような姿勢ではメンバーの信頼を得られず、厳しい指摘を受けることもありました。 組織の成果を出さなければならないのにチームが全く機能しないという、非常に苦しい状況に陥ってしまいました。
「人は必ずしも同じ世界を見ていない」。相手の人生を知ることから始めるマネジメントへの転換
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
「自分の正解が、想像以上に他の人にとっての正解とは限らない」という当たり前の事実に気づかされました。私にとっては「保険を売って世の中に貢献すること」が正義でしたが、メンバーの方々にはそれぞれの全く異なる境遇や人生の目標がありました。
10人いれば10人の人生があります。自分が仕事で成し遂げたいことと、相手の人生のゴールをどう結びつけられるかを考えなければ、人は動いてくれないのだと痛感したんです。
私は心を入れ替え、まずは目の前で「本当にすみませんでした」と頭を下げて謝罪しました。その上で、メンバーの皆さんが「なぜこの仕事をしているのか」「どういう生活を送り、どれくらい稼ぎたいのか」といった境遇や目標を深く聞かせていただいたのです。
対話を重ねる中で、「では、その目標を達成するために、いまの環境をうまく利用しましょう」と提案し、商品説明が苦手な方には私が同行してサポートするなど、相手の状況に合わせて伴走するスタイルに変えました。結果として関係性が改善し、チームとしてもしっかりと営業成果を出せるようになりました。

誰も悪気はない。ズレた「前提」を可視化し、組織を一つの方向へ導く
──この経験は「マネジメントスキャン」の事業にどう繋がっていくのでしょうか?
その後、事業会社の人事や人事コンサルタントとして様々な組織に関わらせていただく中で、もう一つ大きな気づきがありました。それは、「一人ひとりの人生の価値観が違う」のと同じように、「所属している一つの会社に対しても、一人ひとりが同じように見ているわけではない」ということです。
同じ会社に所属して、同じ事業をやっているはずなのに、「今、うちの会社はこういう立ち位置だ」「うちの会社が抱えている一番の課題はこれだ」という認識が、人によって実は結構バラバラなんです。
ただ、ここで強調しておきたいのは、認識がズレること自体は、人間である以上当たり前に起こるということです。そこに悪意があってずれているケースは基本的には多くないと思います。各々が自分なりの「善意」や「正義」、あるいは「会社を良くしたい」という強い思いをしっかりと持っています。
──誰も悪気はないのに、なぜ組織の中で摩擦が起きてしまうのでしょうか?
そもそもの会社に対する見方や問題意識といった、「暗黙化されている前提」の部分がズレたまま走ってしまうからと考えています。 せっかく会社のためを思ってやっていることが、前提が違うせいで食い違ってしまう。お互いに善意で一生懸命やっているのになかなか噛み合わないというのは、本当にすごくもったいないことですよね。
だからこそ、私たちは、組織の「ズレ」を客観的に可視化する診断プログラムIIOSS(イーオス)と伴走型コンサルティングを提供しています。私たちの強みは、経営や組織運営に関する10の要素について、経営者や管理職がどのように認識しているのかを可視化し、その一致点や相違点を明らかにできることです。さらに、診断結果を提示して終わるのではなく、組織が抱える課題の特定から改善に向けた実行まで、伴走支援できることも強みです。
また、診断して終わりではなく変革に向けた伴走支援も行える点も、評論家では終わらないという意味で強みです。
社長と役員、現場のマネージャーが、それぞれ会社をどう捉えているのか。その主観的な認識を共通の設問で可視化し、互いの認識の違いをデータとして比較できるようにします。 「ああ、部署や立場によってこんな風に会社が違って見えているんだな」と現在地を共有して初めて、誰かを悪者にすることなく、全員の目線をしっかりと合わせにいくことができます。
一人ひとりの善意や努力を空回りさせることなく、互いの認識の違いを理解し、組織として目指す方向を共有する。そして、経営陣から現場のマネージャーまでが、それぞれの役割を果たしながら成果を生み出せる組織づくりを支援すること。それが、私たちの提供したい価値です。

自分の人生の舵は自分で握れ。心から共感できる「船長」を見つけてほしい
──最後に、これからキャリアを築いていく若者へのメッセージをお願いします。
「周りの目を気にせず、自分の人生を生きてほしい」ということを強くお伝えしたいです。「大手企業に行くべき。ベンチャー企業に行くべき。」「〇〇な仕事がいい」といった世間一般的な価値観や情報は多数流布されていますが、それは誰かが勝手に決めたことに過ぎません。
誰かの人生をなぞるように生きるのではなく、自分の人生には自分で責任を負い、しっかりと考えて自ら意思決定をすることが何よりも大切です。若いうちは、自分の限界を決めつけずに可能性を広げてください。
そして、就職活動などで会社を選ぶ際には、これから世の中を本気で良くしようとしている「船長(社長)」と直接話し、その言葉に心から共感できる環境を見つけてください。自分が本当に尊敬でき、遠慮や忖度なく意見をぶつけ合えるトップのもとで働くことができれば、充実したキャリアを築けるはずです。

