高い理想が招いた組織の崩壊とスタッフの相次ぐ離職
独立して法人化し、スタッフを採用し始めた頃の経験です。開業1年目で100社以上のお客様とご契約いただき、特定の会計システムの導入件数で日本一になるなど、業績としては順調に伸びていました。しかし、その過程でスタッフの離職が相次いでしまったのです。
私はそれまで、公認会計士の資格を持ったプロフェッショナルばかりが集まる監査法人という特殊な環境で育ってきました。そのため、未経験から入社してくれたスタッフに対しても、無意識のうちに自分と同じレベルの品質やスピードを求めてしまっていたのです。
当時の私は外回りばかりで事務所に不在がちだったにもかかわらず、「もっと自分で考えて動いてほしい」と高い要求を押し付けていました。結果として外圧的なコミュニケーションになってしまい、スタッフがついてこられない状況を生み出してしまったのが、私にとっての大きな挫折であり逆境でした。
「専門家」から「経営者」へ。器を広げ、声に耳を傾ける
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
「専門家」としての視点から「経営者」としての視点へ切り替える必要があると痛感しました。離職が続いた当初は「仕方ない」と他責にしてしまう部分もありましたが、やはりそういう仕組みや環境を作れていない自分自身に原因があるのだと気づいたのです。
そこからは、コミュニケーションの取り方を大きく変え、スタッフの話にしっかりと耳を傾けるようになりました。1on1の面談では「私は何をどう変えればいいですか?」と率直に尋ね、スタッフから「圧が強いです」と直してほしい点を指摘された際には、しっかりと受け入れるようにしています。
経営の本に「トップの器が会社の限界である」と書かれていますが、本当にその通りだと思います。自分自身の器を広げ、色々な人と協力できる体制を作り、多様な人材を受け入れられる心のゆとりを持つことが、経営者として何より大切なのだと学びました。
沖縄のビジネスインフラとして、ワンストップの支援体制を構築
──会社の強みや魅力について、教えてください。
現在、税理士法人だけで25名ほどの規模になり、数年以内には沖縄県内でトップクラスになる見込みです。私たちの強みは、税務にとどまらず、お客様のバックオフィスや経営課題をワンストップでサポートできる「ビジネスインフラ」としての体制にあります。
2026年2月にグループ内に社会保険労務士法人を立ち上げ、行政書士法人や不動産会社の設立も進めています。これにより、人事労務の悩みや補助金申請の手続き、相続時の不動産処分まで自社内で包括的に対応できるようになります。さらに、資金調達後の運用サポートや、TOKYO PRO Marketなどへの上場(IPO)支援といった高度な財務コンサルティングも強化しています。
今後は沖縄県内での基盤を盤石にしつつ、東京への進出や、台湾などアジア圏への展開も視野に入れています。「琉球」という親しみやすい漢字を冠した社名とともに、沖縄から外へと積極的に魅力を発信していきたいと考えています。
立地のせいにせず、AI時代を生き抜く「本物」を目指せ
──若者へのメッセージをお願いします。
インターネットや交通網の発達により、今や「地方だから」という立地的な不利は昔ほどありません。沖縄という場所であっても、全国で戦えるレベルを目指すことは十分に可能です。だからこそ、今いる環境のせいにせず、「その環境で自分に最大限何ができるか」を考えて行動してほしいと思います。もちろん、一度外の世界に出て客観的な視点を持つことも非常に有効です。
そして、AIが急速に発達し、仕事の「最低水準」がどんどん上がっていく時代だからこそ、私は「本物のスペシャリスト」を目指すことをお勧めします。AIにできることが増えても、最後の高度な判断や本質的なクリエイティビティは、やはりその道を極めた本物の人間にしか出せません。専門性をとことん磨き上げ、AI時代でも揺るがない力を身につけていってください。

