電気とガスが止まった独立直後と、キャプテンとしての深い挫折
──逆境経験について教えてください。
一番の逆境は、2020年にコーチング事業で独立してからの約1年半です。営業の経験が全くなかったため、いくら体験コーチングを実施しても契約に結びつかず、まったくお客様がつかない状況が続きました。ついには電気やガスが止まってしまうほどの困窮状態に陥り、「なんでこんなにうまくいかないんだろう」「自分には価値がないのではないか」と激しく自分を責めました。
実は、自分を追い詰めてしまうという経験は、実業団でソフトボールをやっていた時代にもありました。入団して5年目、キャプテンを任された年に、チームを2部リーグに降格させてしまったのです。監督と選手たちの板挟みになり、チームを勝利の方向へまとめきれなかった。さらには人間関係もうまくいかず、自分自身の守備の課題にも直面して限界を感じていました。
昔から「自分はきっとすごい人間になれる」という根拠のない自己効力感がある一方で、基準を高く設定しすぎるためになかなか自分に満足できず、自己肯定感が極めて低いというギャップを抱えていました。実業団時代も独立直後も、結果が出せない自分に対する強い失望感が、私をどん底の逆境へと突き落としたのです。
矢印を「自分」から「相手」へ向けることで見えた光
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
独立後にうまくいかなかった最大の要因は、矢印が完全に「自分」に向いていたことでした。当時は生活がかかっていたこともあり、「お金を稼がなければ」という気持ちばかりが先行し、SNSをバズらせて集客しなければと思い込んでいたのです。
しかし、さまざまな人に直接会いに行く中で、大きな思考の転換がありました。「自分の商品を売りたい」という執着を手放し、「目の前の人が良くなるためにはどうしたらいいか」「何をしたら相手が喜んでくれるか」という相手本位の視点を持つようにしたのです。対面で対話を重ね、相手のお悩みや課題を丁寧に引き出していくうちに、少しずつ道が開けていきました。
また、実業団時代に出会ったメンタルコーチングを通じた内省も、私に大きな教訓を与えてくれました。それまでの私は、ヒットを打ったり特別なことがあったりしないと楽しくないという悲観的な捉え方をしていました。しかしコーチングを通して、当たり前のように一緒に練習できる仲間がいることへの感謝など、自分の中の「欠落していた部分」に気づくことができました。自分一人で考えるのではなく、他者からの質問によって「知らない自分」や「無意識の自分」に出会うことの重要性を、痛いほど学びました。

スポーツで培った「無意識の反射・反応」を引き出す独自メソッド
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私のコーチングの最大の強みは、長年スポーツの第一線で培ってきた経験を活かし、クライアントの「無意識の反射や反応」にアプローチできる点です。
例えばスポーツにおいて、歩くときに「右足を出して左手を出して」と頭で考えていては動きがぎこちなくなってしまいますよね。人間の行動もそれと同じで、いくら意識して良い気分を作ろうとしても、焦った時などには必ず無意識の反応がボロとなって現れます。頭で計算できる範囲の目標設定ではそこまでしか到達できませんが、会話の中から無意識に考えていることを引き出し、本当に成し遂げたいゴールに焦点を当てることで、想像以上の力を発揮できるようになります。感覚派の方や、大きな願望を持っている経営者や営業職の方には非常にマッチするアプローチだと自負しています。
今後の展望としては、スポーツの力を使って人間力を高めた選手たちと、それを必要とする企業をつなぐ架け橋になりたいと考えています。スポーツ界とビジネス界が分断されるのではなく、双方が一緒になって大きくなっていけるような仕組みを創り上げるのが私の目標です。

夢は「仮」でいい。上手くいくまでやり切る力が道を拓く
──若者へのメッセージをお願いします。
何かを始めてもうまくいかないと、すぐに辞めてしまう人が多いように感じます。しかし、成功するために最も大切なのは「うまくいくまでやり切る」ことです。私自身、ソフトボールでも仕事でも、決して順風満帆だったわけではありません。それでも「結果を出すまでは絶対に辞めない」と心に決めていました。中途半端に投げ出さず、決めたことを最後までやり切る姿は、必ず周囲に良い影響を与え、厚い信頼へと繋がります。
また、今の若い世代の中には「夢ややりたいことが見つからない」と悩む人も多いでしょう。そういう人には、「仮でいいから設定してみて」と伝えたいです。一生の夢を今すぐ決める必要はありません。1%でも興味があるなら、まずはそれを「仮の夢」にして走り出してみてください。
行動していくうちに、必ず別の景色が見えてきます。違ったらその時に切り替えればいいし、目標は毎日更新してもいいのです。何も決めずに立ち止まっていることこそが一番もったいない。変化を恐れず、仮の目標に向かって全力で挑み続けてほしいと願っています。
