契約ゼロでも諦めなかった。笑顔を届け続けた新人時代
──逆境経験について教えてください。
大学院で物理学の実験に没頭し、教師になる夢を追いかけたものの、採用試験の狭き門に阻まれました。そんな時、母が見つけてきた新聞広告をきっかけに、全くの未経験から生命保険の営業職に飛び込みます。しかし、そこは想像を絶する厳しい世界でした。同期が次々と初契約を獲得していく中、私だけが何か月も契約ゼロ。営業部に戻れば、達成状況を示すグラフの中で私の欄だけが真っ白。焦りとプレッシャーで押しつぶされそうな日々でした。営業初日にフロアに響き渡る声でお客様から叱責され、営業には向いていないのではないかと思ったことも、一度や二度ではありません。
しかし、私は担当先のお客様を訪問すること自体は大好きだったんです。契約を取りに行くというより、「どうしたらこの人たちに喜んでもらえるか」ばかり考えていましたね。商社マンの方々が夜遅くまで働いてお腹を空かせていると聞けば、クロワッサンを差し入れ、支部長の鶴の一声で営業部に山積みになったバナナを「お笑い作戦」と称して配って回りました。バナナ一本一本に「(保険会社名)のO2(オーツー)です」と私の名前(大津)と酸素をかけたメッセージを書いて机に置いておく。出社した人がクスッと笑ってくれる、その瞬間が何よりの喜びでした。
「あなたから買いたい」の一言。信じてくれた人が教えてくれたこと
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
契約が取れず苦しんでいた私を、当時のトレーナーは決して見放しませんでした。「大津さんは、これだけお客様のために行動している。結果が出ないはずがないから、待ってあげてください」と、部長から私を守ってくれたのです。その信頼が、私の心の支えでした。そしてある日、お客様の一人が「他社の保険に入っていたけど、担当者が辞めてしまって。大津さんから入りたいから、おすすめのプランを持ってきて」と声をかけてくださったんです。「保険会社に」ではなく「大津さんに」と言ってくれたその一言が、私の営業人生を大きく変えました。
この経験から学んだのは、人を信じ抜くことの大切さです。トレーナーが私を信じてくれたように、私も相手がどんな状況にあろうと、その可能性を信じて応援できる人間でありたい。そう強く思うようになりました。そして、仕事とは単に商品を売ることではなく、お客様に喜びを届け、信頼関係を築くプロセスそのものであると確信しました。たとえ遠回りに見えても、人を想う実直な行動こそが、最後には一番大きな力になる。この教訓が、今の私のすべての事業の根幹を成しています。

私のポケットはドラえもん。昆布で日本の未来をV字回復させる
──会社の強みや魅力について、教えてください。
現在の私の仕事は、特定の商材を持たない「課題解決業」です。お客様のお困りごとをじっくりお聞きし、まるでドラえもんの四次元ポケットのように、私の持つ人脈や知識、様々な商材の中から最適な解決策をご提案します。過去には、知人の経営者から「会社を譲受したい」と相談を受け、どなたも引き受け手がおられなかったので、未経験のM&Aの事業も取り組みを始めました。頼まれたら断れない「おせっかい」な性分ですが、そのおかげで多種多様な経験を積み、解決策の引き出しを増やすことができました。
そして今、私が人生のすべてを懸けて取り組んでいるのが「昆布事業」です。きっかけは、日本の食料自給率の低さや第一次産業の衰退、そして地球温暖化の影響によって北海道の昆布が大きな打撃を受けている現実を知ったことでした。「きっと誰かが何とかしてくれる」と傍観者でいるのではなく、自分にできることを始めようと決意したのです。
昆布は、ただの食材ではありません。日本の食文化の根幹を支え、海の環境を守り、さらには新たな産業を生み出す無限の可能性を秘めた、まさに日本の「宝」です。私自身、幼い頃から母の手料理で沢山の人と食卓を囲みながら育ち、昆布には家族の温もりや思い出が詰まっています。だからこそ、この文化を次の世代へつないでいきたいという強い使命感があります。
現在は、昆布に関わる漁師や生産・加工・販売業者、料理人、地域で文化を支える方々の営みを物語として発信する活動にも力を入れています。将来的には、昆布に関わる人々の想いや挑戦を広く社会へ届けることで、昆布産業の価値を再発見してもらい、若い世代が第一次産業に希望を持てる未来をつくりたいと考えています。物理学で培った探究心と、営業で培った発信力を活かして、昆布を切り口に日本の経済と食文化を元気にすること。それが私の描く大きな夢です。
ごめんなさいね、そして一緒に創ろう。地球を舞台に生きる君たちへ
──若者へのメッセージをお願いします。
まず、今の若い皆さんには「ごめんなさいね」と伝えたいです。私たち大人の世代が、皆さんが生きにくいと感じる世の中を作ってしまった責任があると思っています。でも、決して諦めてはいません。私は昆布を通して、皆さんに希望ある未来のバトンを渡したいと本気で考えています。だから、どうか力を貸してください。
失敗なんて存在しません。私もずっとスロースターターで、うまくいかないことの連続でした。でも、諦めずに続ければ道は拓けます。そして、少しでもいいので、日本の第一次産業や、私たちが生きるこの国土に関心を持ってほしいのです。世界に目を向ければ、日本の素晴らしさがより深く理解できるはずです。この地球すべてが、あなたの人生の舞台です。視野を狭めず、ワクワクする冒険に飛び出してください。私が昆布で創る新しい日本の未来の物語に、ぜひ皆さんも参加してくれることを心から願っています。


