「親がいなくても大丈夫」──愛情に支えられて歩んだ幼少期
──逆境経験について教えてください。
私の人生を語る上で、両親がいない環境で育ったことは切り離せません。周りの方からは「大変だったでしょう」とよく言われるのですが、私自身はごく普通に、そして楽しく育ってきたという感覚なんです。
母は私が1歳になる前に亡くなり、その後は父と暮らしていましたが、ある女性からいじめられた経験がトラウマとなり、大人の女性が怖くなってしまいました。
3歳からはおばに引き取られましたが、女性への恐怖心は根強く、小学校の担任が女性の先生だった低学年の頃は、ほとんど学校に通えませんでした。友達が学校から帰ってくるのを待って一緒に遊ぶ、そんな毎日でしたね。転機が訪れたのは小学5年生の時。担任が初めて男性の先生になり、ようやく学校へ通えるようになったんです。
親がいないことで寂しさを感じた記憶はほとんどありません。愛情深いおばが、勉強しなさいと一度も言うことなく、のびのびと育ててくれたおかげです。
ただ、どうしても「できないこと」はありました。一番大きかったのは、経済的な理由で大学進学を諦めなければならなかったこと。やりたいことがあっても、環境によって選択肢が狭まってしまう。それが、私にとっての現実でした。
逆境こそ私を燃やす原動力──諦めない心が切り拓いた道
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
「親がいないからできない」と言われる状況が、私の負けず嫌いな性格に火をつけたのかもしれません。二車線の道路では隣の車に負けたくない、なんていう些細なことにも闘志を燃やしてしまうくらい(笑)。この「何クソ根性」が、人生のあらゆる場面で私を支えてくれました。
東日本大震災の時もそうでした。もちろん生活は大変でしたが、私にとっては逆境というより「燃える」対象だったんです。どうすればこの状況を乗り越えられるか、別のやり方はないかと考えるのが好きなんですね。
当時、私が参加していたおやこ劇場の会員が震災で激減し、閉鎖の危機に瀕しました。でも、私は「ここで諦めてどうするんだ」と。不思議と、またホールに人が集まる未来が見えたんです。反対意見もありましたが、活動継続を押し通し、今では新しい若い会員さんも増えて、賑わいを取り戻しています。
できない理由を探すのではなく、「やり方を変えればできる」と信じること。それが、私の経験から得た一番の学びです。どんな困難な状況でも、諦めずに方法を探し続ければ、必ず道は拓けると信じています。

子どもを救うには、まず大人から──絵本セラピストとして描く未来
──会社の強みや魅力について、教えてください。
すべての活動の根底にあるのは、「輝く大人を増やしたい」という想いです。
きっかけは、結婚後に始めた小学校での読み聞かせボランティアでした。そこで、リストカットの跡がある子や、不自然な痣を作ってくる子など、心に傷を負った子どもたちの姿を目の当たりにしたのです。
子どもたちを何とかしたい。でも、その原因を作っているのは大人だ。そう気づいた時、「大人を元気にすることこそが、子どもを救うことに繋がる」と確信しました。
そこから絵本セラピストの道に進み、現在は学研教室や、発達にグレーゾーンを抱える子にも対応した個別の学習プログラムを提供しています。
子どもたちと日々接していると、本当に家庭の様子が手に取るようにわかるんです。子どもは親の鏡。だからこそ、大人が「大人になるって楽しいよ」「早く大人においでよ」と胸を張って言える社会を作りたい。それが私の目指す世界観です。
最終的な夢は、私自身の経験も踏まえ、親と暮らせない子どもたちのための「家」を作ること。それは単なる施設ではなく、温かい家庭のような場所です。この夢を実現するためにも、まずは絵本を通じて、一人でも多くの大人が自分らしく輝けるきっかけを作っていきたいと考えています。

枠にはまらず、自分らしく──若者たちへ伝えたい人生の楽しみ方
──若者へのメッセージをお願いします。
今の若い人たちを見ていると、本当に「お利口さん」だなと感じます。私たちの世代が子育てをする中で、ちゃんとしている子、手のかからない子を求めすぎたのかもしれません。その結果、みんなそつなく物事をこなし、しっかりしているけれど、どこか窮屈そうにも見えます。
だからこそ、若い皆さんには「もっと枠からはみ出して、思いっきりやりなさい」と伝えたいです。若い時の失敗なんて、長い人生から見れば大したことではありません。むしろ、突発的な出来事に対応する力や、困難を乗り越えるしなやかさは、そうした経験の中からしか生まれないものです。
私の人生も、計画通りに進んだことなんてほとんどありません。目の前に現れた面白そうなことに次々と飛びついて、気づいたら今ここにいる。それでいいのだと思います。
どうか周りの目を気にしすぎず、自分の心の声に正直に、大胆に挑戦してみてください。その先に、きっと面白い未来が待っています。

