「私さえいなければ」自己否定から始まった、終わりの見えない暗闇
──逆境経験について教えてください。
活発で運動が大好きだった少女時代。その一方で、家庭は常に緊張感に包まれていました。両親の激しい言い争いが始まると、私は存在しない訪問者を家に招き入れ、自分だけの世界に閉じこもることで心を守っていたのです。一人っ子だった私にとって、両親の不和は「私がいるからだ」という罪悪感に直結していました。
「生まれてこなければよかった」
その感覚は、幼い頃から心の奥深くに刻み込まれていきました。やがて学校でのいじめ、過食と拒食が始まり、心と体の逃げ場を求めた私は、無意識に“病気になる”という選択をしていきます。現実から逃れるように入院生活を送り、ついには精神病院の閉鎖病棟へ。
薬漬けの日々の中では、自分が自分ではなくなっていく感覚がありました。人間の醜さや弱さ、狂気のようなものもたくさん見ましたし、その中で時折見える魂の輝きにも触れました。このままでは人間でなくなってしまうという恐怖と、「生きている価値がない」という諦めが、ずっと心を支配していたんです。
実際、退院してはまた救急搬送されて入院する、ということを何度も繰り返していました。生きている理由が分からないし、薬の影響で正常な判断もできない。でも、なぜか助かってしまう。自分でも驚くくらい生命力だけは強かったんですよね(笑)。
“世界一になれなければ価値がない”──極真空手に人生を懸けた理由
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
薬を断ち、社会復帰を果たした後も、苦しみは終わりませんでした。次に始まったのは、「過去を隠す」苦しみです。空白期間を偽るための嘘が、さらに自己否定を深めていきました。
そんな中で出会ったのが、極真空手でした。素手で殴り合い、蹴り合い、倒して勝つフルコンタクト空手。その極限の世界に、自分の存在理由を求めたんです。
当時の私は、本気でこう思っていました。
「世界一になれば、生きていていい居場所ができる」
「世界一になれなければ、価値がない」
その考えだけで、自分を極限まで追い込み続けました。結果として、私は極真空手無差別級全日本チャンピオンになり、全世界大会では第3位になりました。
ただ、“世界一”にはなれなかったんです。
でも不思議と、悔しさだけではありませんでした。2日間にわたる世界大会の中で、私は何百回も自分の限界を超えていたんです。負けた時には、もう一滴も力が残っていないほど、全てを出し切っていました。
「ああ、ここまでやり切れるんだ」
そう思えたことが、自分にとって大きかった。さらに、その過程では、人知を超えた大きな力に守られているような感覚も何度もありました。勝敗以上に、“生きる”ということを教えられた時間だったと思っています。
そして本当の転機は、その後コロナ禍で全てを失った時でした。仕事も人間関係もゼロになり、自分と徹底的に向き合わざるを得なくなった。すると今度は、「何もできない自分」への強烈な劣等感に襲われたんです。
でも、もがき苦しんだ末に、「もういいや」と全てを諦め、手放した瞬間、世界が変わりました。
何かを必死に掴みに行かなくても、自分には元々与えられている力がある。それをただ受け取ればいい。そう腑に落ちた瞬間から、出会う人も環境も変わり始めました。
あの振り幅の激しい人生は、“受け取る”ことを知るために必要だったのだと、今では思っています。

“体感”こそが人を変える。人生の全経験を、次世代の力へ
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私の事業の根幹にあるのは、これまでの人生で得た全ての「体感」です。現在は、主に企業研修と経営者向けパーソナルセッションを行っています。
企業研修では、チームビルディングを目的とした「ファイトネス」や、呼吸と武道の動きを取り入れたオリジナルプログラム「マインド空手」などを提供しています。座学ではなく、実際に体を動かすことで、心と体のつながりを実感しながら、自己肯定感やリーダーシップを育てていく内容です。
また、経営者の方に対しては、体の感覚とメンタリティを一致させ、本来持っている可能性を最大限に引き出すサポートをしています。
私の強みは、人生の光と闇、その両極端を知っていることです。だからこそ伝えられる、本質的な変化があると思っています。
今後は、アスリートのセカンドキャリア支援や、自身の経験を伝える講演活動にもさらに力を入れていきたいです。

人生は、自分の“前提”通りになる
──若者へのメッセージをお願いします。
まず伝えたいのは、「自分のポテンシャルをなめるな」ということです。自分を信じてあげなければ、何も始まりません。
そして、何が起きても意外と大丈夫なんです。今見えている現実が、人生の全てではない。最悪だと思っていた出来事が、未来の最高のギフトにつながることもある。
だから、どんなことも「面白がって」みてください。
自分の人生を“面白いチャレンジ”だと設定すれば、本当に面白いことしか起きなくなります。私は「使命」という言葉より、「前提」という言葉を大事にしています。
「私は、結局うまくいっちゃう人なんで」
そんな前提を、自分の中に置いてみてほしいんです。そうすると、日々いろんなことで悩んでも、「まあ、大丈夫か」と思えるようになる。
人生は、出会いで変わります。あなたが面白く生きていれば、必ず面白い人たちが集まってくる。
だから恐れずに、自分の人生という物語を、思いっきり楽しんでください。

