光と影の起業ストーリー。会社清算と、我が子との別れ
──逆境経験について教えてください。
私のキャリアにおける最初の逆境は、一社目の会社を畳んだことです。もともと、ある上場企業の役員の方から「個人には直接発注できないから」と、会社設立を後押しされる形でスタートした事業でした。しかし後ろ盾だった役員の方がいなくなると状況は一変。担当者から「このままでは納品は受け付けられません」と何度も告げられ、売上の大半を依存していた事業は立ち行かなくなり、結果として会社を清算しました。
経営者として何より辛かったのは、社員に最後の給与を支払えなかったこと。自分の力のなさを痛感し、申し訳なさと不甲斐なさで胃がねじ切れそうでした。この経験から、特定の取引先に依存するビジネスモデルの危うさを骨身に染みて学びました。
そしてもう一つ、私の人生を大きく揺るがした出来事があります。2018年に生まれた息子が、18トリソミーという染色体異常を抱えていたのです。いわゆる「医療的ケア児」として、家族一丸となって支える日々が続きましたが、わずか1年足らずで空へと旅立ってしまいました。人生とは、本当に何が起こるかわからないものだと痛感させられた出来事です。

絶望から得た「ボーナスタイム」という視点
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
一社目の失敗は、現在の会社経営における大きな教訓となっています。仕事の経路を一つに絞ることのリスクを学んだからこそ、今は多角的な視点で事業の安定化を図ることを常に意識しています。
そして、息子の死という経験は、私の価値観を根底から変えました。本来であれば、彼をケアするために使われるはずだった時間。彼がいなくなったことで、私は再び仕事に打ち込める時間を手にしてしまった。私はこの時間を、息子が残してくれた「ボーナスタイム」だと捉えることにしたのです。この時間で何をするべきか、どう生きるべきか。いつの日か彼とまた会う日に、彼に胸を張って話せることを増やす人生を歩もうと心に誓いました。仕事以外にバスケやフットサルなどに積極的に参加しているのも、1つにはそういった面もあります。仲間づくりや体力維持・向上だけでなく、ケガをしたならしたで、そういった人が働きやすくするにはと考えるきっかけにもなります。
これらの経験を通じて、「コントロールできないことに悩んでも意味がない」という考え方がより強固になりました。過去を悔やむのではなく、未来を憂うのでもなく、ただ「今、自分で下す判断に後悔をしない」こと。それだけを道しるべに生きています。

私たちは「ITの相談役」。顧客の本質的な課題解決を目指して
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの最大の強みは、単なるシステム開発会社ではなく、お客様にとっての「ITの相談役」であることです。お客様から「これを作りたい」と言われても、私たちはすぐには作りません。まず「なぜそれが必要なのですか?」「本当に解決したい課題は何ですか?」と問いかけ、本質を掘り下げていきます。
時には、開発しない方がお客様のためになると判断すれば、「その機能は不要です」と正直にお伝えすることもあります。目先の利益とは相反するかもしれませんが、お客様の成功に長期的に貢献することこそが、私たちの存在価値だと信じているからです。
現在は、これまでの受託開発事業に加え、生成AIのeラーニングサービスにも力を入れています。1社で月額1万円という誰もがアクセスしやすい価格で、企業のITリテラシーの向上・底上げを支援する。これもまた、多くの中小企業が抱える「誰に相談していいかわからない」という課題を解決したい、という想いから生まれた事業です。
他人に期待するな。目の前のすべてに感謝し、「生きる力」を磨け
──若者へのメッセージをお願いします。
もし私が若い世代の皆さんに何かを伝えられるとしたら、それは「生きる力をつけよう」という一言に尽きます。変化が激しく、未来の予測が困難なこの時代に、「こうすれば安泰」という決まったルートはもはや存在しません。大切なのは、何が起きても対応できるしなやかさと、自ら道を切り拓く力です。
その力を養うために、「なぜ?」と問い続ける習慣を身につけてほしい。そして、「反省はしても後悔はしない」という覚悟を持って、自分の判断で道を選んでください。
もう一つ、私が大切にしているのは「他人に期待しない」ということです。これは冷たい言葉に聞こえるかもしれませんが、逆説的に、人生を豊かにするコツなんです。期待しないからこそ、誰かが何かをしてくれたこと一つひとつが「有り難い」ことだと心から思える。当たり前だと思っていた日常が、感謝すべき奇跡の連続だと気づくはずです。その視点を持てば、きっと強くしなやかに、そして幸せに生きていけると思います。
