売上ゼロ、払えない税金。思いだけでは会社は守れないと知った日
──逆境経験について教えてください。
会社を設立して間もなく、世界はコロナ禍に突入しました。もともと、僕自身のようにキャリアに悩む若者を支援したいという思いで転職支援事業を立ち上げたのですが、採用市場は一気に冷え込み、売上はゼロに。これは潰れる、と。生き残るために、とにかく必死でした。
知見のあったBPO事業へ急遽ピボットしたものの、事業がすぐに立ち上がるわけではありません。当時は利益を度外視してでも仕事を受けざるを得ず、手元のキャッシュは全く残らない。ついには、資金繰りは極限まで厳しくなり、納税資金の確保にも苦しむ状況でした。税務署にも相談しながら、どうにか会社を存続させるために必死で対応していました。
更に2ヶ月先には資金がショートすることが目に見えていて、夜も眠れず、頭の中がお金のことで支配される感覚でした。ただ純粋な「思い」だけで起業しましたが、それだけでは大切な従業員も、会社も、そして僕が実現したい未来も守れないのだと、痛感させられた出来事です。
善意だけでは続かない――“経営”に目覚めた転機
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
最大の学びは、「続かない善意は偽善だ」ということです。どんなに立派な思いや社会貢献の志があっても、事業として継続できなければ意味がない。そのためには、会社としてきちんと利益を出し、存続し続けるための「経営」が必要不可欠なのだと、脳みそが完全に切り替わりました。それまではどんぶり勘定だった財務状況を徹底的に見直し、利益構造の改革に着手しました。
不思議なことに、何度も「もうダメだ」という瞬間に、予期せぬ支えや偶然にも助けられ、紙一重で生き延びることができたんです。その経験から、僕の今の経営は「拾った命」だと思っています。「お前がやろうとしていることは社会に必要だから、是が非でもやり遂げろ」と、誰かに言われているような気がして。この命は自分のためではなく、周りのために、社会のために使おうと心に誓いました。
かつて僕を突き動かしていた「反骨心」が、今は社会への「感謝」に変わり、事業を続ける大きな原動力になっています。
利益の先にある使命――社会を変えるための事業戦略

無鉄砲な挑戦が未来をつくる
──若者へのメッセージをお願いします。
とにかく、完璧に準備が整っていなくても、まずは小さく挑戦してみてほしいです。僕の人生も、受験や就職活動を経験せず、ただ「やってみたい」という気持ちだけで音楽の道に進み、わからないまま起業しました。結果的に、その挑戦があったからこそ今の自分があります。夢は簡単に叶わないからこそ夢なのですが、一度見てしまったのなら、全力で追いかけてみてください。挑戦したからこそ見える世界が、そこには必ずあります。
そして、人との出会いを大切にしてください。ある人に「『ありがとう』の反対語は『当たり前』なんだよ」と教わりました。「有り難う」とは、有ることが難しい、つまり奇跡だという意味です。人との出会いに当たり前は一つもありません。その一つひとつのご縁に感謝し、真摯に向き合うこと。それが、きっとあなたの道を拓く大きな力になるはずです。
