“良いものは売れる”という幻想に直面した起業初期の壁
──逆境経験について教えてください。
公務員教師という安定した立場から一転、起業家として歩み始めた当初、私は大きな壁にぶつかりました。教師時代から開発していた速読ソフトは無料で公開しており、1日に100件ダウンロードされるほどの人気でしたから、有料版を販売すれば食べていけるだろうと安易に考えていたのです。事実、初年度から売上は順調に伸び、2019年まで一度も落ちることはありませんでした。しかし、その裏側で私は「売る」という行為の本質が全くわからず、もがき苦しんでいました。
私は根っからの職人気質。「良いものを作りさえすれば、必ず売れるはずだ」と信じ込んでいたのです。これは、いわゆる「プロダクトアウト」の考え方で、お客様が何を求めているかを考える「マーケットイン」の発想が完全に欠落していました。
その弱点が露呈したのが、リーマンショックや東日本大震災で市場が冷え込んだ時です。これまでと同じようにメルマガを書いても、講座に誰も申し込んでくれない。世の中が変化しているのに、どう対応していいか全くわからない。必死にセールスやコピーライティングの本を読み漁りましたが、書かれているノウハウは断片的な知識に過ぎず、実践で活かすには自分の経験と結びつける必要がありました。しかし、守られた環境で生きてきた私には、その経験が圧倒的に不足していたのです。自分のやり方が通用しない現実に、ただただ途方に暮れるばかりでした。
人と繋がることで突破した、停滞の限界
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
最大の学びは、「自分一人でできることには限界があり、人と繋がって初めて生きていける」という、ごく当たり前の真理でした。頑固な職人のままでは、時代に取り残されてしまう。そのことに気づかせてくれたのは、ある女性起業家への嫉妬心と、マーケティングの師の存在でした。
私がプロデュースを手伝っていた彼女が、私の師事するマーケティング塾で学び、大ブレイクを果たしたのです。彼女の成功を目の当たりにし、「なぜ自分は同じようにできないんだ」と強烈な嫉妬を覚えました。その悔しさをバネに、初めて本気でマーケットと向き合い、学んだことを忠実に実践した結果、わずか3日間で500万円の売上を達成できたのです。
この成功体験を通じて、「売れるということは、それだけ多くの人を幸せにできるということだ」と心から理解できました。それ以来、ためらうことなく自社の商品やサービスを売れるようになったのです。良いものを作る能力(プロダクト)と、それを求める人に届ける力(マーケティング)が両輪となって初めて、ビジネスは加速する。そして、自分の強みは、自分だけで抱え込むのではなく、専門家の力を借りたり、他者に利用してもらったりすることで、何倍にも価値を高められるのだと知りました。もっと早く人に頼り、世界を広げる努力をすべきだったと、今では思います。

再現性にこだわった、唯一無二の速読メソッド
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私の最大の強みは、世界中で見ても唯一、科学的根拠に基づいた「再現性のある速読技術」を指導できる点です。私が開発した「フォーカスリーディング」は、単に速く読むためのテクニックではありません。本の内容を深く理解し、ビジネスや学習に活かすための思考法そのものです。
科学的な学習法については、小学生から社会人まで、幅広い層に効果を発揮します。例えば、学習障害と認定され小学校1年生レベルの漢字が書けなかったお子さんが、わずか30分の指導で書けるようになったり、司法試験に何度も挑戦していた社会人の方が、学習法を根本から見直すことで1年で一次試験に合格するレベルに到達したりと、多くの実績があります。
これは、私が教師時代から一貫して追求してきた「知識を詰め込むのではなく、自ら考え、行動できる人を育てる」という教育哲学が根底にあるからです。これからも、読書や学びを通じて一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、視野を広げるお手伝いをしていきたいと考えています。将来的には、一度は諦めかけた大学教育の現場にも、このメソッドを導入していくのが目標です。
不確実な時代を生き抜く、“自ら考え行動する力”
──若者へのメッセージをお願いします。
これからの時代、何が起こるか誰にも予測できません。だからこそ、どんな環境に置かれても「自分で問題を発見し、自分で乗り越える」という体験を大切にしてください。言われたことをこなすだけの受け身の姿勢では、本当の力は身につきません。
やりたいことが見つからないなら、まずはどんな仕事でもいいので飛び込んでみてください。そして、その場所で「どうすれば組織やお客様にもっと貢献できるか」を自分の頭で考え、行動してみるのです。その試行錯誤の経験が、あなたを成長させ、人生を切り拓く力になります。
かつて私の師が「時間とお金の3分の1は、人と会うために使え」と教えてくれました。当時の私はその意味を理解できませんでしたが、今ならよくわかります。自分の殻に閉じこもらず、外の世界に触れ、多様な価値観を持つ人と出会ってください。その出会いが、あなたの可能性を無限に広げてくれるはずです。あえて苦労し、工夫する経験を恐れないでください。その先にこそ、本当の楽しさが待っています。


