「人でなし」と罵られた日。コロナ禍で売上も人も消えた絶望
──逆境経験について教えてください。
2019年5月、満を持して赤坂にタイ料理店をオープンしました。当初は20席ほどの小さな店舗で、昼はランチ、夜は自ら企画するイベントで集客するスタイル。順調に滑り出したかに見えましたが、その矢先に新型コロナウイルスが襲来しました。
イベントの告知をすれば「この時期に非常識だ」「人でなし」と非難され、LINEをブロックされる日々。当然、客足は途絶え、売上はゼロに。しかし、家賃や人件費といった固定費は容赦なくのしかかってきます。「このままでは、自分たちは死んでしまうのではないか」。本気でそう思いました。
それまで築いてきたはずの人間関係が、いかに脆いものだったかを痛感させられました。緊急事態宣言が明けても状況は変わらず、イベントを再開しようと連絡を送っても、返ってくるのは辛辣な言葉ばかり。応援してくれる声も一部にはありましたが、多くの人々が手のひらを返したように去っていく現実に、ただ立ち尽くすしかありませんでした。

ふるいにかけられた人間関係。逆境が教えてくれた「顧客」と「人脈」の違い
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
この絶望的な状況が、私にとって最大の転機となりました。コロナ禍は、私の人間関係を良くも悪くも“ふるい”にかけてくれたのです。それまでの私は、とにかく人を集めること、連絡先の数を増やすことに躍起になっていました。言わば「狩猟型」のビジネスで、関係性が薄い人たちを大量に集めていたに過ぎません。
しかし、本当に苦しい時に手を差し伸べてくれたのは、ごく僅かな人々でした。たった6人しか集まらなかった会に来てくれた人が「この時代に逆境を乗り越えようとする宮西さんは本当にすごい」と励ましてくれたのです。その時、ハッとしました。彼らこそが、私の人生における本当の資産なのだと。
この経験から、私は「顧客」と「人脈」は全く違うものだと学びました。メリットがあるから来るのが「顧客」。メリットがなくても、あなただからと来てくれるのが「人脈」です。それ以来、ビジネスのスタイルを、数を追う「狩猟型」から、一人ひとりとの深い関係を育む「濃厚型」へと180度転換しました。本当に大切な仲間が誰なのか、逆境が教えてくれたのです。
飲食店は最強のプラットフォーム。人が人を呼ぶビジネスモデルへの進化
──会社の強みや魅力について、教えてください。
現在の事業の核は、タイ料理店という「箱」をプラットフォームとして多角的に展開している点にあります。収益の柱は4つ。一つ目は、近隣のオフィスワーカーをターゲットにしたランチビュッフェ。二つ目は、ディナータイムを「交流会特化型」として、多くの主催者様に会場としてご利用いただくこと。三つ目は、空いた日程で自社主催のイベントを開催することです。
そして四つ目の柱が、私のエンジニア経験を活かしたSES事業です。飲食店というリアルな場があることで、エンジニアの方々と自然な形で出会い、キャリア相談に乗ることができます。私たちと契約してくれたエンジニアには、店の飲食代を無料にするという特典も提供しており、これが独自のコミュニティ形成に繋がっています。
コロナ禍の教訓から、飲食だけに依存しない安定的な収益構造を構築しました。飲食店という入口があることで、警戒されずに人と繋がれる。そして、そこで生まれた信頼関係が、また新たなビジネスチャンスを生み出していく。この「人が人を呼ぶ」好循環こそが、私たちの最大の強みです。

何をすべきか迷うなら、まず「イベント」を主催してみよう
──若者へのメッセージをお願いします。
もし今、自分が何をすべきか分からずに悩んでいるなら、ぜひ一度、自分で「イベント」を主催してみてください。どんなに小さなものでも構いません。人を集めるという行為は、ビジネスの原点そのものです。
イベントをやってみると、二種類の人がいることに気づくでしょう。一つは、メリットがあるから来る人。もう一つは、他の誰でもない「あなた」のために来てくれる人です。後者を見つけることができれば、それはあなたの人生にとってかけがえのない資産になります。
誰が自分の本当の仲間なのか。それは、行動を起こしてみなければ分かりません。イベントの主催は、その試金石です。たとえ失敗したとしても、主催者の苦労や想いを理解できるようになるはずです。僕のビジネスも、すべてはそこから始まりました。一歩踏み出す勇気が、あなたの世界を大きく変えるきっかけになるはずです。
