人生の終わりを意識した、突然のがん宣告
──逆境経験について教えてください。
一番の逆境は、2年前にがんになったことです。飲食店を始めて1年が経ち、ようやく事業が軌道に乗ってきた頃でした。もともと定期検診で経過観察とは言われていたのですが、多忙を理由に少し間隔が空いてしまって。久しぶりに検査に行ったら、子宮頸がんで、しかもステージ3かもしれないと告げられました。進行が速い悪性の強いタイプらしく、発覚から2週間後には緊急手術が決まりました。
ドラマで見るような「がん宣告」が、まさか自分の身に起こるなんて。頭が真っ白になりましたね。「私の人生、ここで終わるんだ」と本気で思いました。これまで好き勝手に、やりたいように生きてきたけれど、その終着点がここなのかと。唯一無二の人生にこだわってきた結果が、何十万人に一人という珍しいがんになるなんて、こんな個性はいらないよと自分にツッコミを入れるしかありませんでした。手術までの2週間は、お店の存続のために働けるだけ働きましたが、心の中は不安でいっぱいでした。
"生かされた"命で気づいた、当たり前の日々の尊さ
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
8時間にも及ぶ大手術の間、両親はずっと泣きながら待っていてくれたそうです。昔から厳しく、私の生き方を否定されることも多かったので、反発ばかりしていましたが、心の底から深い愛情を注いでくれていたんだと、その時改めて気づかされました。
術後、たくさんの管に繋がれて身動きが取れない中で感じたのは、「普通にトイレに行けるって、なんて幸せなんだろう」ということでした。当たり前の日常が、どれだけ尊いものか。この経験を通じて、「生きてるだけで幸せ。命さえあれば、どんなことだって乗り越えられる」と心から思えるようになりました。人生はいつ終わるかわからない。だからこそ、やりたいことをやれるうちにやらなければいけない。この強い想いが、後に福祉の道へ進む大きな原動力になりました。

デザインの力で福祉の常識を変える。誰もが安心して暮らせる社会へ
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの強みは、私がずっと続けてきたデザインやものづくりを、福祉の仕事に融合させている点です。運営する就労継続支援B型事業所「うさぎ」では、一般的な内職作業だけでなく、例えばお酒のボトルをデコレーションするような、クリエイティブな作業を利用者さんと一緒に行っています。他にはないユニークな仕事を通じて、利用者の皆さんが「楽しい」「自分にもできる」と感じ、社会との繋がりを実感できる場所でありたいと思っています。
また、福祉業界の常識にとらわれない広報戦略も私たちの武器です。YouTubeで広告動画を配信したり、毎月「うさぎ新聞」という手作りの広報誌を地域の関係各所に配って回ったり。泥臭いことも含めて、やれることは何でも試しています。現在、就労継続支援支援B型うさぎに続き、障がい者グループホーム、コアラのおうちを展開、7月には新しくキリンのおうちも開所予定です。今後はこうした動物の名前をつけた「アニマルシリーズ」で広げて行く予定です。そして、重度の障害を持つお子さんを抱える親御さんが、心から安心して我が子を預けられるような施設を作ることが、私の大きな目標です。自分が癌を経験したことで福祉事業を通して、癌サバイバーの方達への支援にも繋げていけたらと思ってます。
ご縁と恩を力に。失敗さえも財産になる
──若者へのメッセージをお願いします。
振り返れば、私の人生は人との出会いに支えられてばかりです。離婚後、資金作りのために働いていたお店で出会い、今では「経営の師匠」と呼べる方がいます。その方がいなければ、株式会社を設立することもありませんでした。人とのご縁や受けた恩は、絶対に忘れてはいけない。その気持ちさえあれば、どんなに無茶苦茶な生き方をしていても、必ず誰かが助けてくれます。
そして、若い皆さんには「どんなことも、迷わず挑戦してほしい」と伝えたいです。行動が全てであり、失敗も成功も全てが経験となって自分の財産になります。私も、やって後悔するより、やらないで後悔する方が嫌だと思って、とにかく行動してきました。先のことを考えすぎて怖がるのではなく、まずは一歩踏み出す勇気を持ってください。その一歩が、きっとあなたの未来を切り拓いてくれるはずです。

