自信を打ち砕かれたベンチャー時代。自分の「無力さ」と向き合った日々
──逆境経験について教えてください。
新卒で入社した調剤薬局では、総合職一期生として新規事業に近い販促企画などを任され、自由に仕事ができる面白さを感じていました。最年少で花形部署への研修にも抜擢され、自分には力がある、仕事ができるタイプの人間だと思っていたんです。しかし、その自信は、次に転職した農業ベンチャーで木っ端微塵に打ち砕かれました。
設立3年目、従業員20名弱の急成長企業で、私はバックオフィス業務を担当することになりました。そこでは、勤怠システムの導入から従業員への説明、社長へのプレゼンまで、すべてを一人で、しかも1ヶ月という短期間で立ち上げる必要がありました。前職とは全く違う、何もない状態から仕組みを作ることの連続。仕事量は膨大で、もともと人前で話すのが苦手だったこともあり、プレゼンでは「何が言いたいのか分からない」と指摘される始末。自分の力不足を痛感し、まさにコテンパンにやられましたね。

失敗と試行錯誤が変えた、私の仕事観
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
農業ベンチャーでの経験は、私の仕事に対する価値観を大きく変えました。まず、自分の弱みを認め、仕事のやり方そのものを変えなければならないと痛感しました。例えば、説明が下手なら、誰が読んでも理解できるように資料を作り込む。プレゼンでは、書いてあること以外は話さないくらいにシンプルにする。そうやって一つひとつ工夫を重ねることで、山積みのタスクを乗り越えていきました。
目の前の仕事に無我夢中で取り組む中で、責任の重い仕事をやり遂げた時の達成感や、やりがいを学びました。そして何より、「できなくて当たり前。まずはやってみよう」という姿勢が身についたことが大きいです。この経験があったからこそ、起業という道を選べたのだと思います。起業後も、最初のカレー開発で輸送方法を誤り、食材のジャガイモをすべて腐らせてしまうという大失敗を経験しました。しかし、そこから品質管理の重要性や、不確定要素の多い事業だからこそ、失敗を共に乗り越えてくれるパートナーと組むことの大切さを学びました。
人と価値をつなぐ、“カレー”というハブ
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの事業は、本来の価値が発揮されていない「もったいない」を、カレーというツールを使って価値に変えることです。具体的には、規格外の農作物を使った商品開発、カレーを教材にした学校教育との連携、企業のノベルティとして活用いただく採用・集客支援など、多岐にわたります。
私たちの強みは、この事業に関わる多くの人々を繋ぐ「ハブ」の役割を担っていることです。一つのカレーを作るのに、生産者さん、加工工場、学校、企業など、10社以上のステークホルダーが関わることも珍しくありません。この複雑な関係性を調整し、プロジェクトを前に進めていくのは骨の折れる作業ですが、私自身はそれを苦に感じません。むしろ、様々な人を巻き込みながら新しい価値を創造していくプロセスに面白さを感じています。小回りが利き、柔軟な対応ができること。それが私たちの最大の強みです。

すべての経験はつながっている—未来へのヒント
──若者へのメッセージをお願いします。
私のキャリアは、調剤薬局、農業ベンチャー、そして起業と、一見するとバラバラに見えるかもしれません。しかし、それぞれの場所で学んだこと、経験したことすべてが、今の事業に繋がっています。今やっていることが、将来どんな形で活きてくるかは分かりません。だからこそ、まずは目の前のことを楽しんで、一生懸命取り組んでみてほしいです。
そして、失敗を恐れないでください。「できなくて当たり前、できたらラッキー」くらいの気持ちで挑戦すればいいんです。人生は、マリオカートのようなもの。平坦な道だけでは面白くないですよね。困難や失敗という障害物があるからこそ、それを乗り越えた時の喜びは大きくなります。もし、やりたいことが見つからないなら、過去の自分が何を選択してきたか、その共通点を探してみてください。きっとそこに、あなただけの「好き」や「得意」のヒントが隠されているはずです。

