「会社員人生は終わった」エリートコンサルを襲った、売れない営業の現実
──逆境経験について教えてください。
野村総合研究所でコンサルタントとしてハードなプロジェクトも経験し、「どこの会社へ行っても、それなりに成果は出せるだろう」。正直、当時はそう思っていました。しかし、その自信は次に入社した企業で、もろくも崩れ去ります。
憧れだった事業開発への道を思い描き入社したものの、配属されたのは求人広告の営業。コンサルタントとして培った提案力を活かそうと、20枚、30枚とリッチな提案書を作成するのですが、全く売れないのです。求められていたのは、じっくり分析することではなく、お客様の状況に合わせて即座に必要なものを提案する瞬発力でした。
「提案書の質が悪いのか」と勘違いした私は、さらに資料を作り込むという悪循環に陥り、上司からは日に日に追い詰められていきました。結果は一向に出ず、ついには体調を崩してしまう始末。この時、心から「自分の会社員人生は終わったな」と思いました。半ば逃げるように、入社から1年も経たずに退職。キャリアは下り坂に転じ、同級生が華々しく活躍する姿と自分を比べては、「自分は一体何をやっているんだろう」と、悶々とする日々が続きました。
挫折から学んだ「勝てる戦場の見つけ方」。劣等感が自己分析のエンジンだった
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
転職先での大失敗から得た最大の教訓は、孫子の兵法にもある「己を知り、相手を知り、その中での自分の勝機を見極める」ことの重要性です。当時の私は、転職先の会社に入ること自体が目的化してしまい、そこで求められる能力や自分のスキルが活かせる環境なのかを全く考えていませんでした。まるで、魔法使いがレベル1のまま、いきなり戦士の戦い方に挑むようなものでした。
この経験を通じて、自分の持っているスキルを正しく理解し、それを最大限に活かせる場所を選ぶことがいかに大切かを痛感しました。次の会社では、自分の強みである分析力や企画力を活かせるポジションを選んだ結果、社内でMVPを獲得することもできました。
こうした自己分析の原動力は、実は「劣等感」にあります。私は圧倒的なナンバーワンではありません。だからこそ、常に「どうすれば勝てるか」「どこなら自分の価値を発揮できるか」と勝負の軸をずらして考える癖がつきました。転職を繰り返したことも、独立してからは「多くの会社の実情を知っている」という信頼に繋がり、回り道だと思っていた経験が、私だけの強みになっていったのです。
社長の可能性を最大化する「社外番頭」という役割
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私の仕事は一言でいうと「社長を勝たせること」です。社長が自身の強みや才能を最大限に発揮できるよう、そのブレーキとなっているものをすべて取り除くのが「社外番頭」としての私の役目です。
コンサルティングファーム、事業会社、そして中小企業の取締役。この三つの異なる立場をすべて経験してきたことが、私の最大の強みです。大企業の論理もベンチャーのスピード感も理解しているからこそ、両者の橋渡し役となり、机上の空論ではない、現場で実行可能な解決策を社長と二人三脚で創り上げていくことができます。
多くの経営者は、マーケティング、人事、DXなど、取り組むべき課題が山積しています。しかし、そのすべてに専門家を雇う体力はありません。私は特定の専門領域に閉じず、経営という大きな視点から今必要なピースを補完するジェネラリストとして、社長のビジョン実現をサポートします。将来的には、コンサルティングだけでなく、自らも投資を行い、資金的な課題を抱える企業の挑戦を後押しできるような存在になりたいと考えています。

AI時代に求められる「自分だけの価値」とは
──若者へのメッセージをお願いします。
これからの時代に最も重要になるのは、「AIには出せない付加価値や味わいを、自分はどこで出すのか」を考えることだと思います。分析や資料作成といった仕事は、いずれAIに代替されるでしょう。しかし、人の心を動かしたり、現場の泥臭い調整をしたりといった「人肌感」のある価値は、人間にしか生み出せません。
そのために、ぜひ自分の「強み」を見つけてください。そして、その強みを「好奇心」でどんどん広げていってほしいのです。苦手なことを克服する時間に、AIは猛スピードで進化してしまいます。それよりも、自分が熱狂できること、没頭しても苦にならない領域に時間を集中させ、誰にも真似できない「味わい」を深めていくことが大切です。
もちろん、強みはすぐに見つかるものではありません。私自身、多くの失敗や回り道を経て、ようやく自分の戦う場所を見つけました。だからこそ、恐れずに行動してください。経験から得られるフィードバックこそが、自分だけの強みを見つける唯一の道だと信じています。

