弟や妹のために、諦めた東京の大学。突きつけられた無力感
──逆境経験について教えてください。
私の人生における最初の大きな逆境は、大学進学の時でした。父が東京の美大出身だったこともあり、幼い頃から「東京で成功して初めて一人前だ」と聞かされて育ちました。自然と東京の大学へ進学したいという夢を抱いていましたが、その想いは父の一言で打ち砕かれます。「下に弟と妹がいるから、お前が東京の私立に行ったら、あの子たちを大学に行かせられなくなる」と。
父は一級建築士として自営でしたが、私が高校生の頃はバブルが弾けた影響で、家計は決して楽ではありませんでした。お金の話をすると両親が不機嫌になるのを、子供ながらに感じていました。それでも父は、「どうしても行きたいなら、お前が弟と妹を説得しろ。彼らが大学進学を諦めるなら行かせてやる」と、私に選択を委ねたのです。
しかし、弟や妹の未来を犠牲にしてまで自分の夢を貫くことはできませんでした。何より、当時の私には「何が何でもこの大学で学びたい」という、周りを説得できるほどの強い熱量がなかったのです。結局、私は地元の公立大学に進学しました。仲の良かった友人が東京の大学で楽しそうに過ごしている話を聞くたびに、「もし私も東京に行けていたら…」という羨ましさと、自分のやりたいことを実現できなかった無力感に苛まれました。
「これだけは譲れない」。人生を懸ける志が、過去の自分を超えさせた
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
大学進学での挫折から学んだのは、「本当にやりたいこと」、つまり熱狂できるほどの志を持つことの重要性です。当時の私にそれがあれば、親を説得し、違う未来があったかもしれません。その教訓は、後に私が税理士を目指す過程で、自分自身を支える大きな力となりました。
コンサルティング会社で多くの中小企業経営者と接する中で、「困ってから相談に来る」現状にもどかしさを感じていました。「もっと早く関わっていれば、こんな事態にはならなかったはずだ」。そうした経験から、企業の財務状況を深く理解し、困る前の段階から伴走できる税理士こそが、自分の成すべき仕事だと確信したのです。
32歳から税理士試験の勉強を始めましたが、その道のりは平坦ではありませんでした。仕事に追われ、睡眠時間を削る日々。当時結婚していた妻からは「安定した公務員になってほしい。税理士試験は諦めてくれ」と、何度も言われました。かつての私なら、相手のために自分の想いを抑えていたかもしれません。しかし、その時だけは違いました。「中小企業を支援し、お金に困らない社会を作る。そのために税理士になる」。これだけは絶対に譲れないと、自分の意志を貫いたのです。
結局、その道を選ぶ過程で離婚も経験しましたが、後悔はありません。本当にやりたいことを見つけた人間は、どんな逆境にも立ち向かえる強さを持てる。大学進学を諦めた過去の自分を、その時初めて乗り越えられた気がします。

税金の計算だけでは終わらない。事業会社での経験が武器になる「伴走型」経営支援
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの最大の強みは、単なる税務申告や記帳代行で終わらないことです。私が目指すのは、創業期から事業承継、M&AやIPOに至るまで、企業のあらゆるフェーズで経営者の隣を走る「伴走者」であることです。
多くの税理士は、大学で簿記を学び、そのまま会計事務所でキャリアを積みます。しかし私は、サービス業、不動産業、コンサルティング業と、30歳まで事業会社で営業やマネジメント、新規事業企画など、ビジネスの最前線を経験してきました。だからこそ、経営者が使う言葉やビジネスモデルの特殊性、現場の悩みを肌感覚で理解できます。
お客様からは「北島さんは話が早いし、何でも相談しやすい」と言っていただけることが多いのですが、それは私が「税理士」という枠の外からお客様の事業を見ているからだと思います。数字の裏にあるビジネスの文脈を読み解き、「このままではまずいですよ」と踏み込んだアドバイスができる。それこそが、情報だけは大量に持っているのに経営に活かせていない、という業界の課題を解決する私たちの価値だと信じています。お客様のビジョン達成を通じて、社会と経済に貢献すること。それが私たちの経営理念であり、存在意義です。
出会いが君を磨き、熱狂が君を強くする。自分の可能性を信じて外へ飛び出そう
──若者へのメッセージをお願いします。
私の経験から伝えたいのは、二つです。一つは、何かに熱狂できる「本当にやりたいこと」をぜひ見つけてほしい、ということです。それが見つかれば、人は驚くほど強くなれます。逆境にぶつかっても、「自分の成したいことはこんなものじゃない」と、自分を奮い立たせることができるからです。
では、どうすればそれが見つかるのか。それが二つ目のメッセージに繋がります。とにかく外に出て、たくさんの人に会って、話を聞いてください。私自身、29歳まで税理士という仕事を正しく知りませんでした。コンサルタントとして様々な経営者と出会う中で、初めて自分の天職だと気づけたのです。
尊敬する経営者の一人に「人間は人間によって磨かれる」という言葉を教えてもらいました。まさにその通りで、人との出会いこそが、自分の知らなかった世界を見せ、可能性を広げてくれる最大のきっかけです。内に籠もらず、一歩踏み出して、多様な価値観に触れてみてください。その先に、きっとあなたの心を燃やす何かが見つかるはずです。

