役割を全うする日々の中で芽生えた、違和感
──これまでのキャリアの中で、転機となった経験について教えてください。
私にとっての転機は、以前所属していた企業で、複数の事業や組織運営に関わっていた頃です。子会社の経営や事業部のマネジメントを任され、目の前の役割に全力で向き合う日々を送っていました。
成果を出すこと、期待に応えることにやりがいを感じていたのは間違いありません。
ただ同時に、忙しさの中でふと立ち止まり、「自分は今、どんな状態で働いているのだろう」と考える瞬間が増えていきました。
会社の肩書きや役割を通じて社会に関わっている一方で、それが“自分自身の在り方”と完全に一致しているのか、自信が持てなくなっていたのです。
環境が悪かったわけでも、誰かに不満があったわけでもありません。むしろ、恵まれた環境だったと思います。
それでも、「このまま役割をこなすだけでいいのだろうか」「もっと自分らしい関わり方があるのではないか」という問いが、心の中に残り続けていました。
肩書きから離れて見えた、「自分らしさ」と社会との接点
──そこから、どのような気づきがあったのでしょうか。
仕事を通じて社会に関わる方法は、会社や肩書きだけではない。
そう気づいたことが、大きな変化でした。
ミュージシャン・甲本ヒロトさんの
「幸せってのは、幸せと感じる心を育むことなんだ」
という言葉に出会ったことも、自分自身を見つめ直すきっかけになりました。
どんな立場にあっても、どんな役割を担っていても、「自分は何に心が動くのか」「どんな瞬間に意味を感じるのか」は人それぞれ違う。
私の場合、それはお客様や現場の方から直接「ありがとう」と言ってもらえる瞬間でした。
そこから、「肩書き」ではなく「在り方」を軸に働いてみようと思うようになりました。
自分自身がどう生き、どう社会と関わりたいのか。その問いに正直であることが、結果的に誰かの役に立つのではないか。そう考えるようになったのです。
自分自身が体現者である、という働き方
──現在の事業には、そうした考え方がどのように反映されていますか。
株式会社おしごとマーケティングは、組織を大きくすることを目的にしていません。
私自身が一人の実践者として動き続けること、それ自体が事業の核になっています。
従業員を持たず、身軽な形で活動しているのも、「会社の論理」より「人としての関わり」を大切にしたいからです。
誰かに「今、少し話したい」と言われたら、場所や形式にとらわれず会いに行く。そうした一つひとつの行動を通じて、自分らしい働き方を形にしています。
また、地方には、まだ十分に知られていない魅力的な企業や人がたくさんいます。
私は、そうした存在と都市部の企業や人をつなぐ“媒介者”のような役割を担いたいと考えています。
会社の肩書きではなく、一個人として信頼され、頼られる存在であること。それが、今の私にとっての社会貢献の形です。

自分らしい生き方は、誰かの選択肢になる
──若者へのメッセージをお願いします。
もし今、「どんな働き方が正解なのか分からない」と感じているなら、その感覚はとても健全だと思います。
社会には多くの“モデルケース”がありますが、すべての人に当てはまる正解はありません。
大切なのは、「自分はどう生きたいのか」「どんな関わり方なら納得できるのか」を問い続けることだと思います。
そして、その答えは考えているだけでは見つかりません。小さくてもいいので、動きながら探していくことが必要です。
私自身も、試行錯誤の連続です。
ただ、自分らしい働き方を模索し、それを実際に体現する姿を見せることで、「こんな選択肢もあるんだ」と感じてもらえたら、それ自体が社会への一つの貢献になるのではないかと思っています。
仕事は、社会とつながるための手段です。
どうか肩書きに縛られすぎず、自分なりの生き方を大切にしてください。その姿勢は、きっと誰かの勇気にもつながっていきます。

