責任感が生んだ心の悲鳴。大企業で燃え尽きた日
──逆境経験について教えてください。
大手通信系IT企業でシステムエンジニアとして働き、大きな責任のある仕事も任され、キャリアは順調そのものでした。しかし、いつしか「自分でやった方が早い」「この仕事は自分にしかできない」という過剰な責任感が、自分自身を追い詰めていました。膨大な業務量を一人で抱え込み、心と体は限界に達していたのです。
ある日、会社のトイレで座っていると、理由もなく涙が溢れて止まらなくなりました。その時、「これは明らかにおかしい」と自覚しました。振り返れば、ひどいめまいがしたり、自分の汗の匂いが気になって何度もシャツを着替えたりと、体はサインを送り続けていたのです。診断は「うつ病」。輝かしく見えたキャリアの道は、突然、真っ暗闇に閉ざされたように感じました。
“頑張らない”勇気が、最高の成果を生み出した
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
休職を経て気づいたのは、当たり前の事実でした。僕一人がいなくても、会社もプロジェクトも問題なく回っていく。これまで自分が必死に抱え込んでいた仕事は、ある種の自己満足でしかなかったのです。この経験から、「頑張る」ことへの価値観が180度変わりました。
復帰後は、働き方を大きく変えました。炎上しているプロジェクトに配属されても「資格の勉強があるので」と宣言し、残業も休日出勤もせず、限られた時間で成果を出すことに集中したのです。すると驚いたことに、以前よりもお客様からの評価は高まり、仕事は円滑に進みました。そして、その年に難関である中小企業診断士の資格にも合格できたのです。大切なのは、時間をかけて自分をすり減らすことではなく、相手が求める価値は何かを見極め、そこにリソースを集中させること。この学びが、今のコンサルタントとしての私の原点になっています。
IT黎明期から国の機関まで。異色の経歴が紡ぐ、唯一無二の伴走支援
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの最大の強みは、ITと経営の両面から、中小企業の経営者に寄り添えることです。私自身、インターネット黎明期から前職で大規模システムに携わり、その後は国の機関であるIPAで中小企業のセキュリティ施策にも関わってきました。この経験から、ITに詳しくない経営者の方と専門的な開発会社との「通訳」となり、双方の橋渡しをすることができます。
また、当社には私を含め中小企業診断士が4名在籍しており、元大手企業メンバーなど、多様なバックグラウンドを持つプロフェッショナルが集まっています。そのため、目先の課題解決だけでなく、補助金の活用や事業戦略の策定といった、企業の未来を見据えた長期的な伴走支援が可能です。特に、昔ながらのやり方が根強く残る製造業などのDX(デジタルトランスフォーメーション)を、経営の根幹からサポートしていきたいと考えています。

情報に惑わされるな。君だけの“物語”にこそ、進むべき道がある
──若者へのメッセージをお願いします。
現代は情報に溢れていて、つい周りの声や成功事例に流されてしまいがちです。しかし、本当に大切なのは、自分自身の「軸」を持つこと。僕のキャリアは計画通りに進んだものではなく、その時々の「縁」や「直感」に従った結果です。それでも道を踏み外さなかったのは、無意識のうちに自分の軸に沿った選択をしていたからだと思います。
では、どうすればその軸を見つけられるのか。一番良い方法は、自分の過去を丁寧に振り返ることです。幼い頃から今に至るまで、どんな時に喜び、何に悔しさを感じたのか。誰かに褒められた経験、夢中になったこと。その一つひとつを繋ぎ合わせると、自分だけの価値観という「物語」が見えてきます。その物語こそが、変化の激しい時代を生き抜くための、決してぶれることのない羅針盤になるはずです。

