百歳の利用者を転倒させた日。慢心が招いた取り返しのつかない事故
──逆境経験について教えてください。
私が介護の現場で働いていた時の話です。持ち前の明るい性格もあってか、ご利用者様からも可愛がっていただき、仕事は順調そのものでした。今思えば、どこか調子に乗っていた部分があったのだと思います。ある日、百歳近いお客様を車椅子でお手伝いしている最中、ほんのわずかな気の緩みから、地面の小さなくぼみに車椅子の前輪を取られてしまったのです。車椅子はバランスを崩して転倒し、お客様は頭を強く打ち、足を骨折してしまいました。ご高齢だったため手術もできず、その方は残りの人生を寝たきりの状態で過ごし、そのまま最期を迎えられました。私がしっかりと前を見て、細心の注意を払っていれば防げた事故でした。自分の慢心が、一人の人間の人生を大きく変えてしまったという事実は、今でも私の心に重くのしかかっています。
謙虚最強 ― 逆境から学んだプロの原点
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
この一件から学んだのは、「謙虚最強」という言葉の重みです。介護という仕事は、人の命を預かる非常に責任の重い仕事です。どんなに慣れた作業であっても、決して準備を怠ってはいけない。常に謙虚な姿勢で、一つひとつの業務に向き合わなければならないと痛感させられました。イケイケな雰囲気で仕事をするのも自分のスタイルかもしれませんが、その根底に「させていただく」という謙虚な気持ちがなければ、本当の意味でのプロフェッショナルにはなれない。この経験が、後に「株式会社かいご職人」を立ち上げる際の理念の礎となっています。調子に乗らず、常に初心を忘れずに仕事に取り組むこと。それが、自分自身への戒めであり、お客様への誠意だと考えています。
現場を知るプロ集団、それが私たちの強み
──会社の強みや魅力について、教えてください。
弊社の最大の強みは、スタッフ全員が介護現場の経験者であることです。現場を知らない人間が介護の相談に乗ることに、私は強い違和感を覚えます。認知症の方と接したこともないのに、その方の気持ちやご家族の苦労が本当にわかるのでしょうか。私たちは、これまで2000名以上のお客様の入居をお手伝いしてきましたが、一度もクレームをいただいたことがありません。これは、全スタッフが現場で培った知識と経験に基づき、お客様一人ひとりに寄り添ったご提案ができているからだと自負しています。今後は、介護業界全体のイメージを向上させていくことにも力を入れたい。例えば、義務教育に介護のカリキュラムを導入すること。子どもたちが介護に触れる機会を増やし、将来「なりたい仕事」の一つとして当たり前に選ばれるような業界にしていきたいです。僕自身が将来介護される時、ロボットではなく、温かい心を持った人の手でケアしてもらいたい。その未来を創るのが、今の僕の目標です。

迷ったら、しんどい方へ行け
──若者へのメッセージをお願いします。
私が伝えたいのは、周りに流されず、自分の信念を貫いてほしいということです。進路を選ぶ時、多くの人が安定や周囲の評価を気にするかもしれません。私も大学進学の道を選んでいれば、もっと楽な人生だったかもしれない。でも、自分が「面白い」と感じる道を選んだからこそ、今の情熱があります。もし二つの道で迷ったら、あえて「楽じゃない方」「しんどい方」を選んでみてください。困難な道ほど、多くの経験と学びが得られ、人間として大きく成長させてくれます。その決断を支えるのは、「自分ならできる」という自信です。私も昔から、根拠のない自信だけはありました。どんな壁にぶつかっても、それは失敗ではなく成功への過程だと信じて進んできました。自分の可能性を信じて、困難な挑戦を楽しんでほしいと思います。

