仲間との船出、そして突然の嵐。連帯保証が招いた倒産の危機
──逆境経験について教えてください。
専門学校在学中に出会った一人の先輩。そのカリスマ性に惹かれ、卒業と同時に彼の事業に参画しました。クリエイターの卵が20名ほど集まった僕らの船出は、まさに熱狂そのもの。しかし、ビジネスとしては未熟で、仲間は一人、また一人と去っていき、最終的に残ったのは、その先輩と僕の二人だけでした。
家賃8,000円、四畳半の事務所から再スタートし、バイトで食いつなぐ日々。そんな中で僕たちが目を付けたのが、ブライダル映像の事業でした。当時画一的だった業界に「デザインと躍動感」という新しい風を吹き込むと、事業は面白いように拡大。事務所を移転し、東京にも支店を出し、社員は30名を超える規模にまで成長しました。
しかし、組織が大きくなるにつれ、僕と彼の間に経営方針の違いが生まれます。話し合いの末、僕たちは袂を分かち、それぞれの会社を設立することになりました。それが20年前のことです。
問題が起きたのは、会社を分けてから数年後のこと。取引銀行から突然「御社への融資を止めたい」と連絡が入ったのです。理由を尋ねると、信じられない答えが返ってきました。「以前、小濵さんが連帯保証人に入っていた融資が焦げ付いています」。会社を分ける際、清算したはずの負債が焦げ付いていました。その結果、僕個人の信用情報に傷がつき、公的な保証協会も使えなくなり、会社の資金調達の道が完全に絶たれてしまいました。
「人のせいにするな」父の言葉が支えに。絶望の淵で掴んだ人の縁と経営哲学
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
融資が止まり、手形の割引もできなくなり、会社は一気に倒産寸前の状況に追い込まれました。まさに八方塞がり。焦燥感に駆られる毎日でしたが、僕を救ってくれたのは、これまで築いてきた「人との縁」でした。
ある経営者の集まりで出会った同業の友人が、「すごい人がいるから」と紹介してくれた金融機関の支店長。事情を正直に話すと、彼は「私が支店長決済で出します」と、保証協会を通さないプロパー融資に応じてくれたのです。その実績があったからこそ、他の取引銀行も融資を再開してくれました。本当に、人に助けられた経験でした。
この一件で、金融機関との付き合い方、そして金策の重要性を痛感しましたね。今では顧問税理士事務所のアドバイスをもらいながらメインバンクと毎月面談し、会社の状況をガラス張りで共有しています。何があってもいいように、資金調達のプランは常に複数用意するようになりました。
そして何より大きな学びは、物事の捉え方です。周りからは「なぜ彼を許せるのか」と不思議がられましたが、僕に彼を責める気持ちはありませんでした。共に10年間、365日のうち360日は一緒に食事をするほど濃密な時間を過ごした、兄弟のような存在ですから。この根底には、父の教えがあります。寡黙で、義理人情を重きに置く父から、若い頃に「何があっても、全部自分の責任だと思え。人のせいにしている限り、問題は解決しない」と教えられてきました。この言葉が、苦しい時の僕を支えてくれたんです。

社会人経験ゼロだからこそ貫く「アイデア勝負」。クリエイティブで未来を切り拓く
──会社の強みや魅力について、教えてください。
僕も、創業時の仲間も、誰一人として社会人経験がありませんでした。だから、会社のルールも、働き方も、全てが手探り。日報もなければ、生産性という概念もない。ただ「面白いことをやろうぜ」という熱量だけで突っ走っていました。もちろん、今思えば非効率なことばかりでしたが、その経験が今の会社の強みに繋がっていると感じています。
それは「アイデアで勝負する」という姿勢です。かつてテレビ番組で、たった一人の女の子が腕に箱をつけただけの「ボンレスハム」というシンプルなネタで優勝したのを見て、衝撃を受けました。お金や技術がなくても、アイデア一つで人の心を動かし、大きな結果を生み出せる。デザインや映像の世界も同じです。僕たちは、常識や既存の枠組みに囚われない自由な発想こそが、クリエイティブの源泉だと信じています。
社会の常識を知らなかったからこそ、僕たちは自分たちの「面白い」を信じ、貫くことができました。これからも、その初期衝動を忘れることなく、誰も見たことのないような新しい価値を、アイデアの力で創造していきたいと考えています。
遠回りで得た学びこそ、何物にも代えがたい財産
──若者へのメッセージをお願いします。
今の時代、タイパやコスパといった「スマートさ」が重視される風潮があります。情報を集め、最短距離でゴールを目指すことは、もちろん素晴らしいことです。でも、もし何か心惹かれることがあるのなら、頭で考える前に、まず一歩踏み出してチャレンジしてみてほしいと思います。
僕自身、経営を学ばずに起業したことで、たくさんの遠回りをし、痛い思いもしました。しかし、傷つきながら肌で感じたこと、自分の体を通して得た学びは、何物にも代えがたい財産になっています。自分でやってみなければ、本当の意味で理解することはできないのです。
そして、経営者になって一番良かったと思うのは、「人のせいにできないこと」です。どんな結果になろうとも、それは全て自分の選択の結果。そう捉えることで、初めて人は前に進めるのだと思います。失敗を恐れず、全てを自分の責任として引き受け、泥臭くチャレンジし続けてください。その経験の先にこそ、皆さんの未来を切り拓く本当の力が眠っているはずです。

