創業2ヶ月で直面した東日本大震災という未曾有の危機
──逆境経験について教えてください。
私たち株式会社アイジスは、2011年の1月11日に4人の仲間で立ち上げた会社です。これからだ、と意気込んでいた矢先、創業からわずか2ヶ月後に東日本大震災が発生しました。社会全体が自粛ムードに包まれ、予定されていた仕事はすべてキャンセル。売上はほぼゼロという絶望的な状況に陥りました。
まだ会社としての基盤も信用もなく、生まれたばかりの娘もいる。仲間との間にも焦りからギクシャクした空気が流れ始め、「このまま会社を続けていけるのか、いや、続けていいのか」という大きな不安に苛まれました。まさに八方塞がりの状態でしたね。

「勝ち」ではなく「負けない」ことを選んだ先にあった、人の繋がり
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
あの絶望的な状況で学んだのは、「勝ちに行くのではなく、負けないこと」の重要性です。高い目標を掲げてリスクを取るよりも、まずは「死なない」こと、つまり事業を継続させることを最優先に考えました。そのために私たちが決めたのは、特別なことをするのではなく、「当たり前のことを、誰よりも丁寧にやろう」ということでした。
とにかく動くしかないと、目の前のことに必死で取り組む中で、私たちの頑張りを見てくれていた先輩経営者の方々が手を差し伸べてくださったり、ちょうど普及し始めたスマートフォンの波に乗れたりと、多くのご縁とタイミングに恵まれました。この経験から、続けること、そして人の繋がりの大切さを心から実感しましたね。また、4人での共同経営が15年以上続いている秘訣も、最初に「意見が割れた時はこうする」というルールを言語化し、全員の共通認識を作っておいたこと。曖昧さをなくし、立ち返る場所を設けたことが大きかったと思います。
クリエイターではない自分だからこそ果たせる役割
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの事業の軸は、ウェブサイト制作です。しかし、単に作るだけでなく、お客様の課題整理から一緒に考え、制作後の運用までサポートする「伴走型」の支援を大切にしています。さらに、私が代表理事を務める「関西クリエイター協会(KCA)」には多くのクリエイターが在籍しており、彼らとチームを組むことで、お客様にとって最適な体制を構築できるのが最大の強みです。
実は昔、デザインもコーディングもできない自分に劣等感を抱いていた時期がありました。しかし、優れた技術を持つクリエイターたちが、自身の作品やサービスを世に届けることに苦労している姿を見て、自分の役割に気づいたんです。それは、彼らと社会を繋ぐ「究極のハブ」になること。自分がプレイヤーではないからこそ、彼らの価値を最大化し、社会に届けることに徹することができる。それが今の私の原動力になっています。

「逃げる」ことは、新しい自分を見つけるための戦略だ
──若者へのメッセージをお願いします。
もし今いる場所が息苦しい、居心地が悪いと感じているなら、そこから「逃げる」ことを恐れないでほしいです。私自身、学生時代の人間関係や、優秀な父や弟への劣等感から逃げたいとずっと思っていました。しかし、逃げた先でITという新しい世界に出会い、起業という違う土俵を見つけたことで、初めて自分の価値を発揮できるポジションを見つけることができたのです。
「逃げる」ことは、決してネガティブなことではありません。むしろ、自分に合わない環境から抜け出し、新しい可能性を探すためのポジティブな戦略です。すぐに結果が出なくても焦る必要はありません。目の前にある当たり前のことをコツコツと続けていれば、必ず道は拓けます。人生は、逃げた先でこそ、もっと楽しくなるはずです。
