仲間を守るための起業。しかし、待ち受けていたのは「住所不定」「融資不 可」の壁
──逆境経験について教えてください。
前職の仲間たちを守りたい一心で、急遽立ち上げた会社でした。しかし、その船出は想像
を絶する困難の連続だったのです。会社設立後、まず直面したのは、契約していたバー
チャルオフィスからの突然の解約通知でした。登記のために幅広く記載した事業内容の一
部が規約に抵触した、というのが理由でした。これにより、私たちの会社は一夜にして
「住所不定」の状態に陥ってしまったのです。
銀行口座の開設もままならず、走り回ってようやく新たなオフィスを契約できたのは数週
間後のこと。しかし、本当の逆境はここからでした。従業員の給与を支払い、事業を軌道
に乗せるために金融機関からの融資を計画していたのですが、そこで「前職の取締役で
あった」という経歴が壁となって立ちはだかったのです。前職の信用情報が影響し、どの
金融機関からも「融資は不可能」という非情な宣告を受けました。仲間を守るための起業
だったのに、その仲間たちに給料を払えないかもしれない。そんな恐怖が、重くのしか
かってきました。
絶体絶命の状況を救ったのは「運」と「誠実さ」。逆境が教えてくれた“なん とかなる”の真意
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
自己資金が尽きかけ、まさに絶体絶命の状況でした。しかし、そんな私たちを救ってくれ
たのは、お客様からの思わぬ一言だったのです。「年間契約費を一括で支払いましょう
か?」と。資金繰りに窮しているとは一言も伝えていなかったのですが、そのお申し出の
おかげで、私たちは当面の危機を乗り越えることができました。振り返れば、それは単な
る幸運ではなかったのかもしれません。地方のお客様であっても直接ご挨拶に伺ったり、
どんな時も嘘をつかず、誠実に向き合う姿勢を貫いてきたことが、こうした「運」を引き
寄せてくれたのだと信じています。
この経験を通じて学んだのは、「なんとかなる」という言葉の本当の意味です。それは決
して楽観論ではなく、困難な状況でも諦めずに誠実に行動し続ければ、必ず道は拓けると
いうこと。そして、どんな時も自分を支えてくれるのは、人と人との繋がりなのだと痛感
しました。この出来事は、私の「打たれ強さ」や「鈍感力」をさらに強固なものにしてく
れたと感じています。
AI時代だからこそ“体温”を。人の想いを可視化する「マインドセット」重視の マニュアル作り
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの事業の核は、マニュアルを軸にした業務効率化支援です。AIを使えば誰でも簡単
にマニュアルを作れる時代ですが、私たちはAIには決して真似のできない価値を提供して
いると自負しています。それは、徹底的なヒアリングを通じて、人の頭の中にしかない
「暗黙知」や「熱量」までをも可視化することです。
私たちが作成するマニュアルには、単なる作業手順だけでなく、その業務に臨む上での
「マインドセット」や、背景にある会社の理念・想いを必ず盛り込んでいます。それはま
るで、作り手の「体温」が感じられるようなマニュアルです。社長の熱い想いが現場に伝
わらない、という組織課題は少なくありません。私たちのサービスは、その熱量を組織の
隅々まで浸透させ、全員が同じ方向を向いて走るための羅針盤となるのです。AIが進化す
る時代だからこそ、こうしたアナログな「人の温かみ」が、組織を強くすると信じていま
す。

とにかく、飛び込んでみること。新しい環境が、新しい価値観と自分を教えて くれる
──若者へのメッセージをお願いします。
私の人生は、常に新しい環境へ自ら飛び込むことで切り拓かれてきました。「世間知ら
ず」だった私が社会を知ったのは7つのアルバイトのおかげですし、起業のノウハウを学ん
だのはスタートアップへの転職でした。もし今、やりたいことが見つからずに悩んでいる
のなら、難しく考えずに、少しでも興味を持った環境に飛び込んでみてほしいです。
新しい環境は、これまで知らなかった価値観や知識を教えてくれます。それは、自分自身
の可能性を広げる何よりの経験になるはずです。そして、どんな環境に身を置いても大切
にしてほしいのが、「すべてを自責で考える」という姿勢です。たとえ相手が悪いと思え
る状況でも、「自分の言動に改善点はなかったか?」と内省する癖をつける。その繰り返
しが、皆さんを人間として大きく成長させてくれるはずです。

