赤字からの再建。社長就任時に託された重責
──逆境経験について教えてください。
私が社長に就任したのは、前任の代表が急遽退任されることになったのがきっかけでした。当時の親会社の社長から「やるか?」と問われ、「やります」と即答したものの、当時の会社は決して順風満帆な状態ではありませんでした。業績は赤字、採用は難航し、組織としての土台もまだ固まっていない。まさにゼロからの組織づくりと事業の立て直しが急務でした。
もともと当社は、セガが長年培ってきたエンタテインメントのノウハウをBtoB領域で活かすという、グループ内でも新しい挑戦のために設立された会社です。しかし、立ち上げ当初は社内にBtoBビジネスの知見が乏しく、まさに手探りの状態。取締役の一人として事業の成長に奔走していましたが、社長という立場で全責任を負うことになり、その重圧は想像以上のものでした。赤字を解消し、人を採用し、強い組織を作っていく。そのすべてを同時に、かつスピーディーに進めなければならない状況は、まさに逆境そのものでした。
会社を救ったのは「人」だった。ミッションへの共感が組織を変える
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
この経験を通して得た最大の教訓は、「事業の成否は、人で決まる」ということです。どれだけ優れた事業計画があっても、それを実行する人がいなければ意味がない。特に、赤字で苦しい時期に「この会社で働きたい」と入社してくれた新しいメンバーの存在が、何よりも大きな力になりました。
当時、案件を受注できても、それに対応する人材が圧倒的に不足していました。そんな中でジョインしてくれた社員たちが本当に優秀で、彼らがいなければ黒字化は不可能だったと断言できます。この経験から、採用に対する考え方が大きく変わりました。スキルや経験はもちろん大事ですが、それ以上に会社のミッションやビジョンに心から共感してくれるかどうかを最も重視しています。
最終面接で必ず見ているのは、「仕事を楽しめる人かどうか」です。これまでのキャリアで経験した苦労や失敗談を尋ねるのですが、その経験を前向きな学びとして、どこか楽しそうに語れる人には強く惹かれますね。逆境を逆境と捉えず、成長の糧にできる。そんなポジティブな姿勢こそが、会社を前進させる原動力になると信じています。

『「衝動」で課題を解決し、人々を幸せに』セガのDNAを武器に、社会課題を解決する
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの最大の強みは、セガがゲーム開発で培ってきた「人を楽しませ、夢中にさせるノウハウ」をゲーム以外の分野に活用する「ゲーミフィケーション」です。これを用いて、人々が「やらされている」と感じることなく、自発的に行動したくなるような体験を設計し、企業や社会が抱える様々な課題を解決しています。
そして、私たちの活動の根幹にあるのが『「衝動」で課題を解決し、人々を幸せに』というミッションです。これは、これまで我々が大切にしてきた人に驚きや感動を与え、“人の心を突き動かすこと(=衝動)”により、企業や社会の課題を解決してより良い世の中を実現したいという想いを込めて、長い時間をかけて練り上げた言葉です。実は以前、ミッションが形骸化してしまい、500人規模の組織が崩壊していくのを目の当たりにした経験があります。だからこそ、全員が同じ方向を向くための羅針盤として、ミッション・ビジョン・バリューの浸透を何よりも大切にしています。この「衝動」という言葉に共感してくれる仲間が集まっていることが、私たちの推進力になっています。
質より量。変化を恐れず、自分の「志」を見つけよう
──若者へのメッセージをお願いします。
若い皆さんには、まず「質より量」を意識して、とにかくたくさん行動してみてほしいと思います。最初から完璧な答えを出そうとするのではなく、試行錯誤を繰り返す中でこそ、本質的な学びや成長があると私は考えています。
社会に出ると、理不尽だと感じることがあるかもしれません。しかし、それをただ嘆くのではなく、「成長のチャンスだ」と捉えて変化を恐れずに挑戦し続けてほしいです。私自身、若手時代に「スマートフォンのゲームをやりたい」と発信し続けたことで、社内の新規事業にアサインしてもらえた経験があります。
そして、何より大切なのは、自分なりの「志」を持つことです。それは「長期的に達成したいこと」や「大事にしたい価値観」でも構いません。やりたいことが見つからない人は、ぜひ自分の過去を振り返ってみてください。誰かに感謝された経験、何かに夢中になった記憶の中に、きっとヒントが隠されているはずです。それでも見つからなければ、「自分は何でもできる」と信じて、まずは目の前のことに全力で取り組んでみてください。その先に、きっと道は拓けていくはずです。

