社員が消え、会社が崩れた日──成長の裏にあった致命的な落とし穴
──逆境経験について教えてください。
「人生で後悔だけはしたくない」。親戚の死を間近で見たことをきっかけに、大手企業マイナビでの安定したキャリアを捨て、起業の道を選びました。当初は採用コンサルティングから始めましたが、創業直後にコロナ禍に見舞われ、半年間は契約ゼロ。それでも諦めず、事業をピボットさせながら活路を探しました。
起業2年目、中途採用の人材紹介事業が軌道に乗り始めます。事業は急成長し、2年間で社員は20名規模にまで拡大しました。「兼平さんだから入社しました」と言ってくれる仲間にも恵まれ、組織は活気に満ちていました。しかし、その成功はあまりにも脆い土台の上にありました。
当時、私たちの集客は、その8割を一社の媒体に依存していました。それがある日突然、先方のルール変更によって、私たちのビジネスモデルが成り立たなくなったのです。
集客は7割減、売上と利益は見る影もなく激減しました。会社の業績が悪化すると、あれほど信頼し合っていたはずの仲間たちが、一人、また一人と会社を去っていきました。最終的には、ほとんどの社員が辞めてしまう「組織崩壊」を経験しました。大好きだったメンバーを失っていく日々は、本当につらかったですね。
二度と同じ過ちは繰り返さない──事業と人生を見つめ直した1年半
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
この壮絶な経験は、事業のあり方に対する考え方を根底から変えました。まず、他社のプラットフォームに依存するビジネスモデルの危うさを骨身に染みて感じました。そして何より、社員とその家族の人生を背負う経営者として、短期的な利益ではなく、永続的で安定した事業を作らなければならないと痛感したのです。「二度と同じ過ちは繰り返さない」と固く誓いました。
そこから、本当に自分が人生をかけて取り組みたい事業は何か、自分の心の火が消えないものは何かを、徹底的に自問自答する日々が始まりました。会社の理念を再定義し、そこからマーケットを選び、ビジネスモデルを構築していく。一つひとつ言語化しながら、事業の核を創り上げていきました。苦しい時期でしたが、上場企業の経営者であるメンターからの「もっと視座を上げろ」という言葉にも支えられ、より大きなビジョンを描くことができました。

採用の常識を覆す「触れる動画」──偶然の出会いから生まれた逆転の一手
──会社の強みや魅力について、教えてください。
1年半に及ぶ苦悩の末にたどり着いたのが、現在の主力事業である「インタラクティブ・リクルーティング」です。驚くことに、この事業の核となる技術との出会いは、息子のサッカーチームの「パパ友」という偶然の縁からでした。
私たちのサービスは、企業の採用サイトに「触れる動画(インタラクティブ動画)」を設置することで、採用のあり方を根本から変えるものです。これまで30年間、文字と画像が中心だった採用サイトを、求職者が直感的に情報を得られる「説明を聞く」体験へと進化させます。これにより、採用における企業と求職者の間の情報の非対称性をなくし、ミスマッチを減らすことを目指しています。
この新しい価値は市場に受け入れられ、サービスを開始してわずか1ヶ月で30社ほどの企業様から契約をいただくことができました。今後の目標は、かつて私が在籍したマイナビのような大手就職サイトの掲載社数に匹敵する「5万社」への導入です。日本の採用の“当たり前”を、私たちが変えていきたいと思っています。
人生の舵は、自分で握れ──後悔しない選択のために
──若者へのメッセージをお願いします。
私が起業を決意したのは、「後悔しない人生を送る」と自分に約束したからです。皆さんに伝えたいのは、自分の人生の時間は、他ならぬ自分のために使ってほしいということです。会社に住む場所や働く仲間、給与まで決められる人生はおかしい、そう思ったのが私の原点でした。
私自身、浪人時代に周りが年下ばかりになったことでリーダーシップを発揮せざるを得なくなったり、転校先で孤独を感じた経験が人間観察力を養ったりと、環境が自分を大きく変えてきました。「環境が人を創る」と心から信じています。だからこそ、自分がどんな環境に身を置き、誰と時間を過ごすのかを真剣に選んでください。
失敗を恐れる必要はありません。大切なのは、自分の心の火が燃え続ける道を選ぶことです。皆さんが自分の人生の舵を自分で握り、後悔のない航海に出ることを心から応援しています。

