自ら望んだ最難関の地、革命直後のエジプトへ
──逆境経験について教えてください。
私自身は、困難な状況を「逆境」ではなく「成長のチャンス」と捉えるため、明確な逆境経験というのはありません。しかし、人生の転機となった最も過酷な経験は、大手損害保険会社勤務時代に赴任した革命直後のエジプトでの3年間です。
当時、海外赴任の機会をいただき、ニューヨークやロンドンなど、誰もが羨む先進国への道も開かれていました。しかし、私は「自分が最も成長できる環境に行きたい」と考え、あえて一番つらい場所を希望しました。日本人が少なく、インフラも整っていないインドやブラジル、中東などを挙げた結果、会社から命じられたのは革命直後で最も治安が悪いエジプトでした。
現地では、アラビア語をアラビア語で学ぶという想像を絶する環境からスタートしました。英語すら完璧ではない中で、必死にアラビア語を習得する毎日。さらに、治安の悪さは深刻で、交通事故や暴動に巻き込まれ、3年間で2回も死にかける経験をしました。常に死と隣り合わせの環境で過ごしたこの3年間は、私の価値観を根底から覆す強烈な体験となりました。
死の淵で知った“正しさ”の多様性。世界観を変えた3年間
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
エジプトでの経験は、私の視野を大きく広げてくれました。それまでの私は、勉強もスポーツも常にトップクラスで、自分の考えが最も正しいと信じて疑わない人間でした。しかし、エジプトでは一日五回のお祈りが当たり前の日常であり、そこには彼らにとっての「正しさ」が存在していました。自分の常識が必ずしも正しいわけではないと痛感した瞬間です。この経験を通じて、多様な価値観を受け入れ、他者の意見に耳を傾ける謙虚さ、そして優しさを学びました。
また、死にかける経験をしたことで、リスクに対する考え方が大きく変わりました。「日本でどんな挑戦をしても、命まで取られることはない」という確信が生まれたのです。それ以来、どんな困難な状況に陥っても「死ぬわけじゃないから楽勝だ」と前向きに捉えられるようになりました。このマインドセットは、起業という大きな挑戦に踏み出す上での精神的な支えになっています。逆境は乗り越えるものではなく、楽しむもの。その中で得られる成長こそが、人生で最も価値のあるものだと考えています。

大企業に眠る“本当の天才”を解放せよ。1兆円企業への壮大な構想
──会社の強みや魅力について、教えてください。
当社の最大の強みは、大企業に埋もれている「とんでもなく優秀なシニア人材」の価値を、私自身の経験から深く理解している点です。大手損害保険会社時代、私は東大首席クラスの、まさに天才と呼べるような同僚たちと共に働いてきました。彼らは圧倒的な能力を持ちながらも、年齢という画一的なルールによって活躍の場を制限されてしまう。この現状に、私は強い問題意識を抱いていました。
BEYOND AGEは、そうした類まれな経験と能力を持つシニア人材と、彼らの力を必要とする中小ベンチャー企業などを繋ぐ橋渡しをしています。これは、私が大企業の組織中枢で「本物の実力」を目の当たりにしてきたからこそできる事業です。
今後の展望としては、2030年のIPO、そして2050年には時価総額1兆円企業になることを目指しています。現在はシニア向けの人材サービスが中心ですが、将来的には60歳から100歳までの人生を豊かにする総合サービス企業へと進化させていきます。社会に大きなインパクトを与え、必要不可欠な存在になること。それが私たちの目標です。
夢はでっかく、格好つけて生きろ。挑戦があなたの未来を変える
──若者へのメッセージをお願いします。
私が若い皆さん、特に優秀な学生に伝えたいのは、「リスクを恐れずにチャレンジしろ」ということです。日本の大企業には、かつての私が見てきたように、世界を変えられるほどのポテンシャルを持った人材が集中しすぎています。それは社会全体にとってマイナスだと考えています。
高い給与や安定した地位も魅力的ですが、それ以上に、自らの手で事業を創り出し、社会にインパクトを与える経験には計り知れない価値があります。リスクを恐れず、ベンチャーのような挑戦的な環境に飛び込んでみてください。困難な環境は、あなたを最も成長させてくれる最高の舞台です。自分の可能性を信じ、夢はでっかく、格好つけて生きていきましょう。皆さんの挑戦が、日本の未来を創っていくのです。


