「何もしてくれない」──25歳、年上だらけのチームで味わったマネジメントの壁
──逆境経験について教えてください。
新卒で入社して3年目、一度は会社を辞めようと考えました。しかし、社長から「二店舗目を任せるから」と強く引き留められ、25歳という若さでマネージャーになる決意をしました。ですが、これが苦難の始まりでした。
配属されたチームの部下は、自分より年上の方ばかり。中には親世代のベテラン看護師もいました。マネジメント経験など全くない私は、「管理職とは、現場に指示を出すことだ」という浅い理解のまま、とにかく業務を伝え続けました。しかし、結果は悲惨なものでした。売上は一向に上がらず、お客様からのクレームは鳴り止まない。そして、現場の部下たちからは「蛯沢さんは何もしてくれない」という不満が噴出し、一人、また一人と人が離れていきました。
一番つらかったのは、年上の部下に対して本当に伝えたいことが言えなかったり、勇気を出して伝えても「抽象的でわからない」「今その話?」と全く意図が伝わらなかったりしたことです。経験も年齢も上の人たちを相手に、どうすればいいのか分からず、ただ空回りする日々。約2年間、出口の見えない暗黒時代を過ごしました。
答えは“下界”にあり。自腹60万の投資と300人の師が教えてくれた本質
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
「なぜ、うまくいかないのか」。自問自答を繰り返す中で、自分には「マネジメントとは何か」という本質的な理解が欠けていることに気づきました。そこから私の反撃が始まります。まず、藁にもすがる思いで、マネジメントとリーダーシップを学ぶ研修に自腹で60万円を投じて参加しました。合宿も経験し、まさに目から鱗が落ちる思いでした。
同時に、入社1ヶ月目に社長から言われた「この業界は閉鎖的だ。下界へ出ろ」という言葉を思い出したのです。そこからは、土日や休日を全て使い、異業種の経営者に会うために奔走しました。友人に「自分よりすごい人を紹介してくれ」と頼み込み、数珠つなぎで人脈を広げていった結果、3年間で300名以上の経営者とお会いする機会に恵まれました。彼らから推薦された本を読み、仕事への向き合い方を学び、全てを吸収しようと必死でした。
学びを現場で実践するのは、勇気がいりました。研修で得た知識をまとめた教科書を毎朝出社前に読み込み、今日やるべきことを確認しては、泥臭く試し続ける。それを半年、一年と続けた頃、変化が訪れました。「蛯沢さんが言うなら」と、部下たちが私の話に耳を傾けてくれるようになったのです。少しずつ信頼関係が生まれ、チームはV字回復を遂げました。組織が安定した頃にはグループ内で一番人が定着し、「本当はもっとここで働きたかったです…」と引っ越し等でやむを得ない事情でしたが泣きながら退職を語って方もいました。この経験から、困難な状況でも、まず自分自身が変わること、そして答えを内に求めず、外の世界から謙虚に学ぶことの重要性を痛感しました。

「採用以外」の全てを支援。組織の土壌を耕し、介護業界の未来を拓く
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの最大の強みは、介護施設の「採用以外」の経営課題をすべてサポートできることです。多くのコンサルティングが採用支援に注力する中で、私たちは真逆のアプローチを取っています。なぜなら、私自身のマネジメント経験から、「良い人材が入っても、受け入れる組織の土壌が整っていなければ、人は定着しない」という確信があるからです。
具体的には、業務改善やスタッフの定着支援、営業コンサルのほか、会議の進め方や事業戦略の策定まで、組織の内部を徹底的に見直すお手伝いをしています。マネージャー時代の成功体験を体系化し、どの施設でも再現可能なノウハウとして提供できるのが、私たちの価値だと考えています。
将来的には、この介護業界で培った知見を、一般企業にも展開していきたいです。今、多くの企業で「介護離職」が社会問題になっていますが、これは私たちのような専門家だからこそ解決できる課題です。また、日本の介護サービスの質は世界一だと言われています。このポテンシャルを信じ、国内だけでなくグローバルな視点でも業界の発展に貢献していきたいですね。
「福祉=幸せ」。君の持つ視点が、業界のブルーオーシャンを切り拓く
──若者へのメッセージをお願いします。
皆さんは「福祉」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?実は、福祉という言葉の語源は「幸せ」なんです。誰かの世話をすることだけが福祉ではありません。生活の中で感じる小さな幸せや、困っている人に手を差し伸べる思いやり、そのすべてが福祉に繋がっています。
介護業界は、アナログな部分も残っています。しかし、裏を返せば、それはAIやDXといった新しい技術や視点を持つ若い皆さんにとって、活躍のチャンスに満ちたブルーオーシャンだということです。
現場でケアのプロを目指す道もあれば、SNS運用やWeb制作で施設の魅力を発信する道、私のようにコンサルタントとして経営を支える道もあります。関わり方は無限大です。日本の未来にとって不可欠なこの業界で、皆さんの新しい感性を活かして、まだ誰も見たことのない「幸せ」の形を一緒に作っていけたら、これほど嬉しいことはありません。

