成果を夢見て飛び込んだ社会。待ち受けていた理不尽の壁
──逆境経験について教えてください。
大学3年生の時、家庭の事情が大きく変わり、「自分が家族を支えなければ」という思いが芽生えました。それまで夢見ていた航空業界への道を断ち、成果が正当に評価され、稼ぐことができる営業職へとキャリアチェンジを決意。転職市場で有利になるよう、1社目で圧倒的な成果を出すことを目標に、成果報酬型の自動車ディーラーに就職しました。しかし、そこで私を待ち受けていたのは、理想とはかけ離れた現実でした。
配属された店舗は、パワハラとセクハラが日常的に横行する場所でした。インカムからは常に誰かへの罵声が飛び交い、営業成績を上げたくても、まずは上司のご機嫌を伺わなければ提案すらできない。そんな環境で心身ともに疲弊し、文字が読めなくなったり、原因不明の体調不良に悩まされたりするまで追い詰められてしまいました。
勇気を振り絞って会社に店舗異動を直談判しましたが、「いつも笑顔だから相手に勘違いさせるんじゃないの?」と、まるで私が原因であるかのように一蹴されました。「新人が文句を言うな」という無言の圧力の中で、社会から切り捨てられたような絶望感を味わい、わずか半年で退職することになったのです。
「社会は誰も守ってくれない」絶望の底で生まれた“方舟”という使命
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
この経験は、私にとって大きなターニングポイントになりました。「社会は、立場の弱い人間を守ってはくれないんだ」。それを身をもって痛感したのです。そして同時に、自分の意見を正当に聞いてもらうためには、まず聞いてもらえるだけの立場にならなければいけないと強く感じました。
この理不尽な経験は、私の中に一つの使命感を芽生えさせました。母や妹、友人たちといった大切な人たちが、いつか私と同じように社会から理不尽に切り捨てられるかもしれない。そう思った時、「私がみんなを守れるシェルターのような存在になろう」と決意したのです。何かあった時に「うちにおいでよ」と手を差し伸べられるだけの力を持つ。そのために、会社を創り、誰かを守れるだけの規模にまで成長させる必要があると考えました。
弊社の「noah」という社名は、旧約聖書に登場する「ノアの方舟」から名付けました。夢を追いかけるというよりは、「大切な人を守る」という使命感が、私の事業のすべての原動力になっています。

現場の“不満”を価値に変える。採用から育成まで支えるnoahの総合力
──会社の強みや魅力について、教えてください。
株式会社noahは、営業組織が抱える課題を採用から育成まで一気通貫でサポートする事業を展開しています。特に注力しているのが、AIを活用した営業育成システムです。これは、私自身が営業現場で感じていた「もっとこうだったらいいのに」という不満や非効率を解消するために開発しました。
例えば、商談内容を自動で文字起こし・要約し、AIが客観的なフィードバックを返してくれます。さらに、相手の表情を分析する機能も搭載し、失注理由の分析などにも役立ちます。これにより、マネージャーは進捗管理といった単純作業から解放され、本当にフォローが必要なメンバーへの指導に時間を割けるようになります。一方で、若手メンバーも上司の時間を過度に気にすることなく、自走できる環境が手に入ります。
私の営業時代の経験、そして採用代行で培った知見。そのすべてを注ぎ込んだ「現場目線」のサービスであることが最大の強みです。今後は上場や海外展開も視野に入れ、より多くの人を守れる「方舟」となるべく、事業を成長させていきたいと考えています。
しなやかに強く生きるために──自分を理解するという武器
──若者へのメッセージをお願いします。
これからの社会を生きる皆さんには、「自分のことをよく知る」ということを大切にしてほしいです。自分がどんな時に機嫌が悪くなるのか、どんな強みがあるのか。それを客観的に理解し、「言語化」できる力は、人と仕事をしていく上で非常に重要なスキルになります。
私自身、学生時代は言語化が得意なつもりでいましたが、今思えば圧倒的に経験が不足していました。「何がわからないのかさえ、わからない」状態だったのです。だからこそ、まずはたくさんの経験を積んで、「できないこと」や「知らないこと」を見つけることが大切だと思います。
そして特に女性の方には、「自分のことは自分で守る」という覚悟を持ってほしいと伝えたいです。社会は常に優しいわけではありません。理不尽な壁にぶつかった時、自分を守る盾となるのは、自分自身で積み上げた経験と、物事を的確に捉える言語化の力です。たくさんの挑戦と失敗を繰り返しながら、自分だけの強さとしなやかさを身につけていってください。
