取引先からの圧力、そしてコロナ禍。ゼロからの独立を襲った試練
──逆境経験について教えてください。
私のキャリアにおける最大の逆境は、2019年に本当の意味で独立した直後の出来事です。もともと在籍していた会社で、海外事業の可能性を追求するために2年かけて交渉し、社内独立を果たしました。しかし、いざ始めてみると「他社の人を海外にはやれない」といった理不尽な制約が生まれ、思い描いていた活動が全くできなかったのです。
これでは意味がないと1年で完全に独立する道を選んだのですが、そこからが本当の試練でした。元の会社からは「彼と関わるなら取引をやめる」と、協力会社に圧力がかかり、私はすべての取引先を失いました。文字通りゼロからの、いやマイナスからのスタートです。
幸いにも、私の独立を待っていてくれた数社からコンサルティングの依頼をいただき、なんとか事業を軌道に乗せようと奔走していた矢先、世界をコロナ禍が襲いました。海外に置いていた生産拠点はロックダウンで閉鎖され、物販の売上は完全にストップ。さらに追い打ちをかけるように急激な円安が進行し、数千万円の案件を受注しても利益が出ない、むしろ赤字という状況に陥りました。信じていた人からの裏切りも重なり、精神的にも肉体的にも、まさにもがき苦しむ日々が続きました。
「損得」で動いた先にある後悔。「善悪」の軸が信頼できる仲間を呼ぶ
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
独立後の苦しい時期、特に人間関係での裏切りを経験したことで、私の価値観は大きく変わりました。それまでは、どこかで「損得」を基準に物事を判断していた部分があったと思います。しかし、損得勘定で動いた先には、同じような考えの人が集まり、結果として騙されたり、うまくいかなかったりすることが多かったのです。
この経験を通して、物事の判断軸は「損得」ではなく「善悪」であるべきだと痛感しました。つまり、儲かるかどうかではなく、人として正しいことか、誰かのためになることかを基準に考える。最初は利益が少なくても、人のためになることを続けていると、自然とモチベーションが上がり、不思議と道が拓けていくのです。
今、私の周りには本当に素晴らしい方々が集まってくれています。それは、この「善悪」という軸を大切にするようになってから出会った人たちです。一人でできることには限界があることも、この逆境の中で悟りました。だからこそ、善悪の軸で集まった信頼できる仲間たちと共に、事業を進めていく。それが、私が逆境から得た最も大きな教訓です。

企業の「最適な繁栄」をデザインする。経験のすべてを力に変えるコンサルティング
──会社の強みや魅力について、教えてください。
社名の「i.P.designing」は、「Ideal Prosperity(最適な繁栄)」をデザインするという理念を込めています。お客様が描く未来にたどり着くための、小さな、しかし重要な歯車になることが私たちの役割です。
私の強みは、自動車業界で培った徹底的な分析力です。どんな課題に対しても「根拠は何か」を突き詰め、すべてを数値化して現状を分析します。その上で、お客様が目指すゴールを明確にし、そこへ至る道筋を共にデザインしていきます。例えば、新素材を開発したものの売り方がわからない企業様には、マーケティング分析から製品化の提案まで行います。
また、独立後に取得した行政書士の資格も大きな武器です。これにより、これまで接点のなかった建設業や美容業界など、幅広い分野の経営者様と警戒心なくお話を聞いていただけるようになりました。一つの業界で得た知見を別の業界に応用するなど、多角的な視点からコンサルティングできるのが当社の魅力です。現在は、自身の海外経験や世代間のギャップを埋める必要性を感じ、「教育」に関するサービスにも力を入れています。
レールを外れることを恐れるな。まず行動し、世界に目を向けてほしい
──若者へのメッセージをお願いします。
もし今、将来に迷っているなら、「やらなくて後悔するのが一番ダメだ」ということを伝えたいです。何かをやりたいと思ったら、まず行動してみてください。合わなければやめればいい。挑戦することでしか見えない景色が必ずあります。
かつての日本には、一度レールを外れると戻りづらい雰囲気がありましたが、時代は変わりました。私自身、就活をせず、文系から理系の世界に飛び込み、海外へも行きました。外の世界に出て初めて、日本の良さや課題、そして日本人のレベルの高さを知ることができました。皆さんが思っている以上に、日本人は世界で通用します。もっと自分に自信を持っていいんです。
思い詰めてしまった時は、一度立ち止まって視野を広げてみてください。あなたの活躍できる場所は、日本だけとは限りません。なるようにしかならない、と少し肩の力を抜いて、様々なことに挑戦してほしいと思います。

