仲間を失った孤独と焦り。人生のどん底で芽生えた「このままでは終われない」という渇望
──逆境経験について教えてください。
僕のキャリアのスタートは、中学卒業後でした。周りが高校に進学する中、「目的もなく学校へ行く意味がわからない」と感じ、働くことを選んだんです。工場での単純作業から、家賃滞納者の荷物を運び出す裁判所の強制執行の仕事まで、本当に様々な現場を経験しました。多感な時期に社会のリアルな側面を目の当たりにしたのは、貴重な経験だったと思います。
しかし、10代後半になると、道を誤りかけました。仲間たちと安易な金儲けを企てては失敗し、良からぬ誘いを受けることもありました。結局、その仲間たちともうまくいかなくなり、孤立してしまったんです。唯一の財産だと思っていた友人関係を失い、毎日やることがなくてパチンコに通ったり、家でアニメを観て過ごしたり。人生の目標を見失い、半ば引きこもりのような状態でした。それが、個人としての最初の大きな逆境でしたね。
転機となったのは、たった一人の親友の存在です。彼も僕と一緒にぶらぶらしていたのですが、ある日突然「建築士になる」と言って専門学校に通い始めた。その姿を見た時、ものすごい焦りを感じたんです。「あいつは自分の道を見つけて進んでいくのに、俺はこのままでいいのか」と。その強烈な感情が、僕を本気で人生と向き合わせるきっかけになりました。
「君が思う人生にはならないよ」。恩師の言葉と成功の先で見つけた“本当の目的”
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
親友に触発され、僕もまず大学に行こうと考え、大検(高等学校卒業程度認定試験)の予備校に話を聞きに行きました。そこで出会った副校長のような方が、僕の人生を大きく変えることになります。経緯を話すと、彼は「君が頑張れば大学には行けるだろう。でも、大学に行っても君が思っているような人生にはならないよ」と言い、一冊の『資格百選』という本をくれたんです。「この中から、君が本当にやりたいことを見つけてみなさい」と。
入学させることが商売のはずなのに、僕の未来を真剣に考えてくれた。その純粋な貢献心に心を打たれ、かつて不動産屋に憧れていた自分を思い出しました。そして、宅建、さらには司法書士という明確な目標が定まったんです。目的がはっきりすれば、僕の集中力は凄まじいものでした。18歳で宅建に、そして20歳の時には、ほぼ最年少で司法書士試験に一発で合格することができました。
しかし、25歳で独立し、経済的にも成功を手にしたとき、新たな壁にぶつかります。年収は数千万円になり、お金に不自由しない生活を送っていましたが、なぜか心が満たされない。「俺の人生、こんなものか?」という虚しさが常にありました。司法書士を目指していた時の方がよほど充実していたんです。
その答えが見つかったのは、28歳の時に参加したある研修でした。そこで気づいたのは、僕の人生には「ビジョンがなかった」ということ。それまでの僕は、自分の年収や地位など、矢印がすべて自分にしか向いていなかった。でも、その矢印を自分以外の人や社会に向けた時、世界は一変しました。やるべきことが無限に見つかり、退屈だった人生が、挑戦に満ちた忙しいものへと変わっていったのです。

不動産からリユースまで。挑戦する人を応援し、日本を元気にする事業を創る
──会社の強みや魅力について、教えてください。
現在の主力事業は、不動産とリユースです。どちらも、研修で得た「世の中に貢献する」というビジョンが根底にあります。不動産事業では、単に「駅から近い」「間取りが広い」といった条件で家を探すお手伝いはしません。お客様の人生に寄り添い、「どういう家を手に入れることが、あなたの人生の成功に繋がるのか」を一緒に考え抜くコンサルティングスタイルを強みとしています。
1年ほど前に立ち上げたリユース事業にも、大きな可能性を感じています。各家庭には、価値があるのに使われずに眠っているものが60兆円分もあると言われています。これらは、そこにあるだけでは何も生み出しません。僕たちは、そうした“眠れる資産”を流通させることで、売った人には新たな消費のきっかけを、そして社会全体には経済の活性化をもたらしたいと考えています。
僕の大きな目標は「日本をもっと元気にすること」。多くの人が日々の生活に追われ、生きがいを見失いがちです。でも、もし誰もが「もっとこうなったらいいな」というビジョンを持てたら、社会はもっと活気づくはず。僕自身が挑戦し続ける姿を見せることで、挑戦したいと思う人を応援し、社内から新たな起業家が生まれるような環境を作っていく。それが、僕が事業を通して成し遂げたいことです。
“残機”が多い若者たちへ。やれるかじゃなく、やりたいかで人生を選べ
──若者へのメッセージをお願いします。
若いということは、ゲームのマリオで言えば“残機”がたくさんある状態です。10機くらい残っているのに、ステージ1-1でうろうろしているのはもったいない。失敗なんて気にせず、その残機を全部使い切るくらいの勢いで、ガンガン挑戦してほしいですね。何度も死んで、失敗を繰り返した先にこそ、ラスボスのクッパを倒せるくらい強い自分になれるはずです。
「やりたいことがない」と悩む人も多いかもしれません。でもそれは、「自分にできるかどうか」というフィルターで、無意識に選択肢を狭めてしまっているだけじゃないでしょうか。一度そのフィルターを壊して、「もし何でもやれるとしたら、何をやりたい?」と自分に問いかけてみてください。
例えば「メジャーリーガーになりたい」という夢があったとして、その目的が「大谷翔平選手のように、人々に希望を与える存在になりたい」ということであれば、方法は野球だけではないはずです。自分の得意なことで、その目的を達成する道を探せばいい。決して楽な道ではないかもしれませんが、その困難な道を歩むことこそが、人生を豊かに生きる一番のコツだと僕は信じています。

