クレジットカード紛失、所持金ゼロ。灼熱のアメリカで始まった3ヶ月のホームレス生活
──逆境経験について教えてください。
一度はオーダースーツ事業で起業したものの、当時の彼女に仕事もお金もすべて持ち逃げされ、僕は人生に絶望していました。そんな時、かつてコロナで諦めた「アメリカ横断」の夢を思い出したんです。「これをやり遂げたら、人生が変わるかもしれない」。そう信じて、なけなしのお金を持ってアメリカへ飛び立ちました。
しかし、挑戦は早々に終わりを告げます。渡米してたった17日目、クレジットカードを紛失してしまったのです。物価は日本の数倍。ビール1本が1500円、ハンバーガーセットが2000円もする世界で、僕は完全に無一文になりました。帰国する飛行機は3ヶ月先のニューヨーク発。そこまで6000kmの道のりを、お金を使わずに生き延び、たどり着かなければならなくなりました。
ラスベガスでの野宿は地獄でした。最高気温45℃、最低でも35℃という灼熱地獄で、夜も眠れません。水を体にかけ、ペットボトルを抱きしめて気化熱でなんとか暑さをしのぐ毎日。正直、何度も「もうダメかもしれない」と思いました。笑うしかなかったですね。
路上生活で見出した希望の光。「人間の可能性は無限大」だと確信した瞬間
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
どうしようもなくなった僕は、路上で稼ぐしかありませんでした。段ボールに「あなたの名前を漢字で書きます」と書き、書道パフォーマンスを始めたんです。最初は全く稼げませんでしたが、試行錯誤を重ねました。見栄えを良くするために折り紙で鶴を飾ったり、価格を「1ドルから」ではなく「無料(チップ歓迎)」に変えたり。すると、物珍しさから行列ができるようになったんです。多い日には一日で300ドル(約4万円)も稼げました。
この経験は、僕にとって大きな教訓となりました。英語も話せず、お金もコネもない。そんな僕でも、知恵と工夫で生き抜くことができた。この時、心の底から「人間の可能性は無限大なんだ」と確信しました。
今の大学生に「ゼロ円でアメリカ横断できると思う?」と聞いても、誰もができるとは言いません。でも、僕にできたのだから、きっと誰にでもできるはずなんです。追い込まれた状況だからこそ、自分でも気づかなかった力が引き出される。この経験が、僕の人生の原点になっています。

失敗と挑戦の先に。学生と企業を繋ぎ、新たな価値を創造する
──会社の強みや魅力について、教えてください。
弊社は現在、主に2つの事業を展開しています。一つは、学生団体と企業を繋ぐZ世代向けのマーケティング支援です。学生団体は「ノウハウとお金がない」、企業は「優秀な学生との接点がない」という双方の課題を、私たちが間に入ることで解決しています。
もう一つは、TikTokやInstagramのリール動画の制作を中心としたSNSマーケティング事業です。これも、アメリカでの経験から学んだ「どうすれば人の心を動かせるか」という視点が活きています。
実は、アメリカから帰国して立ち上げた組織も、一度は崩壊させてしまいました。勢いだけで経営の知識が全くなく、給料も払えず、仲間が離れていったんです。その失敗から、経営塾でPL/BSといった基礎を徹底的に学びました。失敗から学んで、それを事業に活かしていく。この繰り返しが、今の会社の強みに繋がっていると感じています。
肩書きは“鼻くそ”と一緒。自分の人生を経営する「心の起業家」になれ
──若者へのメッセージをお願いします。
よく「起業したい」という相談を受けますが、僕はいつも「心の起業家になれ」と伝えています。正直、「代表取締役社長」なんて肩書きは、書類を出せば誰でもなれる。鼻をほじれば出てくる鼻くそと一緒で、それ自体に価値はありません。
本当に大切なのは、自分自身の人生を、自分の意思で選択し、経営していくことです。大企業に就職する道を選んでも、アルバイトを頑張る道を選んでもいい。親や周りの意見に流されるのではなく、自分で考えて決断したのなら、その人はもう立派な「起業家」です。
起業は素晴らしい挑戦ですが、統計的に見れば成功し続けるのはほんの一握り。もし辛くなったら、就職したっていいんです。大事なのは、自分がワクワクする道を選ぶこと。自分の心の声に正直に、人生という壮大な事業を経営していってほしいと思います。

