「社会の常識」に阻まれた就職活動と、全てを失ったコロナ禍
──逆境経験について教えてください。
大学時代からフリーランスとして活動し、自分の力で道を切り拓いてきた私にとって、最初の大きな壁は就職活動でした。それまでの面接では落ちた経験がほとんどなかったのですが、いざ就活を始めると最初の1ヶ月はまさかの全落ち。「なぜ今まで上手くいっていたことが通用しないんだろう」と深く悩みました。
原因を突き詰めてわかったのは、私の考え方が社会の「常識」とは真逆だったということです。例えば、組織の問題点を指摘し「トップに直接話せばいい」とストレートに伝えてしまう。フリーランスの感覚では当たり前でも、組織人としては受け入れられなかったのです。そこで一旦ゴールを「就職すること」に定め、自分の考えとは逆の、社会が求めるであろう答えを話すようにしたところ、面白いように内定が取れました。
しかし、入社した会社で目の当たりにしたのは、顧客のためにならない営業手法や、売上を上げていない上司からの理不尽な指示でした。「文句を言うくらいなら、自分でやった方がいい」。組織の矛盾を体感したことで、起業への思いは一層強くなりました。そして、最大の逆境が訪れたのは22歳の頃。コロナ禍によって、それまで積み上げてきたイベント事業などの活動がすべて停止してしまったのです。これまで何をやってもある程度の結果を出せてきた自信は崩れ落ち、「結局、私には何もできないんだ」と、自分が何者でもないという事実に打ちのめされました。
「お前だけがしんどいんじゃない」父の言葉で掴んだ、ゼロからの再起
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
何もかも失い、絶望の淵にいたとき、私は初めて父に泣きながら電話をしました。「もう何のために大阪に来たのかわからない。誰も私のことを知らない世界に行きたい」と。そんな私に父がかけた言葉は、「お前だけがしんどいんじゃない。今までの経歴や実績を、一度全部まっさらにしろ」というものでした。
その言葉にハッとさせられました。自分では気づかないうちに、過去の成功体験がプライドとなり、新たな一歩を踏み出す足枷になっていたのかもしれない。そう思い、私は過去をすべて捨て、ゼロからサラリーマンとして再出発することを決意しました。
この経験は、私を大きく変えてくれました。以前は人の話を聞くのが面倒だとさえ思っていましたが、今では自分と違う考えを持つ人に対して「なぜそう思うんだろう?」と純粋な興味が湧くようになりました。かつての成功も挫折も、すべてが今の自分を形作る糧になっています。あの逆境があったからこそ、プライドを捨て、他者への深い関心と謙虚さを手に入れることができたのだと思います。

ゴルフを軸に新たな価値を創造する。人と人をつなぐ独自のコミュニティ事業
──会社の強みや魅力について、教えてください。
現在、弊社では主に3つの事業を展開しています。高級ホテルでのパーティー事業、芸能関係のヘアメイクアップアーティスト事務所、そして主軸となっているのが、ビジネスとゴルフを掛け合わせた会員制のコミュニティ事業です。
このコミュニティには、上場企業の役員や経営者、芸能人、アスリートといった、普段なかなか出会えないような方々が集まっています。なぜゴルフなのか。それは、ゴルフというスポーツが、年齢や役職、知名度に関わらず、誰もが同じフィールドでフラットに交流できる最高のツールだからです。どんなに偉い方でも、スコアが近ければ自然と会話が弾み、距離が縮まる。私たちは、そうした「空間作り」を得意としています。
また、私自身がホステスの経験を持つことから、ゴルフを通じて接客マナーや営業スキルを磨き、ホステスの方々のキャリアを底上げするサポートも行っています。単なる異業種交流会ではなく、ゴルフという共通言語を通じて、質の高い出会いと新たなビジネスチャンスが生まれるプラットフォームであること。それが私たちの最大の強みです。

「悩むくらいなら、動けばいい」理想の自分になるための一歩
──若者へのメッセージをお願いします。
もし今、何かやりたいことがあるけれど一歩を踏み出せずに悩んでいるなら、伝えたいのは「考えるのではなく、まず動いてみてほしい」ということです。頭の中でどれだけ考えても、得られるものには限界があります。でも、動けば必ず何かが変わる。失敗したとしても、それは貴重な経験になります。
私自身も、これまでたくさんの失敗を繰り返してきました。でも、動きを止めなかったからこそ、理想を一つひとつ現実に変えてくることができました。身近な誰かが何かを成し遂げたとき、「あの人にできるなら、私にもできるかも」と思えることがありますよね。私も、誰かにとってそんな存在でありたいと思っています。
そして、特に女性の皆さんには、女性であることを最大限に武器にしてほしいと伝えたいです。しなやかさ、したたかさ、時には弱さを見せることさえも、大きな力になります。環境の変化はあっても、自分の考え方まで変える必要はありません。使えるものはすべて使って、自分だけの道を切り拓いていってください。悩む時間があるなら、動く。その一歩が、あなたの未来を大きく変えるはずです。
