壮絶ないじめ体験が生んだ生存戦略、「スネ夫理論」の誕生
──逆境経験について教えてください。
私の人生の原点は、間違いなく小学校3年生の時にあります。半年間、陰湿ないじめを受けていました。きっかけは、幼稚園から仲の良かった友人と始めた習い事で、私が彼を追い抜いてしまったこと。彼の嫉妬が、私の世界を一変させました。筆箱が隠され、すれ違いざまに笑われ、聞こえるように陰口を叩かれる。誰にも相談できませんでした。親同士も仲が良く、先生も「仲良しグループ」だと思っていたからです。逃げ場はなく、毎日泣いていました。
「誰も助けてくれないなら、自分で解決するしかない」。そう腹を括った私が目をつけたのが、クラスの「カースト制度」でした。いじめを行うのは、決まって自己肯定感の低い「2軍」の子たち。自信のある「1軍」の子はいじめなんてしません。ある日、テレビで『ドラえもん』を見ていて衝撃を受けました。「スネ夫って、実はすごいんじゃないか?」と。彼は本来ならいじめられてもおかしくないスペックなのに、ジャイアンという「絶対強者」の懐に入ることで、不可侵のポジションを確立している。「これだ!」と思いました。名付けて、「スネ夫理論」です。
プライドを捨て、徹底的に「ジャイアン(1軍)」に取り入るキャラクターを演じました。彼らにどうすれば好かれるか、何を求めているかを必死で分析したのです。勉強が苦手なリーダー格の子にはテストの要点を教え、彼が「サッカーやろうぜ」と言えば誰よりも早くボールを持っていく。まさに「虎の威を借る狐」です(笑)。すると、世界が変わりました。1軍の子が「おい、いじめるのやめろよ」と一言えば、それですべてが終わる。いじめは完全に消滅しました。「ありのままの自分」で傷つくより、相手が求める「キャラクター」を演じれば環境は変えられる。この成功体験が、私の人生を決定づけました。
必勝のメソッド。「後出しじゃんけん営業」と3つの仮面
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
いじめを克服した経験は、「キャラを作れば怖いものはない」という確信に変わりました。高校時代、演劇部の先生が「人生は演技だ!演じるのが上手いやつが勝つ!」と叫んでいて、自分の考えは間違っていなかったんだと腑に落ちたのを覚えています。この考え方が、社会人になってからの営業活動の根幹を成しています。私はこれを「後出しじゃんけん営業」と呼んでいます。
普通の営業マンは、いきなり自分の強みである「グー」を出してしまいますが、相手が「パー」なら負けてしまう。そうではなく、相手の手をじっくり観察し、相手が求めているキャラクターを「後出し」で演じれば、100%勝てるんです。私は部下にも「自分の引き出しに3つのキャラクターを持て」と指導しています。
一つ目は、元気と勢いで押す『熱血キャラ』。二つ目は、数字と理論で話す冷静沈着な『ロジカルキャラ』。三つ目は、「社長、助けてくださいよ〜!」とあえて隙を見せて懐に飛び込む『道化キャラ』です。
相手の「質感」を瞬時に分析し、最適な手札を切る。威厳のある社長には熱く夢を語り、横柄な相手にはあえて下手に出てプライドをくすぐる。これは嘘をついているのではなく、相手が心地よいと思うコミュニケーションを提供するということ。ビジネスというゲームを攻略するための真理であり、相手への最大の敬意でもあるのです。「キャラ作ったら上手くいった」。この一言に尽きます。

月2万円で孤独な社長の伴走者に。熱意で未来をひっくり返すNETSUIの挑戦
──会社の強みや魅力について、教えてください。
現在、当社では「スケダチ」というメンターサービス(相談役事業)を展開しています。最大の特徴は、月額2万円という破格の料金設定です。私が本当に助けたいのは、資金が潤沢な企業ではなく、リソース不足の零細企業や、何より「熱意はあるけど孤独な社長」たちだからです。
経営者は従業員に弱みを見せられず、家族に心配もかけられない。多くの社長が誰にも悩みを言えず、孤独に戦っています。月10万円のコンサルフィーでは、創業期の会社は契約できません。しかし、「飲み会を2回我慢すれば払える金額」なら、一歩を踏み出せる。私が助けたい人たちが、無理なく払える金額がそこだったのです。おかげさまで2025年4月のローンチから既に47社と契約し、年内50社を目指しています。
今後は、この1対1の支援を「点」から「面」へ広げ、起業塾やコミュニティ、BPO事業を展開します。特にBPO事業では、育児や介護などで在宅でしか働けない優秀な方々と企業を繋ぎ、双方にメリットのある仕組みを構築したい。固定費をかけずに売上を上げる仕組みを作ることで、誰もが熱意を持って働ける「熱狂人総活躍社会」を実現することが、私の次の使命です。
才能を言い訳にするな。自分を演じて「60点のプロ」になれ
──若者へのメッセージをお願いします。
声を大にして言いたいのは、「才能や性格を言い訳にして、自分の可能性を諦めるな」ということです。「コミュ障だからエンジニアしかできない」「内向的だから営業に向いていない」なんて、20年そこら生きただけでわかるわけがありません。それはただの思い込みです。
もし苦手な部署に配属されたとしても、腐ってはいけない。「素の自分」で勝負する必要はないのです。苦手なら、それを克服できる「キャラクター」を演じればいい。笑顔が苦手なら鏡の前で練習して「笑顔担当キャラ」を、話すのが苦手なら徹底的に準備して「聞き上手なキャラ」を演じる。そうやって頭を使って演じきれば、「60点」は確実に取れます。
いきなり100点を目指すから苦しくなるんです。60点取れれば、仕事として成立し、お金をいただける「プロ」になれます。60点のプロとして評価されれば自信がつき、その「演技」はいつか「本物」のスキルになる。人生は演技です。配られたカードに文句を言う前に、最高のキャラクターを演じて、自分の未来を切り開いてください。


