「全国レベル」のチームで感じ続けた、埋まらない差と劣等感
──逆境経験について教えてください。
僕の人生で最も苦しかったのは、間違いなくサッカーに打ち込んだ中高生時代ですね。とにかく練習が過酷で、一日40km、フルマラソンと同じ距離を走ることもありました。ですが、肉体的な辛さ以上に、精神的に常に逆境に立たされている感覚がありました。
所属していたチームは、埼玉県でも無敗を誇るほどの強豪で、全国大会出場が当たり前。メンバーのレベルも非常に高く、20人中11人が県選抜という、まさにスター軍団でした。僕自身もレギュラーとして試合に出ていましたが、周りが上手すぎて、常に「自分は下手だ」「チームの足を引っ張ってはいけない」という強烈な劣等感とプレッシャーに苛まれていました。
周りからは「うまいね」と言ってもらえましたが、自分の中では全くそうは思えなかった。少しでも気を抜けば、すぐにポジションを奪われる。勝つことが当たり前の環境で、負けは決して許されない。その中で、常に努力し続けなければならないという状況は、一番苦しかった経験として今でも鮮明に覚えています。
「スキルゼロ」からの逆転劇。理不尽な環境が育んだ”努力の再現性”
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
サッカー経験から学んだのは、個人の力だけでなく、チームとして勝つための役割分担や高い目標設定の重要性です。そして、何よりハードワークへの耐性が身につきました。しかし、僕のキャリアにおける最大の教訓は、社会人になってから得たものです。
料理の世界から一転、20歳でベンチャー企業に入社した僕は、PCの使い方も知らない全くの未経験者でした。そこで出会った上司が、今で言えば完全なパワハラ(笑)。毎日3本の企画書提出を義務付けられ、1本が20〜30枚の資料ですから、来る日も来る日も寝る間を惜しんでパワポと向き合いました。
「いつか見返してやる」という悔しさをバネに、上司の思考を徹底的にトレースし続けた一年半後、突然「もう3本作らなくていい。お前は俺と同じ思考になったから」と言われたんです。そして、初めて一人で任されたのが大型案件でした。プレゼンは一発で通り、その時確信しました。「スキルや才能がなくても、正しい環境で圧倒的な量をこなせば、誰でも必ず結果は出せる」と。この経験が、僕の「努力には再現性がある」という信念の原点です。

“スーパープレイヤー”は要らない。個の成長がチームを強くする組織論
──会社の強みや魅力について、教えてください。
僕たちの強みは、マーケティングや事業戦略といった専門性はもちろんですが、それ以上に「人の育て方」に対する独自の哲学にあると思っています。僕は採用において、いわゆるスーパープレイヤーを求めていません。なぜなら、僕自身がスキルゼロの底辺から這い上がってきたからです。だからこそ、「誰でも僕のレベルにはなれる」と本気で信じています。
大切なのは、現時点でのスキルよりも、成長したいというマインドです。スキルは後からいくらでも身につけられる。必要なのは、本人のやり抜く意志と、成長せざるを得ない環境です。サッカーチームもそうでしたが、個々のレベルが高く、目指す場所が明確であれば、組織は自ずと強くなります。
一人でできることには限界があります。かつては僕も個人の収入だけを考えた時期もありましたが、より大きなことを成し遂げるにはチームの力が必要です。だからこそ、期待をかけ続け、メンバー一人ひとりが成長できる環境を創り出すこと。それが結果的に会社の、そして社会全体の成長に繋がると信じています。
やりたいことがなくても焦らなくていい。20代が磨くべき3つの力
──若者へのメッセージをお願いします。
若い皆さんには、三つのことを伝えたいです。一つ目は、「諦めなければ何でもできる」ということ。二つ目は、「成長したいなら、やらざるを得ない厳しい環境に身を置くこと」。楽な場所にいては、人は決して成長しません。そして三つ目は、「目先のお金を追いかけないこと」。20代のうちは、給料が低くても理不尽な思いをしてもいい。その悔しさをバネにスキルを磨けば、お金は後からいくらでもついてきます。
そして、もし今「やりたいことがない」と悩んでいるなら、焦る必要は全くありません。無理に見つける必要はないし、何より人と比べるのはやめましょう。やりたいことは、僕のように30代で見つかることだってあります。今は、やりたいことを見つけるために、色々なことに手を出してみる期間だと捉えてみてください。その経験のすべてが、未来のあなたを作る大切な糧になるはずです。

