ITスキルゼロからの挑戦。100人規模の組織を襲った「成長の壁」
──逆境経験について教えてください。
前職のWebマーケティング会社でのことです。私が入社した当時は5名ほどの組織でしたが、事業が軌道に乗り、わずか2年半で従業員が100名規模にまで急拡大しました。しかし、その急成長が大きな壁となって立ちはだかったのです。
当時は組織づくりや社内の仕組み化が全く追いついておらず、マネジメントは完全に属人的。営業データも顧客データもバラバラで、まるで個人事業主の集まりのような状態でした。来月から30人、またその翌月には倍の従業員が増えるという状況下で、既存のやり方は完全に限界を迎えていました。
私自身、Excelの関数さえ「触らないでくれ」と言われるほどITスキルがありませんでした。にもかかわらず、このカオスな状況で組織の仕組みづくりを任されることになったのです。何から手をつけていいか分からず、誰にも相談できない。まさに手探りの状態で、巨大な課題にたった一人で向き合わなければなりませんでした。
「止まっている方が死んでしまう」壮絶な20代が育んだ決断力
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
私が未知の課題にも臆せず動けるのは、20代の経験があるからです。当時は店舗経営などを手がけていましたが、それは「止まっているだけでは明日ご飯が食べられない」という非常にシビアな世界でした。生活費が底をつき、ライフラインが止まるような経験もしました。この時、「悩んでいる時間こそが最大のリスク。何もしないことの方が死んでしまう」という感覚が骨の髄まで染み付いたんです。
だから、組織づくりの課題に直面した時も、私の行動はシンプルでした。まず、うまくいっている他社はどうやっているのかを徹底的に調べる。SFA/CRMツールを提供している企業に片っ端から問い合わせ、「他社の成功事例を教えてほしい」と聞いて回りました。良いと思ったものは躊躇なく取り入れる。いわば“パクる”ことから始めたのです。
迷うことは私にとって大きなストレスです。ですから、右も左もわからない状況なら、まず動いてみる。その決断がたとえ間違っていても、行動することで何かが変わる。この経験から、「自分に乗り越えられない試練は訪れない」という確信を得ました。目の前に壁が現れたということは、それは必ず乗り越えられるということ。そう信じているからこそ、どんな逆境でも心が折れることはありません。

顧客の課題に寄り添う「ドラえもん型AI」。非IT業界に革命を起こすフルバリューの真価
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの事業は生成AIを軸に、業務効率化や集客、採用などのサービスを展開しています。最大の強みは、お客様に「AIで何がしたいですか?」とは聞かないことです。多くの中小企業、特に非IT業界の経営者は「AIが重要だとはわかっているが、何をどうすればいいかわからない」という悩みを抱えています。
そこで私たちは、「もし、こんな仕事をしてくれる優秀な社員やアルバイトがいたら採用したいですか?」という問いから始めます。お客様の具体的な課題やニーズを「労働力」として捉え、それをAIでどう実現できるかを私たちが企画・提案する。まさにお客様にとっての「ドラえもん」のような存在でありたいと考えています。
あえてターゲットを非IT業界の企業に絞っているのも、私たちのこだわりです。最新技術に詳しくない方々だからこそ、私たちの提案が大きなインパクトを生み、事業の成長に貢献できると信じています。技術を売るのではなく、課題解決という価値を提供すること。それがフルバリューの使命です。
「どうせ無理」と諦めるな。君には“時間”という最強の武器がある
──若者へのメッセージをお願いします。
若い皆さんが持っている最大の資産は、お金でも人脈でもなく「時間」です。時間さえあれば、なんだってできる。無限の可能性があるのですから、「どうせ自分なんて」「でも、経験がないから」といった言葉で、自分自身に制約をかけるのは本当にもったいない。
できない言い訳を探すのではなく、「どうすればできるか?」を考えてみてください。経験やスキル、協力者、お金といったものは、後からついてきます。一番大切なのは、自分の人生を自分で決めるという意志です。
私自身、お笑い芸人を目指したり、20代で厳しい商売の世界に飛び込んだり、たくさんの遠回りをしてきました。しかし、今振り返れば、そのすべてが必要な経験でした。誰かに言われたからやるのではなく、自分で決めて行動したことに無駄なことなど一つもありません。遠回りこそが、自分だけの価値を創る一番の近道だと信じています。

