自信を打ち砕かれた「圧倒的敗北感」。起業後に立ちはだかった新たな壁
──逆境経験について教えてください。
「自分はできる」という根拠のない自信は、社会の現実を前に何度も打ち砕かれました。最初に就職した求人広告代理店では、自信過剰で入社したものの全く売れず、会社のお荷物に。プライドだけが高く、何もできない自分を知り、人生で2度目の挫折を味わいました。
そこから這い上がり、トップ営業として活躍するようになった後も、安住の地はありませんでした。30代中盤で転職した会社では、市場の変化と優秀な若手社員たちを前に、自分の成功体験が通用しない現実を突きつけられます。私より若いメンバーが大手クライアントを次々と担当していく姿に、圧倒的な敗北感を覚えました。
そして最大の逆境は、満を持して起業した後に訪れました。17年の経験から「採用に困る企業は多い。この事業は必ず成功する」と確信していましたが、現実は甘くありません。世の中のニーズは確実にあるはずなのに、まったく売れない日々が続いたのです。原因は明確でした。認知度がなく、自社のサービスをうまく言語化できていない。つまり、マーケティングの知識が決定的に欠けていたのです。
プライドを捨てて得たもの。一人で戦わないと決めた先にあった光
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
30代で味わった敗北感から、私は一度プライドを捨てる決意をしました。年下の同僚たちに頭を下げて教えを請い、社長とは2年間、毎日のように飲みに行きました。知らないビジネス用語は、知ったかぶりをして後で必死に調べる。苦しく、プライドはズタズタでしたが、学ぶことは本当に楽しかった。この経験がなければ、大手クライアントから絶大な信頼を得ることも、起業という選択肢もなかったでしょう。
そして、起業後に売上が立たなかった逆境からは、「一人で考えない」という最も重要な教訓を得ました。交流会や紹介を通じて多くの経営者と出会う中で、客観的な意見をもらい、なぜ売れないのか、どうすれば売れるのかが明確になっていきました。AIの活用も始め、資料のクオリティは格段に向上しました。
何より大きな変化は、仲間ができたことです。互いの商材を紹介し合ったり、協業したり、時にはただ飲みに行ったり。そうした繋がりが新たなビジネスチャンスを生み、お客様の満足度向上にも繋がっています。困った時に「助けて」と言える仲間がいる。その存在こそが、逆境を乗り越える最大の力になると知りました。

売り手と買い手を知る唯一無二の強み。「採用のパーソナルトレーナー」が描く未来
──会社の強みや魅力について、教えてください。
当社の最大の強みは、私が求人メディアの営業として13年、事業会社の採用責任者として4年、合計17年間にわたって「売り手」と「買い手」の両方を経験してきたことです。メディアの特性を熟知しているからこそ、無駄な広告費を使わせない提案ができますし、採用担当者の苦しみを知っているからこそ、本当に必要なサポートが何かを理解できます。
私たちは自らを「採用のパーソナルトレーナー」と定義しています。応募が来ない、面接がうまくいかない、内定を辞退される…そうした企業ごとの課題を深くヒアリングし、その文化や特性に合わせた完全オーダーメイドの採用戦略を設計・伴走支援します。単なるメディア販売や人材紹介ではなく、採用プロセスそのものを改善し、企業が自走できる力を育む。特に、相談相手が少ない中小企業にとって、頼れるパートナーでありたいと考えています。この経験を、一社でも多くの困っている企業に提供していくことが、私たちの使命です。
「きれいな五角形でなくていい」―自分だけの武器を磨き、仲間と繋がれ
──若者へのメッセージをお願いします。
私が伝えたいのは、「特化した強みを持ち、その自分に賛同してくれる仲間を増やそう」ということです。就職でもビジネスでも、自信をもって何かを発信している人に人は心を動かされます。何かに夢中になったり、一つのことをやり切ったりして見えてくる「得意なこと」、それこそがあなたの武器になります。
周りに合わせて、きれいな五角形の人間になる必要はありません。どこか一つ、鋭く尖らせるほうが面白いし、価値になります。そして、その尖った部分を「良いね」と言ってくれる仲間を見つけてください。仲間はあなたを肯定し、時には間違いを指摘してくれる、自分の現在地を教えてくれる羅針盤のような存在です。自分だけの武器を磨き、それを認め合える仲間と繋がること。それが、これからの時代を豊かに生き抜くための鍵だと思います。

