「世代No.1」からの転落。すべてを奪った“心の病”
──逆境経験について教えてください。
私の人生における最大の逆境は、高校時代に経験した「イップス」です。中学時代、私はありがたいことに「世代で一番有名な選手」と言われ、全国大会で準優勝し、雑誌でも大きく取り上げられていました。しかし、高校に入学して間もなく、突然ボールが思うように投げられなくなったんです。
イップスは心の病。練習すればするほど、ストライクを投げなければと意識すればするほど、体は言うことを聞かなくなりました。バッティングピッチャーを務めても、先輩にボール球ばかり投げて怒られる。その繰り返しで、どんどん症状は悪化していきました。
今まで野球が私の全てで、誰よりも練習してきた自信もあった。それなのに、自分の体と心がバラバラになっていく感覚は、まさに絶望でした。車で言えば「全損」のような状態で、もうピッチャーとして再起するのは不可能だと感じました。結局、私はピッチャーを諦め、野手に転向する決断をしました。人生で初めて味わった、大きな挫折でしたね。
怖いものなんて、もうない。挫折がくれた「折れない心」と「切り替える力」
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
あの時の経験があったからこそ、今の自分があると断言できます。イップスや、朝まで続くような厳しい上下関係を乗り越えたことで、精神的にものすごく鍛えられました。今では「怖いものはない」というのが本音です。どんなに困難な仕事や理不尽なことがあっても、あの頃の苦しさに比べれば何でもない。プライドを捨てて、どんなことにでも挑戦できる強靭なメンタルが身につきました。
もう一つは「切り替えの速さ」です。野球では、エラーをしてもすぐに次のプレーに集中しなければなりません。その経験から、仕事で失敗しても「どうしよう」と悩むのではなく、「じゃあ次はどうするか」と瞬時に思考を切り替える癖がつきました。この切り替えの速さは、目まぐるしく状況が変わるビジネスの世界で大きな武器になっています。
野球を引退し、27歳でビジネスの世界に飛び込んだ時、周りより10年近いビハインドがあると感じました。その差を埋めるために「人の3倍働く」と覚悟を決められたのも、逆境を乗り越えてきたハングリー精神があったからこそだと思っています。
アスリートの力で日本のGDPを上げる。スポーツ界の新たなエコシステム
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちのミッションは「アスリートの力で日本のGDPを上げる」ことです。アスリートに特化した営業支援、採用支援、教育事業を通じて、彼らが引退後も社会で輝ける場を創造しています。
私自身がアスリートとして挫折を経験し、ビジネスの世界で成果を出してきたからこそ、彼らのポテンシャルも、抱える悩みも深く理解できます。多くのアスリートは、引退後のキャリアプランを描けず、燃え尽きてしまうケースが少なくありません。私たちは、そんな彼らにビジネス教育の機会を提供し、一人ひとりの人生設計に寄り添いながら、新たなキャリアへの一歩をサポートしています。
将来的には、私たちの事業を通じてアスリート出身の経営者をたくさん輩出したい。そして、彼らが次の世代のアスリートを支えるスポンサーになったり、スポーツ界に投資したりする。そんな新しいお金の流れ、エコシステムを日本に作ることが目標です。その先には、プロ野球選手になれなかった私自身の夢として、「自分のプロ野球球団を持つ」という大きな夢も描いています。

闇雲に走るな。人生の目的を見据え、今この一瞬を全力で生きろ
──若者へのメッセージをお願いします。
もし今、何かに夢中になっているなら、どんな困難があっても諦めずに本気でやり抜いてほしいです。その経験は、必ず未来のあなたを支える力になります。
一方で、特に学生の皆さんには「ただ闇雲にやるな」と伝えたい。遊ぶにしても、勉強するにしても、「なぜそれをやるのか」という目的を常に意識してください。時間は有限です。人生という限られた時間の中で、自分の行動一つひとつが未来にどう繋がるのかを考え抜いてほしい。
夢ややりたいことが見つからないなら、まずは行動あるのみです。様々な人に会い、新しい情報に触れる中で、きっと道は見えてきます。もし道に迷ったら、私のような大人にいつでも頼ってください。私自身、この一瞬一瞬を全力で生きています。皆さんも自分の人生の目的をしっかり見据えて、後悔のない時間を過ごしてほしいと心から願っています。
