鬼の形相で走り続けた日々。トップセールスが直面した組織の壁
──逆境経験について教えてください。
私が最も逆境と感じたのは、社長になる前の営業課長時代です。とにかくがむしゃらに働いていましたね。当時はまだWeb面談もなく、全てが訪問営業。電車移動の時間すら惜しくて、自転車で街を爆走していました。他の会社の営業さんから「山口さん、鬼の形相でしたよ」と言われるほど、常に時間に追われ、数字を追いかけていました。
チームの売上目標は私が決めていたので、「目標に行かないなら俺が全部取ってくる」というスタンスでした。そのやり方で売上は一定までは伸びましたが、会社の成長速度と求める成果にメンバーがついてこれず、組織には大きな歪みが生まれていました。厳しいノルマや私のやり方に耐えられず辞めていく者、優秀がゆえに独立していく者。優秀なメンバーも苦戦し悩んだメンバーも,次々とチームを去っていく現実に直面し、自分の無力さを痛感しました。一人だけが我武者羅に働くような個人プレーだけでは、組織は成り立たない。その壁にぶつかった時期が、一番苦しかったですね。
「俺がやる」から「チームで勝つ」へ。権限移譲で築いた本当の強さ
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
メンバーの相次ぐ離職という痛い経験から学んだのは、何よりも「チームの重要性」です。私一人が突っ走るのではなく、チーム全体が成長し、定着してくれる組織を作らなければ未来はないと悟りました。そこから、自分のやり方を大きく変える決意をしました。
まず取り組んだのは、徹底した権限移譲です。それまでは私が全ての意思決定に関与していましたが、それではメンバーの主体性や成長機会を奪ってしまう。そこで、二番手のリーダーを育成することに注力し、彼らを通じてチームに指示が伝わる組織構造へとシフトさせました。いわば、私が中心にいる「文鎮型」から、階層のある「ピラミッド型」の組織に変えたのです。自分が前に出るのをぐっとこらえ、メンバーに任せる。この転換によって、個々のメンバーがやりがいを感じられるようになり、組織としての一体感が生まれていきました。この経験が、社長となった今の経営スタイルの礎になっています。

SESの未来を拓く自社サービス。反対を乗り越え「BizBa(ビズバ)」で描く成長戦略
──会社の強みや魅力について、教えてください。
当社の強みは、安定したSES事業を基盤に持ちながら、未来への投資として自社プロダクト開発に果敢に挑戦している点です。社長に就任した時、「自社サービスを絶対に立ち上げる」と心に決めていました。SES事業は人に依存するビジネスモデルであり、それだけでは今後の成長に限界があると感じていたからです。
そこで開発したのが、営業支援ツール「BizBa(ビズバ)」です。しかし、その道のりは平坦ではありませんでした。開発には数千万円単位の投資が必要で、社内からは「そのコストをSES事業に回した方が利益が出る」という反対の声も上がりました。しかし、会社の未来のためには、人に依存しない収益の柱が必要だと説明を続けました。そして今、BizBa(ビズバ)事業はようやく黒字化を達成し、会社の新たな顔となり、会社全体での新規顧客開拓の起爆剤になってくれました。AIの台頭など、時代が大きく変化する中で、私たちは常に挑戦を続け、未来を切り拓いていく組織でありたいと考えています。
努力すれば、人は必ず成長できる。挑戦を恐れる若者へ送るエール
──若者へのメッセージをお願いします。
私が皆さんに伝えたいのは、「努力すれば、人は必ず成長できる」ということです。当社の理念は「大切な人を幸せにしよう」ですが、誰かを幸せにするためには、その人を守れるだけの力を身につける努力が不可欠です。その努力こそが、自分自身を成長させてくれます。成長すれば、できることが増え、給料も上がり、自分の夢を叶える力もついてくる。努力と成長は、常にセットなんです。
「将来やりたいことがわからない」と悩む人も多いと思います。でも、机の上で考えていても答えは見つかりません。大切なのは、まず経験してみること。私自身、就職活動ではIT、営業、アパレルと全く異なる業界を見て、自分の適性を探りました。今はインターンシップなど、社会を体験できる機会がたくさんあります。少しでも興味があるなら、どんどん飛び込んでみてください。体感することでしか、見えてこない世界が必ずあります。挑戦を恐れず、たくさんの経験を積んで、自分だけの道を見つけてほしいと願っています。

