夢を追った東京での極貧生活。所持金300円で食いつないだ日々
──逆境経験について教えてください。
私の人生における最大の逆境は、アパレル店員として東京で暮らしていた時代の極貧生活です。もともとラグビーに打ち込み、歌手になる夢も持っていましたが、現実は厳しく、アパレル業界で働く道を選びました。大阪で経験を積んだ後、東京の店舗へ異動したのですが、当時の手取りは19万円ほど。華やかな世界の裏側で、常にお金に困っていました。
給料日前になると、財布の中身は200〜300円。スーパーで貯めたポイントを使い、5食入りの袋麺を1食ずつ食べたり、もやしにレトルトソースをかけて空腹をしのいだりする日々でした。休日は朝6時から派遣会社に行き、建築現場での荷揚げ作業、夜はガソリンスタンドでアルバイトと、とにかく生きるために必死に働きました。
一番惨めだったのは、派遣バイトの帰りに電車賃がなく、親に電話して「帰れないからお金を振り込んでくれ」と頼んだ時です。この時、「お金がないと、人生の選択肢がここまで狭まるのか」と痛感しました。服が好きで始めた仕事なのに、好きな服を買うこともできない。このままではダメだ、しっかり稼いで、服を売る側から買う側に回ろう。その強い思いが、不動産業界への転職を決意させた一番の動機でした。
人生を変えたワンプレー。嫌々始めたラグビーが教えてくれた「成功体験」の力
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
極貧生活を経験したおかげで、精神的に非常にタフになりました。不動産業界に転職してからも、多少の理不尽なことには全く動じなかったですね。しかし、私の価値観の根底を形作ったのは、さらに遡った小学生時代のラグビー経験です。
実は、始めた当初はラグビーが嫌でたまりませんでした。痛いし、人見知りだった性格もあってチームに馴染めず、毎週日曜日の練習に行くのが苦痛でした。小学校5年生の時、ついに「この試合を最後に辞めよう」と決意したんです。
ところが、その最後の試合で奇跡が起きました。自分より一回りも大きな相手に、会心のタックルが綺麗に決まったんです。コーチや仲間からものすごく褒められ、その瞬間に「これ、めちゃくちゃ気持ちいいやん!」と感じました。たった一つの成功体験が、それまでの「行かなければならない」という義務感を、「行きたい」という意欲に変えてくれたのです。その夜、父と一緒にお風呂に入りながら「もう少し頑張る」と泣きながら伝えたのを、今でも鮮明に覚えています。
この経験がなければ、きっと途中で道を踏み外していたかもしれません。どんなに嫌なことでも、一つの成功体験が物事の見方や取り組み方を180度変えてくれる。この学びは、その後の人生のあらゆる局面で私を支えてくれました。

不動産のその先へ――人と社会をつなぐ仕事を
──会社の強みや魅力について、教えてください。
弊社の強みは、二つあります。一つは、私自身がこの業界で11年間培ってきた豊富な知識と広範なネットワークです。一般的な仲介会社では探しきれないような家主様の情報や管理会社の裏事情まで把握しているため、お客様にとって本当に最適な物件をご提案できます。
もう一つは、大手企業にはない、一人ひとりのお客様に寄り添う手厚いサポートです。私たちは駆け出しの会社だからこそ、一人の営業担当が抱える案件数を絞り、お客様一人ひとりにじっくりと時間をかけることができます。人生の大きな決断である不動産取引において、心から納得していただけるよう、親身になってお手伝いすることを最も大切にしています。
そして、会社としては「不動産事業を通してより良い日本を」というビジョンを掲げています。事業で得た収益の一部を、子どもたちの未来を育むためのボランティアや慈善活動に充てていきたいと考えています。その一環として、現在は京都の中学校で「探求学習」の外部講師として、子どもたちが自らの「なぜ?」を追求するお手伝いをしています。彼らの柔軟な発想や高い志に触れるたび、教えに行っているつもりが、逆に多くのことを学ばせてもらっていますね。
立ち止まってもいい。進む力は、必ずあなたの中にある
──若者へのメッセージをお願いします。
将来何がしたいかわからないと焦る必要は全くありません。私自身、10年前に今の自分を全く想像していませんでした。大切なのは、無理に将来を決めることではなく、今、自分が興味を持っていることに全力で取り組んでみることです。
その道中で、良いことも悪いこともたくさん経験するでしょう。でも、その一つひとつの経験が、必ず次の道に繋がっていきます。どんな道を選んだとしても、後から「この道で良かった」と思えるように努力する。その「選んだ道を正解にする努力」さえ忘れなければ、どんな経験も無駄にはなりません。
最近の若い方々は本当に優秀だと感じています。私が出会う中学生や学生起業家を見ても、自分がその年齢だった頃とは比べ物にならないほど、しっかりとした考えを持っています。どうか、そのキラキラした目を失わずに、色々なことにチャレンジして、甘いも酸いも存分に味わってください。その道のりの先に、きっとあなただけの「正解」が見つかるはずです。

