自分の足で立たないと──依存心と決別した、20代のターニングポイント
──逆境経験について教えてください。
私のキャリアの原点は、21歳での最初の結婚にあります。当時は社会に出る前に家庭に入ることを選び、どこか他者に依存する気持ちがあったかもしれません。しかし、結婚直後にパートナーの仕事に大きな変化が訪れ、私も働かざるを得ない状況になりました。彼のキャリアチェンジを間近で見る中で、私の中に「自分のキャリアは自分で積み上げるべきだ」という強い思いが芽生えたのです。
27歳頃に離婚を経験したのですが、これが私にとって最大のターニングポイントでした。
誰かに決定を委ねるのではなく、自分で決めること。そのほうが絶対にパフォーマンスは上がるし、何より楽しい。この出来事を通じて、それまでのどこか他人任せだった自分と決別し、「自己決定力」を持って生きることの重要性を痛感しました。自分の足でしっかりと立つこと。それが、その後のキャリアを切り拓く上での揺るぎない指針になったのです。
一人では何もできない。チームで乗り越えることが、私の原点に。
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
自己決定力に目覚めた後も、挑戦は続きました。特に、研修講師として独立し、子育てをしながら働いていた時期は、物理的な時間に追われる日々。子供を寝かしつけてから研修コンテンツを作成するため、常に睡眠不足との戦いでした。この経験から学んだのは、「一人では何もできない」ということ、そして「チーム」で乗り越えることの大切さです。
出産を前に、夫と「家族」というチームの在り方について深く話し合いました。彼に望むのは、残業して収入を増やすことか、それとも定時で帰り、子育てにしっかり参画することか。私たちの答えは後者でした。以来、子どもの教育方針から日々の送迎まで、役割を分担し、チームとして協力しています。
この「家族」というチームでの取り組みは、子どもの教育面においても大きな成果をもたらしました。私自身、起業して立ち上げたばかりで多忙な中でも、家族全員で目標に向き合い、役割を分担してサポートし合った結果、本人が強く望んでいた日本最難関である灘中学校に入学することができました。この経験を通じて、チームとしての協力が、個人の夢の実現を力強く後押しすることを実感しました。
また、この経験は現在の経営にも生きており、「合意・機会・環境」という3つの要素を何よりも大切にしています。目指すビジョンへの「合意」を取り、挑戦できる「機会」を提供し、それを継続できる「環境」を整える。家族も会社も、この原則がチームを成長させると信じています。

人の力を信じ、仕組みで支える──“働くことが楽しい社会”を神戸から。
──会社の強みや魅力について、教えてください。
当社は、経営者のミッション・ビジョンを軸に、それぞれの役割に対する期待を明確にし、個人の成長を組織の持続的な発展へと導く人事評価制度の構築と、バックオフィス業務の棚卸から、業務フローの可視化、ボトルネックの抽出、仕組み化による業務改善の提案・業務の標準化までノンコア業務を代行するBPO事業の2つを軸に展開しています。一見すると異なる事業ですが、「人の可能性を信じ、それを最大化する」という点で深くつながっています。企業のビジョンを反映した評価制度で組織と社員の成長を促し、BPOでコア業務に集中できる環境をつくる。そうして個人から企業全体のパフォーマンス向上を支援しています。
私自身、営業、経理、講師、経営と様々な職種を経験してきたゼネラリストです。専門家ではありませんが、全体を俯瞰し、点と点を繋いで仕組みを構築する力は誰にも負けないと自負しています。この「人×仕組み」の視点を強みに、今後は特に在宅医療業界に特化したBPOサービスにも力を入れていきたいと考えています。そして、私が愛するこの神戸の街で、仕事を通じて豊かなコミュニティを築き、「働くことが楽しい」と思える社会の実現に貢献していくことが、私の大きなビジョンです。

もっと欲深くなっていい。仕事も、家庭も、人生も、全部取りに行こう。
──若者へのメッセージをお願いします。
特に、キャリアとライフイベントの間で悩む若い女性たちに伝えたいのは、「もっと欲深くなっていい」ということです。仕事も、結婚も、出産も、子育ても、何かを諦める必要なんてありません。全部を取りに行ってください。なぜなら、皆さんにはそれができる力が備わっているからです。
女性は、家事や育児を通して、複数のタスクを線で繋いで考える能力に長けています。その力は、仕事においても必ず大きな武器になります。社会にはまだ様々なギャップが存在しますが、それに腹を立てるエネルギーを、自分自身の可能性を切り拓く力に変えてほしい。時には静かに、冷静に状況を見極め、内には「負けない!」という強い意志を持つ。そうやってしなやかに、そして貪欲に、自分だけの人生を掴み取っていってほしいと心から願っています。
