息子の涙が原点。「勝つため」ではない、スポーツ本来の喜びを取り戻す挑戦
──逆境経験について教えてください。
私がNPO法人の活動を推し進めていく中で、大きな出来事の一つに息子の一件があります。当時、息子は野球チームに所属し、キャプテンも務めていました。しかし、指導者からの過度なプレッシャーに心が折れてしまい、ある朝、泣きながら「お腹が痛いから練習に行きたくない」と訴えてきたのです。それは単なる腹痛ではない、心の悲鳴でした。息子が野球を続けている姿を見ながら、かねてからぼんやりと感じていたスポーツ指導に対する疑問が段々と明瞭になり、活動の強い後押しとなりました。
子どものスポーツ環境を見渡すと、「みんなで楽しくやろう」と始まったはずのチームが、いつの間にか勝利至上主義に陥ってしまうケースが後を絶ちません。トップレベルの世界を知る私から見ても、育成年代における過度なプレッシャーは、子どもたちの心身を蝕み、燃え尽き症候群や怪我のリスクを高めるだけです。スポーツが、その子の人生を豊かにするものではなく、むしろ窮屈にしてしまう。この現状を目の当たりにし、「これは違う」と強く感じました。
また、当初は写真事業を行う合同会社の一部門としてスポーツクラブを始めましたが、営利目的と見なされ、公共の体育館を借りにくいという壁にも直面しました。利益追求ではなく、純粋に社会貢献としてこの活動を広げたい。その思いから、NPO法人として「アラドスポーツ」を設立し、本格的に始動することを決意したのです。
「何になるか」より「どう生きるか」。反骨精神が育んだ、道を切り拓く力
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
私の根底には、幼少期からの環境が大きく影響しています。教師や牧師など、教育や福祉に携わる家族に囲まれて育ち、「なぜそうなるのか」と物事の本質を問う思考が自然と身につきました。特に、牧師である父から小学生の時に言われた「何をして生きるかではなく、どうやって生きるかを考えなさい」という言葉は、私の人生の指針となっています。
一方で、安定した道を望む母からは「囲われている」と感じることもあり、決められたレールの上を歩くことへの反発心も人一倍強かったと思います。その反骨精神が、役者、アナリスト、そして起業家と、常に新しい世界へ飛び込む原動力になりました。
これらの経験を通じて学んだのは、環境の変化に抗うのではなく、その時々で自分にとってのベストな選択を積み重ねていくことの重要性です。特に、世の中に「足りないもの」や「これは違う」と感じる課題があるなら、誰かがやるのを待つのではなく、自らが担い手になる。その繰り返しが、今の私を創り上げています。文句を言うだけで行動しない人が多い世の中だからこそ、私は黙っていられないのです。

勝つためではなく、成長するためのスポーツを
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの最大の強みは、「勝利」ではなく「楽しむこと」を第一に掲げ、一人ひとりの成長に寄り添う教育的視点を持ったスポーツ指導を徹底している点です。プロを目指す厳しい環境はすでに多く存在しますが、運動が苦手な子や、ただ純粋にスポーツを楽しみたい子たちの受け皿が、今の日本には圧倒的に不足しています。私たちは、その広いパイを救う存在でありたいのです。
この理念は、既存のスポーツ団体からは「煙たい存在」だと思われることも少なくありません。しかし、勝利至上主義に疑問を持つ保護者の方々や、子どもたちの健全な育成を願う行政などからは、逆に関心を寄せていただいています。
今後の展望としては、この活動モデルを現在の拠点である海老名市だけでなく、日本全国に広げていきたいと考えています。そのためには、私たちの理念に共感してくださる指導者や活動場所、そして何より「この活動は素晴らしい」と思ってくれる支持者の声が必要です。企業様とも連携し、福利厚生施設を活用させていただくなど、社会貢献の一環として共に子どもたちの未来を育んでいけたらと願っています。スポーツを通して、誰もが心豊かになれる社会を構築することが私たちの最終的なゴールです。
挑戦なくして成長なし。未来は、自分で切り拓くもの
──若者へのメッセージをお願いします。
若い皆さんには、「いっぱい挑戦して、いっぱい失敗してください」と伝えたいです。今、目の前にあることが、あなたの人生の全てではありません。失敗は決して無駄ではなく、むしろ自分の可能性を広げ、未来の選択肢を増やしてくれる貴重な糧となります。
特に、キャリアに悩む女性の方々へ。結婚や出産は、キャリアの足を引っ張るものでは決してありません。むしろ、それらは女性にしかできない尊い経験であり、自身の感性や視野を大きく広げてくれるチャンスです。失うものに目を向けるのではなく、その経験から得られる新たな価値をどう活かしていくかを考えてみてください。そうすれば、何も怖いことはありません。
未来は誰かが用意してくれるものではなく、自分自身で創り出していくものです。今が全てだと思わず、無限に広がる可能性を信じて、自分の人生を切り拓いていってください。

