「俺にできて、君らにできんわけない」— 就職経験ゼロ社長の大きな誤算
──逆境経験について教えてください。
ミュージシャンからの転身だったので、社会人経験が全くなかったことが最大の逆境でした。起業して社員を採用し、なんとか現場が回り始めたものの、期待するようなパフォーマンスが出ない。いつしか社員との関係は「親方と弟子」のようになってしまい、私のやり方を一方的に押し付ける形になっていました。
その結果、チームは何度も崩壊し、社員が次々と辞めていくという状況を繰り返しました。売上が上がらないことよりも、人が自分の思うように動いてくれない、組織として機能しないという事実が、何よりも精神的に辛かったですね。
社長は舞台監督ではない。自己表現を手放し、社員を主役にする決意
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
何度もチーム崩壊を経験したことで、ようやく自分のやり方が間違っていると認めざるを得ませんでした。そこから経営やマネジメントについて、書籍はもちろん、現場でうまくいっている他の経営者の方々を観察して必死に学び直したんです。そこで気づいたのは、「社長は社長の仕事をする。現場のマネジメントは別のリーダーが担う」という役割分担の重要性でした。
それまでの私は、「自分がやったほうが早い」というもどかしさから、すべてに口を出していました。それをぐっと堪え、社員が主体的に動けるように辛抱強く育てる方針へと大きく転換したのです。会社は、社長である自分の自己表現の舞台ではない。社員一人ひとりが主役になれる環境を作ることこそが、経営者の本当の役割なのだと痛感しました。
課題解決の「ヒアリング会社」から、共に創るサービス主体者へ
──会社の強みや魅力について、教えてください。
私たちの最大の強みは、お客様の課題の本質が見えるまで徹底的にヒアリングすることです。単にシステムを導入するのではなく、業務プロセスや日々のオペレーションを深く理解し、最適な改善策を設計していく。特に、大阪に根ざす工務店や製造業、福祉といったレガシー産業が抱える複雑な課題を丁寧に紐解き、お客様と二人三脚で解決していく伴走スタイルで信頼を築いてきました。
そして現在、私たちは単なるコンサルティング支援者から、もう一歩先のステージへ進もうとしています。それは、お客様と共同で新しいサービスや事業を共に立ち上げる「サービス・事業主体者」へのシフトです。お客様の課題解決だけでなく、パートナーとして、より深く事業にコミットしていきたいと考えています。

人生は長い。おぼろげな夢と「素直さ」が未来を拓く
──若者へのメッセージをお願いします。
これからの時代を生きる若い皆さんには、まず「夢を持つこと」を大切にしてほしいです。人生100年時代、道のりは長いですから、おぼろげでもいいので「こうなったらワクワクするな」という未来を描いてみてください。「オーロラを何度も見たい」といった、個人的な夢で構わないんです。
そして、その夢を実現するために最も大切なのは「素直さ」だと私は思います。私が尊敬する成功している経営者ほど、人の話に真摯に耳を傾け、腰が低い。あらゆる出会いや学びを素直に吸収する姿勢が、彼らを成長させているんです。皆さんも、目の前の学びに素直に向き合い、一歩ずつ成長を重ねていってください。その積み重ねが、いつか必ず大きな夢の実現に繋がると信じています。
