独立の夢、そして信頼していた師からの裏切り
──逆境経験について教えてください。
大学時代、アルバイト先の焼肉屋で経営の面白さに目覚め、「いつか自分で何かを成し遂げたい」という想いを抱きました。そのために必要なのはまず営業力だと考え、卒業後は「東京で、法人向け、新規開拓営業」ができる清掃・衛生サービス系のフランチャイズ企業に入社しました。がむしゃらに働き、2年目には全国でダントツのトップセールスを記録しました。
順風満帆なサラリーマン生活の中、ある経営者との出会いが私の運命を大きく変えます。会員制のレストランで出会ったその方は、圧倒的なカリスマ性と営業力を持ち、私にとって憧れの存在となりました。家族ぐるみの付き合いをする中で、彼から経営のノウハウを学び、私は彼を師と仰ぎ、独立への夢を膨らませていきました。
そして25歳の時、ついに会社を設立。結婚し、妻の妊娠も発覚したタイミングで、会社に退職願を提出しました。まさにこれから新しい人生が始まるという希望に満ち溢れていた矢先、事態は急転します。師と信頼していたその経営者が、実は詐欺師だったことが発覚したのです。
彼に勧められるがままに出資や投資を繰り返した結果、私の貯金はすべて失われていました。会社を辞めることは既に伝えてしまっている。子供がもうすぐ生まれるのに、お金も、仕事も、信じていた人との繋がりも、すべてを失ってしまった。どうしようもない絶望感に襲われ、まさに路頭に迷うしかありませんでした。
どん底で掴んだ「できること」という光
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
全財産を失い、途方に暮れていた私ですが、幸いなことにまだ前職の会社には在籍していました。最後の挨拶のために社長室を訪れたとき、私は正直にすべてを打ち明けました。「お金もやることも、何もかもなくなってしまいました」と。
すると社長は、私を叱咤激励した後、こう言ってくれたんです。「やりたいことじゃなくて、まずはお前にできることをやれ。金がないと何も始まらない。うちの商品を売ってこい」と。そしてその場で、本来は存在しなかった代理店制度を私一人のために作ってくれたのです。
一度は退職を決意し、送別会まで開いてもらった会社に戻るのは、正直、複雑な気持ちでした。しかし、この温情に報いるしかないと覚悟を決め、再び営業マンとしてゼロからスタートしました。結果、これまでの経験とノウハウを活かし、トップセールスだった頃の4倍もの成績を叩き出すことができたのです。この時の経験が、今の私の礎となっています。
詐欺被害は、もちろん辛い経験でした。しかし今では、あのタイミングで経験できて本当に良かったと思っています。あの若さで、人を安易に信じることのリスク、一つの決断がすべてを失うことに繋がりかねない経営の厳しさを、身をもって学べたからです。あの一件で、人をしっかり見る目が養われました。数百万の損失は、そのための「安い勉強代」だったと心から思っています。

仲間と拓く空の開拓者。「義理人情」が支える技術力
──会社の強みや魅力について、教えてください。
前職の代理店として再起を果たした後、2017年に新たな仲間と共に創業したのが、現在のドローン・フロンティアです。私たちの主な事業は、ドローンを活用した建物の外壁調査。従来、足場やゴンドラが必要だった調査を、ドローンと赤外線カメラで代替することで、安全性と効率を飛躍的に向上させています。
当社の強みは、大きく分けて「技術」と「人」にあります。技術面では、撮影からAIによる画像解析、報告書作成まで、すべてを自社で一貫して行えるワンストップ体制が特徴です。特に解析システムは自社開発にこだわり、今では月に5つほどのペースで新しいソフトが生まれるほど。これにより、国内トップクラスの処理能力とスピード、精度を実現しています。
そして、その技術力を支えているのが「人」の力です。創業時から大切にしているのは、「義理人情を大切にし、謙虚と感謝の気持ちを忘れない」という姿勢。ドローンがまだ珍しかった創業期、仕事に繋がらなくても話を聞いてくださった方、紹介してくださった方々への感謝を、私たちは決して忘れません。この精神は今も全社員に受け継がれており、お客様からの信頼に繋がっていると自負しています。
夢がなくてもいい。自分の「欲」に素直になれ
──若者へのメッセージをお願いします。
これからの時代を担う若い皆さんには、「チャレンジ精神」と「感謝の気持ち」という二つを大切にしてほしいと思っています。今は賢くスマートに物事を進めようとする風潮がありますが、時には泥臭く、がむしゃらに何かに打ち込む経験が、必ず将来の糧になります。失敗を恐れず、やりたいと思ったら何でも挑戦してみてください。
そして、どんな出会いや経験にも感謝の気持ちを忘れないでほしいです。私自身、どん底に落ちた時に手を差し伸べてくれた方々への感謝があったからこそ、今があります。一つ一つのご縁が、未来の自分を助けてくれるかもしれません。
「やりたいことが見つからない」と悩んでいる人も多いと聞きます。でも、焦る必要は全くありません。何を隠そう、私自身が今でも「これをやりたい」という明確なものはないんです。それでもいいと思っています。大切なのは、無理に夢を探すことではなく、自分の「欲」に素直になること。それが「お金を稼ぎたい」でも「楽しく過ごしたい」でも構いません。
私の場合は、その欲が「誰と時間を過ごすか」という一点に行き着きました。自分の周りにいる夢を持った仲間を応援し、共に時間を過ごすことが、私にとっての幸せです。皆さんも、まずは自分の心に正直に向き合ってみてください。そうすれば、きっと進むべき道が見えてくるはずです。

