コロナ禍で資金ショート寸前。数千万円の借入と絶望の淵
──逆境経験について教えてください。
独立当初は、大手飲食情報企業で培ったノウハウを活かし、飲食店向けのWeb制作や広告代理店事業を展開し、順調なスタートを切りました。しかし、次第に「もっと大きな課題を解決したい」という想いが募り、フードロス問題に着目したアプリ「フードパスポート」を開発。メディアにも多数取り上げられ、上場を目指して資金調達に奔走する日々でした。
しかし、まさに増資が決まる直前の2020年1月、新型コロナウイルスがすべてを暗転させます。飲食店から客足が途絶え、事業の前提が崩壊。気づけば借入金は数千万円に膨れ上がり、会社の預金残高は数百万円。翌月の売上見込みはわずか90万円という、資金ショート寸前の危機に陥りました。さらにコロナ禍が落ち着き始めた2022年、今度は主力だったデリバリーコンサル事業の売上が激減。人員を増やした後だったため、月400万円もの赤字を出すという二度目の逆境に見舞われました。
崩れた組織を立て直した、理念経営の力
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
一度目の危機から学んだのは、「適正利益の確保」です。それまでは、利益を投資や節税に回すことばかり考えていましたが、経営には上り坂、下り坂、そして「まさか」の坂がある。その「まさか」に備える内部留保がなければ、会社も従業員も守れないと痛感しました。
二度目の危機では、組織のあり方を根本から見直しました。急成長期に条件やスキルだけで採用した結果、会社が傾くと組織はあっけなく崩壊しました。この経験から、理念や価値観を共有することこそが強い組織の礎だと学び、経営理念や行動指針を策定。今ではアルバイトの採用時にも2時間の理念研修を行い、価値観の合う仲間と働く文化を築いています。利益の出し方も「①変動費の見直し → ②固定費の見直し → ③売上向上」という順番を徹底。この原則に従い、オフィスを解約するなど大胆なコストカットも断行しました。

理念でつながる組織、個に任せる経営
──会社の強みや魅力について、教えてください。
最大の強みは、自律性の高い組織文化です。かつては些細なメール一本でも私の承認が必要でしたが、今では店長やマネージャーが責任と権限を持ち、現場で意思決定をしています。私が知らない間に、営業時間が変わっていることもあるほどです。一人でできることには限界がありますが、理念を共有する仲間を信じて任せることで、事業のスピードは格段に上がりました。
私たちのミッションは、前職勤務時代から心に刻んでいる「日本の食文化を守り育てる」ことです。日本の外食は、世界的に見ても圧倒的に品質が高く、安価で、素晴らしいサービスを提供しています。この文化を未来に繋ぐためにも、まずは飲食業界の労働環境を他業界の平均レベルまで引き上げ、若者が夢を持って働ける場所にしたい。その志が、事業の原動力になっています。

チャレンジの先に失敗は存在しない。“チャレンジ”がすべてを育てる
──若者へのメッセージをお願いします。
人生を通して、ぜひチャレンジし続けてほしいと思います。私が社員にいつも伝えているのは、「チャレンジの先に失敗はない」ということです。チャレンジした先には、「成功」するか「成長」するかの二択しかありません。
何かのプロジェクトで結果がでなかったとしても、次はどうすれば結果を創れるかを学ぶ「成長」の機会になります。
そして、目の前に現れる壁は、必ず今の自分に乗り越えられる高さのものしかやってきません。絶対にクリアできないような無茶な課題は、人生において与えられないのです。だから「無理だ」と諦めずに、その壁を乗り越える方法を考え、行動してほしい。その一歩一歩が、未来のあなたを創っていきます。
