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【PotatoWorks 寺西 実加】「協調性ゼロ」と言われた私が、人事のプロになった理由。遠回りの先にあった、本当の強さ。

2025/10/24

Profile

寺西 実加

PotatoWorks 代表

奈良県生まれ。高校卒業後、約3年間のフリーター生活を経て結婚・出産。22歳でシングルマザーとして自立を決意し、地元の銀行に就職。その後、通信系ベンチャー企業で未経験から人事キャリアをスタートさせ、9年間で従業員数を40名から180名へと成長させる中核を担う。複数社で人事や採用コンサルティングの経験を積んだ後、人事コンサルタントとして独立。現在は「PotatoWorks」の代表として、中小企業を中心に組織の成長を支援している。
自らのコンプレックスや理不尽な経験を乗り越え、独自のキャリアを切り拓いてきた寺西氏の物語は、多くの若者にとって「自分らしく働く」ためのヒントに満ちている。

「私が全てだ」と思っていた。孤独とコンプレックスの中でもがき続けた日々

──逆境経験について教えてください。
私のキャリアの原点は、幼少期に形成された「自分軸」の強さにあります。良く言えばリーダーシップがある、悪く言えば協調性がない子供で、自分の考えを信じて突き進むあまり、教師からは扱いにくい児童と言われてしまい、親を悲しませていました。転校先では閉鎖的な村社会に馴染めず、「みんなと何かをすることはできない人間なんだ」というレッテルを自分に貼ってしまったんです。

社会に出てからも、その生きづらさは続きました。22歳でシングルマザーになり、「とにかく子供を食べさせないと」という一心で就職した銀行では、年上の同僚たちから「なんであんな子を採ったの?」と陰口を叩かれ、いじめも経験しました。

一番の壁にぶつかったのは、ベンチャー企業で人事の仕事を任された時です。未経験から必死で知識をつけ、仕組みをゼロから作り上げてきた自負がありました。しかし、部下を持つと、そのプライドが邪魔をします。情報共有を嫌い、一人で仕事を抱え込み、チームとして成果を出すことができなかった。結果、素直で周りと協力できる部下の方が評価され、「こんなに頑張っているのになぜ」と、強烈な悔しさを味わいました。挙句の果てには、上司から「あなたが高卒だから給料は上げられない」とまで言われ、学歴コンプレックスにも深く苦しみました。自分の力だけではどうにもならない壁に、何度も打ちのめされた日々でしたね。

転機は脱出ゲーム。人生を変えてくれたのは、いつも「人」との出会いだった

──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
頑なだった私の考え方が変わるきっかけは、意外なところにありました。それは、会社のメンバーと参加した「脱出ゲーム」です。密室から脱出するという一つのゴールに向かって、みんなで知恵を出し合い、協力する。その中で「チームで目標を達成するって、こんなに楽しいんだ」と、生まれて初めて心から実感できたんです。頭では理解していた「チームワークの重要性」が、ストンと腑に落ちた瞬間でした。

また、理不尽なトラブルを部下と共に乗り越えた経験も、私たちを本当のチームにしてくれました。経営と現場の板挟みになり、私たちが採用した大切な新入社員を理不尽に否定された時、悔しさで震えました。でも、そこで感情的になるのではなく、「私たちが大人になろう」と部下と結束したことで、一人では乗り越えられない壁を越える強さを知りました。

振り返れば、私の人生のターニングポイントには、いつも「人」がいました。未経験の私に人事というチャンスをくれた社長。経営者の視点を教えてくれた友人経営者。厳しくも愛のある言葉で叱ってくれた上司。怒られたり、チャンスを与えてもらったり、新しい世界を見せてもらったり…人との関わりがなければ、今の私は絶対にありません。かつては人を信じられず、一人で戦おうとしていましたが、結局、自分を変えるきっかけをくれるのは、いつも「人」なのだと学びました。

「多様性を可能性に」。自身の経験を強みに、人間らしさを支える人事パートナーへ

──会社の強みや魅力について、教えてください。
現在、私は「PotatoWorks」という屋号で、10名から50名規模の中小企業を中心に、人事のコンサルティングや業務支援を行っています。採用や教育、評価制度の設計など、経営者の方と壁打ちしながら、その会社に合った「人事機能」を一緒に作っていく仕事です。

私の事業の根底にあるのは、「多様性を可能性にしたい」という想いです。私自身、シングルマザーであることや学歴のことで、不当な評価を受けてきました。だからこそ、バックグラウンドや肩書で人を判断するのではなく、その人の持つ「人間らしさ」や個性を組織の力に変えていきたい。その信念が、私のサービスの最大の強みだと考えています。

「人事」というと、人を管理するセクションと捉えられがちですが、私は「組織の機能」そのものだと考えています。社員一人ひとりが自分らしく輝ける仕組みを整えることで、組織はもっと強くなれる。いじめる人やマウントを取る人も、見方を変えれば、それはその人の「生存戦略」の表れです。その背景を理解し、誰もが安心して働ける環境を整えることが、私の使命です。今後は法人化も視野に入れ、より多くの企業の成長を支えていきたいですね。

不安な20代へ。想像以上に、人生は面白いよ

──若者へのメッセージをお願いします。
もし今、将来に不安を感じている人がいるなら、「20歳の頃に想像していた40歳より、よっぽど楽しい人生が待っているよ」と伝えたいです。私自身、「こうあるべきだ」という社会の価値観に縛られて苦しんだ時期がありましたが、目の前のことに必死で取り組んできた結果、想像もしていなかった素敵な今があります。

もし20歳の頃の自分に会えるなら、「もっと人を信用して生きていきなさい。そんなにトゲトゲしなくて大丈夫だよ」と言ってあげたいですね。特に、キャリアや生き方に悩む女性には、「『べき論』に惑わされず、自分がどうありたいか、何が幸せかを大切にしてほしい」と伝えたいです。

何をしていいかわからないなら、まずは「目の前で困っている人を助ける」ことから始めてみてください。それは、事業の本質と同じです。誰かの役に立つことで、自分の価値がわかり、進むべき道が見えてきます。近道を探したくなる気持ちもわかりますが、人生は遠回りした先にこそ、面白い出会いや学びがあります。遠回りを恐れず、たくさんの経験をしてください。私達大人が、これからの社会を担う若い方に未来には希望があるよと思ってもらえるような世界を作って、体現していきます。

応援しています。

 

PotatoWorks

設立 非公開
資本金 非公開
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 中小企業向けの人事コンサルティング
人事業務のアウトソーシング(採用、教育、人事制度設計など)
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