予期せぬ出来事から始まった、計画外のキャリアチェンジ
──逆境経験について教えてください。
私のキャリアは、大学三年生の時に父親が脳の病で倒れたことから大きく変わりました。当時、内定が決まっていましたが、一人っ子だったこともあり、地元である千葉県銚子市に戻って一年間アルバイトをすることになったんです。同世代の友人たちが次々と就職していく中で、一度レールを外れたことは、私にとって大きな転換点でしたね。
その後、東京へ上京し、ハローワークで仕事を探しました。たまたま目に留まったのは、洋書販売会社。未経験でもOKという条件で、面接を経て入社が決まりました。そこでの仕事は、大学の研究室への飛び込み営業です。真夏の暑い日にスーツを着て、全国各地の研究室を訪ね歩きました。突然訪問するので、怒られることも少なくありませんでしたね。一年ほど飛び込み営業を続け、既存のお客様の担当に変わった後も、競合との差別化を図りながらどう受注を増やすか、常に試行錯誤の日々でした。
その会社が事業を畳むことになり、次に選んだのが大手保険会社です。FP資格を取得していたこともあり、当時「第二創業期」として若い世代の採用を始めたという広告を見て応募しました。しかし、同期はいましたが、それまでキャリアがある人しかいなかったため、先輩がおらず誰も教えてくれない環境でした。すべてが手探りで、これもまた一つの逆境だったと感じています。しかし、私は「深く考えてもしょうがない」という性格なので、困難に直面しても次の一手を考えることに集中していました。振り返ると、私の人生は「常に逆境」の連続ですが、それは決してネガティブな意味ではありません。
「深く考えず、次に何をするか」——逆境を乗り越える独自のマインドセット
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
「深く考えてもしょうがない、事実は変わらない」というのが私の根底にある考え方です。例えば、悲しいことや嫌なことがあったとしても、いつまでもそれに囚われていても状況は好転しません。それよりも、「次に何をしようか」「できることをやるしかない」と前向きに考える方が、結果として良い方向に進むことが多いと感じています。
また、周りに期待しすぎず、「自分のことは自分の責任」と捉えるマインドも、これまでの経験で培われました。小学校や中学校時代は特に目標もなく、淡々と過ごしていましたが、父親の病を機に一度計画していたレールから外れたことで、そこからリカバリーするというよりも、「もうこの道を突き詰めるしかない」という覚悟が生まれたのかもしれません。
保険会社で営業経験を積んだ後、保険営業マンに営業ノウハウを教える会社で、ウェブマーケティングの責任者を務めました。そこで初めてアフィリエイト、SEO、リスティング広告といったウェブマーケティングの専門知識を習得したんです。会社が副業OKだったため、先輩たちのウェブマーケティングを支援するうちに「自分でもやってみたら?」と勧められ、なし崩し的に独立しました。
この「とりあえずやってみる」という行動力は、常に大切にしています。最近ではAIの進化が著しいので、AIについても自分でコードを書いてみたり、色々なエージェントツールを試してみたりと、積極的に触れています。世の中の流れを肌で感じ、新しい技術を自ら実践することで、常に最善の「仕組み作り」を追求できると考えています。

顧客の声に応え、事業を多角化。「仕組み作り」に特化したWAOCONの強みと未来
──会社の強みや魅力について、教えてください。
株式会社WAOCONの最大の強みは、営業担当者がいない「紹介ベース」のビジネスモデルです。お客様は友人・知人からの紹介でいらっしゃるので、弊社がお客様を選ぶことはありません。そのため、業種や業態、規模も本当に様々で、これから創業される方から上場企業まで、幅広いお客様の課題解決に携わっています。
お客様からの声に耳を傾け、ニーズに応える形で事業を広げてきたことも特徴です。「ウェブ広告をやりたいけど、ホームページも作れないか?」「ECサイトを立ち上げたい」「動画制作やシステム開発もお願いしたい」といったご要望に対し、社内外のフリーランスの仲間とチームを組み、マーケティング、システム開発、クリエイティブといった形で事業を多角化してきました。現在の当社の核は「仕組み作り」であり、お客様のビジネスの基盤を総合的に支援しています。
ヒアリングからクロージングまで全て私が担当しており、1時間の商談でどこまでお客様の課題を具体化し、解決策を提示できるかが勝負です。スピード感を重視することもあれば、じっくりと時間をかけて提案資料を作り込むこともあります。最近では、AIを活用して補助金申請業務を自動化する仕組みも構築しました。これにより、お客様にはより安価で質の高いサービスを提供できるようになっています。
今後の展望としては、これまでは「誰かのものを作る」ことが多かったのですが、今後は自社オリジナルのコンテンツやサービスを増やしていくことに注力したいと考えています。将来的には、ホールディングスのような形で各マネージャーがそれぞれの事業を運営し、会社全体を大きくしていきたいという構想もあります。現状に満足することなく、常に「完成形はない」という視点で、事業をさらに進化させていきたいですね。
「動けば何かが見つかる」――出会いを通して人間性を高める
──若者へのメッセージをお願いします。
僕自身、若い頃は夢や目標が全くありませんでしたし、今でも「これだ!」という大きな目標があるわけではありません。だからこそ、伝えたいのは「自分のやりたいことを好きにやったらいい」ということです。周りを見ても、自分の好きなことを楽しんでやっている人は、本当にキラキラして見えます。
もし、夢ややりたいことが見つからないという人がいたら、無理に探す必要はないと思います。むしろ「フィーリングの合う人」を見つけて、その人と一緒に何かを始めてみるのが良いのではないでしょうか。人との出会いを通じて、意外な道が見つかることもありますから。
私の息子は今、中学二年生で、ずっとバスケットボールに情熱を注いでいます。小学校の頃から「バスケ、バスケ」と打ち込み、都内各地に仲間を作っています。そうした息子の姿を見ていると、情熱を傾けられるものがあるのは素晴らしいことだと改めて感じますね。私自身、勉強よりも好きなことにとことん打ち込む方が、その人の持つ可能性を広げるのではないかと考えています。
そして何よりも「動けば何かが見つかる」と伝えたいです。動かないと何も始まりません。行動を起こすことで、新しい出会いや発見があり、それが自分の道を見つけるきっかけになるかもしれません。読書でも、新しい場所に足を運ぶことでも、何でもいい。とにかく一歩踏み出すことが重要です。また、人とのつながり、つまり「人脈を広げておくこと」も非常に大切です。これからの時代は、提供するサービスやプロダクトの品質だけでなく、「誰から買うか」という人間性がより重要になります。自分自身の人間性を高めることも意識してほしいですね。


