不正と嫌がらせを乗り越え掴んだ勝利の味
──逆境経験について教えてください。
私の人生で一番しんどかった時期は、大学時代の甲子園で売り子としてアルバイトをしていたときです。私は「甲子園の売り子になるために大学を選び、4年間でナンバーワンになる」と母に誓い、この道を選びました。特に3年生のときは、どうしても1位を取りたいという強い思いで臨みました。
甲子園では、エリアごとに売り子の人数が決められており、その中でランキングが出ます。同じエリアで販売している売り子のうちの一人とは常に競い合う関係で、まさに「戦い」でした。
ナンバーワンになると決めていた、3回生の4月、先輩方が応援に来てくれ、たくさん買ってくれました。「宮嶋ちゃん頑張ってるから買ってあげて!」と周りのお客さんにも声をかけてくださって。そのおかげもあり、きっと4月は1位になれたと思っていたにもかかわらず、最終結果はまさかの敗北。納得のいかない結果と、応援してくださった先輩方に対する申し訳なさで涙が止まらず、4月のスタートは最悪でした。
5月、6月もライバルとの戦いは続き、思うように結果を出せない日が続きました。精一杯頑張っているし、悪いことも何もしていないのに報われない、そんな日々が続き、精神的に追い詰められ、夢の中でも売り子をしていました。
そして迎えた7月。ナンバーワンを目指せる最後のチャンスでした。5月・6月から落ち込んだ気持ちを引きずっていましたが、同期に「しんどいと思うけど最後なんだし吹っ切れて頑張れば?」と言われて目が覚めました。「どんなに理不尽なことがあったとしても、目標を諦めるのはもったいない!」と奮起し、7月は文字通りバリッバリのキレキレに動きまくりました。
すると、神様がいるとしか思えない出来事が起きたんです。最後の3連戦の前夜、競っていたライバルが熱を出して倒れました。次の日には点滴を打つほどの状態。私にとって、それは「ここしかない」というチャンスでした。3連戦が始まるまで負けていましたが、情けをかけている場合じゃないと、猛烈に売りまくりました。結果、わずかな差ではありましたが、逆転勝利。4月・5月・6月と心が折れることなく、頑張ってきたことが全て報われ、本当に嬉しかったことを今でも覚えています。
売り子経験と幼少期の学びが育んだ本質的な成功哲学
──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
売り子の経験から学んだことは二つあります。一つ目は「せこいことをしたら必ず自分に返ってくる」ということ。相手を陥れるようなことをすると、結局は自分が痛い目を見るということを痛感しました。
二つ目は「いかに最短距離で目標達成に向かえるか」を追求することです。なぜ今日売れたのか、その理由を言語化して分析するようにしていました。私はよく「最初は感情・感覚でこれが良さそうというものを判断し、なぜ良いかをロジックで補強し、最後は感情で判断している」と言われるのですが、まさにその原点が売り子時代にあったと思います。
売り子だけではなく、私は幼い頃から算数が得意で、小学校の塾の恩師の影響が大きかったと思います。その先生は京都大学理学部出身で、算数や数学を心から愛し、楽しんでいました。生徒一人ひとりの人生に真正面から向き合い、時に厳しく、しかし深い愛情を持って指導してくれました。塾は、私たちにとって「行きたくない場所」ではなく、高め合う仲間と先生がいる「居場所」でした。また、先生だけではなくクラスメイトとの出会いも、真の競争とは何か、本質的な学びの価値とは何かを考えるきっかけになりました。彼らは他者を蹴落とすことなく、純粋に学びを楽しんでいる天才・秀才たち。苦労して無理やり進むのではなく、心から好きで、楽しみながら高みを目指すのが理想だと考えるようになったのです。

webとリアルの架け橋となる「花屋」
ramlisとしての具体的な強みはこれから構築していく段階ですが、私自身の強みや、花屋を始めた背景が会社の魅力へとつながっていくと考えています。
私の強みは、Webマーケティングの戦略的視点と、店舗運営の現場感を両立していることです。
Webマーケティングの世界で培った「データに基づく仮説検証力」や「市場の俯瞰力」は、どんなビジネスにも通用する普遍的なスキルだと感じています。
一方で、現場の花屋には、数字だけでは測れない“空気感”や“人との温度”があります。たとえば、同じ花を手にしても、お客様の表情や季節の空気によって選ばれる色が変わる。そうしたリアルな感覚を自分の体で感じながら、マーケティングの戦略に落とし込むことで、「感性とデータの両輪」で動くブランドをつくれると考えています。
花屋という店舗ビジネスを選んだのは、まさにリアルな場を通して、人の心を動かす体験を設計したいという思いからです。
もともと「お花」が好きで、かつ「ビジネスとして成立する可能性」を感じたこともきっかけでした。
私は「稼ぐこと」について考えてきました。単に数字を追いかけるのではなく、社会に価値を還元しながら、自分のやりたいことを形にするという“持続可能な資本主義”のあり方を模索しています。
ramlisは、その理念を体現する場でもあります。お花を通じて人の心を動かし、経済的にも持続可能な仕組みをつくる。
そのバランスこそが、私がこの花屋を始めた原点です。
「新卒カード」は最強の武器になる!
──若者へのメッセージをお願いします。
若者の皆さんに伝えたいのは、「やってみないと分からない」ということです。時間とお金があるならば、やりたいと思ったことは何でも挑戦してみてほしいと思います。
特に、独立を視野に入れている人こそ、「新卒」というカードは人生で最も貴重なチャンスだと私は考えています。何億円規模の企業に、新卒という立場で入れる機会は一度きり。独立してすぐに成功できるのは、運と実力を兼ね備えたごく一部の人だけです。
まずは大きな会社で経験を積み、仕組みや組織のスピード感、意思決定の構造を体感する。そこでは、個人では得られない規模のプロジェクトに関わることができますし、会社のリソースを使って多彩な経験ができます。その経験は、将来自分のビジネスを立ち上げるときに、必ず大きな財産になります。
「違う」と感じたら、数ヶ月で辞めてもいいと思います。起業してからの撤退は、資金面でも心理面でもずっとハードルが高いものです。だからこそ、新卒というタイミングでの挑戦は、リスクが少なくリターンが大きいんです。
また、自分の興味があることには、枠を設けずいろいろ挑戦してみてください。
ただし、「好きなことを仕事にする」かどうかは慎重に考えても良いと思います。
私自身、旅行が大好きで国内外をよく旅していました。周りからは「SNSに投稿したら?」とよく言われましたが、私はあえてビジネスにはしませんでした。
私にとって旅行は、「何も考えずに心を解放する時間」。そこに仕事の要素が入ると、純粋に楽しめなくなる気がしたからです。
人によって違いますが、**“好きなことは仕事にせず、大切に育てる”**という選択肢もあると思います。
そして何より、「やりたいこと」は探しているうちはなかなか見つからないものです。
私自身も、去年の11月に偶然花屋の師匠と出会い、その瞬間に自分の進む道が見えました。
だから、「まだやりたいことが見つからない」と焦る必要はありません。
まずは少しでも興味を持ったことに手を伸ばしてみてください。
行動の中でこそ、思いがけない出会いや発見があるはずです。

